飲食店舗「譲渡」と「売買」の違いとは? 名称が異なる契約の謎

飲食店舗の譲渡と売買の違いは

飲食店舗の譲渡と売買の違いは

  • 譲渡とは所有権を移すという意味で、その方法の一つに売買がある
  • 不動産業全体のなかで取引額が小さい為、業界での取引ガイドラインがない
  • 不動産会社ごとに契約書を作成する為複数の名称が生まれた
  • 結局のところ、名称は異なれど譲渡も売買も同じ

大切なのは、所有権が移転する対象物を特定し、引き渡しの状態を予め約束することがこの契約にとって一番重要な部分です。

飲食店舗「譲渡」と「売買」の違いとは? 名称が異なる契約の謎

最近飲食店を開業する人たちの間で常識となりつつある居抜き店舗物件ですが、契約書の様式や取引形態がいくつも存在します。ネットで調べて勉強しようと思い立っても名称や呼び名が違うことで何を意味しているのか混乱することが多いと聞きます。

実は種を明かすと呼び名が違うだけで中身は同じなのです。その混乱の最たるものが「譲渡」と「売買」の違いだと言います。

今回は、名称や呼び名が異なる原因を考えながらその内容ついて整理してみたいと思います。

「譲渡」と「売買」の違いとは

大雑把に言うと「譲渡」とは、所有権の移転を指します。その契約形態としては「売買」・「贈与」・「交換」の3種類があります。

これに対し、「売買」とは「当事者の一方が、ある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力が生ずる」(民法555条)と規定されています。つまり、売買とは譲渡の一部と言えるでしょう。

もし、代金の伴わない無償の場合でも売買ではなく譲渡とタイトルに書いておけば問題ないとなるのです。

名称が異なる契約の謎

「飲食店譲渡契約」と「飲食店売買契約」はどこが違うのかお分かりでしょうか。実は全く同じものです。同じ内容の取引や契約の名称として以下のものがあります。

「造作譲渡契約」、「造作売買契約」、「飲食店舗付属資産譲渡契約」、「飲食店舗付属資産売買契約」などいくつかの名称が存在します。

ではなぜ名称は統一されないのでしょうか。

以下の原因が考えられます。

・契約当事者が事業者である

・不動産業界内でもあまり知られていない取引

・居抜き店舗を扱う不動産会社のこだわり

一つ一つ見ていきましょう。

Photo via Visual hunt

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契約当事者が事業者である

不動産取引でよく耳にするおとり広告に関する規制等は、消費者を対象としており、商売目的で不動産を借りようとする事業者(個人、組織、団体を問わず)はその対象となっていないのです。

借地借家法も事業者にあっては、トラブルが起こったら当事者間で裁判でもなんでもやって解決しなさいと言う趣旨なのです。つまり、契約者である借主はあまり大事にされておらず、自分の身は自分で守りなさいというスタンスです。ゆえに統一したタイトルが存在せず、当事者間で納得していればよいということになるのです。

不動産業界内でもあまり知られていない取引

居抜きの所以である内装や設備、什器備品の取引に関する契約の名称が数多く存在するのに対し、大家さんから部屋を借りる際の契約は、「賃貸借契約」と相場は決まっています。決して貸室契約や賃貸借貸室契約とはなりません。

これには理由があります。日本全国で日々取り交わされる賃貸借契約。
その仲介をする不動産会社の約90%以上が5人以下の小規模事業所ばかりです。そのような理由から借家を借りる上で、事業所ごとに理解や契約内容に差があっては実際に借りる側の賃借人に不利益をもたらす恐れがあります。

その結果宅地建物取引業法が定められ業界団体が標準契約書を作り全国どこでも同じ契約が出来るよう借手を守ってきたのです。

これに対し、居抜き店舗に関わる契約の件数は圧倒的に少ない為見向きもされません。くわえて土地や建物の売買に比べて取引額も低いため大したトラブルにならないと思われており話題にすらならないようです。つまり、少数派の為に業界はガイドライン作りなどに乗りだす気配は今のところ全くないのが現状です。このことが、いくつものタイトルを生むこととなったのです。

居抜き店舗を扱う不動産会社のこだわり

居抜き店舗不動産に関わる取引では、不動産会社が独自に書面を作ることになります。これまでの経験を踏まえて作成して行くのですが、扱いの多い不動産会社と経験の浅い不動産会社では明らかに内容に差が出ます。タイトルや内容が大きく異なるのはそうした理由に負うところが大きいのです。取引経験が豊富な不動産がつくる契約書にはその会社独特の表現や言い回しがあるのですが、これを見た別の不動産会社がその契約書を丸ごと真似をしたり、事情にあわせてマイナーチェンジを繰り返していくものですから収集がつかなくなっているのです。WEBサイトに並ぶ文言も同じような状況といっていいでしょう。少なくとも居抜き店舗物件を数多く扱う不動産会社の契約書は過去のトラブルを踏まえて造り込んであると思われるため比較的安心と言えるのです。

概ね譲渡と売買が同じであることは分かりましたが、金銭の伴わない無償譲渡も所有権を移転させる契約でることが分かりました。その契約に含まれる内装、設備、什器備品などを総称して「造作」と呼ぶ契約もあれば「店舗付属資産」と呼ぶ契約もあります。どちらも間違いではありませんが、これらをひとまとめにして「一式」と書いている契約書には注意が必要です。

あとで必ずトラブルとなります。引き渡しの明細、目録などのリストの添付は必須です。

また、飲食店舗不動産特有の取引形態も存在します。

「営業権譲渡」や「権利譲渡」などがそれにあたります。賃貸借を軸に簡単に説明しますと、名義変更など通常の切り替えの際に、その場所で営業が出来る権利を多額のお金で買う若しくは売ることを権利譲渡と呼びます。銀座や赤坂、歌舞伎町などで今でも商習慣として残っています。つまり賃貸借に関わる権利そのものを売ると言う概念です。

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