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飲食店舗売買の注意点!似たような名称で内容が異なる取引の実態

飲食店-用語-居抜き

kaboompics @ Pixabay

飲食店舗の売買契約や賃貸借契約には色々な種類の形態が存在しています。特に最近流行の「居抜き」店舗契約などはいくつかの要素が入り組んでいます。売買なのか引き継ぎなのかによっても違った言葉、名称が登場します。まずは、不動産用語の整理をしながら取引形態の注意点を確認して行きたいと思います。

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飲食店舗売買で「 居抜き 」と「 残置 」の違い

居抜き物件と残置物件は何が違うのですか?との質問を受けることがあります。

「居抜き」とは「居」を抜くと書きます。「居」とは「人」の事です。言い換えれば飲食店舗から「人」だけがいなくなった状態の店舗物件が居抜き物件と呼ばれます。ですから厨房設備、エアコン、場合によってはお皿や調理器具等がすべてが整っていますから、人と食材さえあればすぐにお店が始められる物件を指します。

一方残置物件はどうでしょう。「残して置いてある」と書く残置物件。飲食店なら必ず必要な冷凍冷蔵庫、コールドテーブル、製氷機、ガスコンロ等店内にある売却可能(移設可能)な物品が全て持ち出された後の状態を指して残置と呼びます。別の言い方をすれば、あとは固定物である内装を壊すだけの状態です。言葉を見ただけでは区別がつかないかもしれません。

営業を続けている状態から引き渡しを受ける居抜き物件に対し、残地物件は閉店してから時間が経っているケースがほとんどです。それ故エアコンが壊れていたり、排水管が詰まっているなどのトラブルを抱えている可能性も高いと言えます。それなのに、あまり飲食店舗物件に詳しくない不動産業者のなかには、残置物件でも平気で居抜き物件と表示をしています。ここは注意が必要です。

【プロが伝授】飲食店造作売買の落とし穴「内装・設備・厨房機器」

見た目は同じでも「リース店舗 」は「 居抜き店舗 」と大違い

赤坂や銀座が発祥と呼ばれる「リース店舗」。バブル崩壊後しばらくはソシアルビルのクラブ物件などは敷金が賃料の24ヶ月分という高額物件が多く出ていました。景気後退が長引くなか、そういった高額物件は借手がつかなくなりました。解約も増える中で、原状回復工事費が出せずに造作がそのまま残っている物件も多く出始めたなかで、苦肉の策として敷金を3ヶ月ほどに抑え、その分家賃を相場よりも高く設定して貸し出したのが始まりと言われています。

その後最初のイニシャルが抑えられるリース店舗の人気が出始めて、ビルオーナーはそれまでスケルトンだった貸室を自分で内装を施しリース店舗として商品化していったのです。いわばクラブの居抜き版です。

業態ごとに内装が著しく異なる 飲食店舗と違い、クラブやバーの形態はほぼどこも同じ雰囲気の内装であったことが成功の大きな理由だと思います。リース店舗を借りる方は内装よりもお店にいる女性陣の方に重点がありお店自体は無難な作りであればよかったのです。それに、最初のイニシャルを押さえることで女性一人でも独立、開業しやすかったことと、水商売と呼ばれる業態の性格上、日銭は入ってきますから少々高い賃料でも支払い能力はあったということです。

また、お店をやめる時も原状回復義務がないのも借りる方としては安心材料だったでしょう。いずれにせよマーケットの声にこたえる形で生み出された不動産業界では数少ないヒット作です。

営業譲渡と飲食店舗付属資産譲渡の違い

標題に掲げたこの言葉は不動産会社によって呼び名が異なる場合があります。営業譲渡は営業権譲渡と呼ぶことがあります。また、飲食店舗付属資産譲渡(内装設備、厨房機器、什器備品などの総称)については、造作譲渡契約と呼ぶ不動産会社があります。この二つ、似ているように見えますが中身は相当違います。

まず、営業譲渡はもともと「契約名義の変更」からきています。つまり契約自体を引き継ぐ契約変更ですので、契約期間の残存期間を引き継ぎます。それだけならただの名義変更と変わらないのですが、二者間で、造作売買や営業権利の売買代金のやりとりが発生するようなケースを営業譲渡と呼びます。今でいうM&Aとほぼ同じ理解ですが、人が引き継がれないことがほとんどです。

このような金銭を伴う名義変更のケースでは貸主に一銭も入らない為、名義変更とは別に営業譲渡料といって、売買代金の10%~30%を承諾料の名目で徴収していた時期が長らくありました。

似た呼び名で営業権譲渡と呼ばれるものがあります。仕組みは営業譲渡と全く同じですが、営業権譲渡の方は従業員や取引先なども含めて、お店丸ごとの譲渡を指す意味合いで使用されています。個人、法人を問わず、大家さんに代表者変更届を出す必要があります。法人の場合は、登記変更済の登記簿謄本も必要になります。

次に、 飲食店舗付属資産譲渡についてですが、この契約は賃貸借の契約を抜きにして行うことは出来ません。営業譲渡が賃貸借契約と店舗付属資産の双方を含む売買であるのに対し、こちらは飲食店舗の賃貸借契約とその賃借室内にある内装・厨房機器・什器の譲渡契約とを分けて結ばれます。但し、建物所有者、建物を管理している不動産会社の承諾がないと双方の契約は成立しません。売手、買手の当事者間だけの合意では契約は成立しないのです。ですので、賃貸借契約が成立しないうちに付属資産の売買代金を先に払ってしまい回収できなくなるトラブルもあります。お気を付けください。

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飲食店の業務委託とサブリースの違い

飲食店舗に関する不動産以外の契約で転貸借契約と判断されるものがあります。業務委託契約です。 飲食店舗 の名義は変えずに、その飲食店舗の実質的経営を第三者に任せてしまうやり方です。「雇われ店主」といわれることもあります。

一般的に業務委託の場合は、家賃分と売り上げの何%かを業務受託者から徴収します。転貸借とは異なりますので業態や内装の大掛かりな変更がなければ特別届け出は必要ありませんが、かなりグレーな方法です。新橋や神田など古くから飲食店舗が立ち並ぶエリアで今なお存在しています。飲食店でサブリース事業を行う会社が、転貸借契約(サブリース契約)を断られた際に持ち出すやり方とも言われております。最近では、実態が転貸借だと裁判で敗訴するケースが増えています。

飲食店の売買、引き継ぎに関する留意点

売買にせよ引き継ぐにせよ、気をつけたいのは前所有者が有している「負債の有無」です。

よく問題になるのはリース契約です。売主が残債を整理しないうちに売買代金の決済をしてしまったがために買主が残債を引き継ぐことになったという例や、残債が清算できずにリース物品がリース会社に引き上げられてしまい、なくなってしまったなどのトラブルが頻繁に起きています。

また法人売買により店舗を取得される方も同様で、その法人に隠れた債務がないかよくお調べすることをお薦めいたします。

今回ご紹介した手法は以前から存在するのですが、それを扱う不動産会社にその経験や知識が乏しい場合がほとんどです。飲食店舗の取引は経験豊富な不動産会社をパートナーに選ばないと安く手に入るはずの物件が結果とても高くつくことになりかねません。

物件探しは重要ですが、飲食店舗の居抜き物件ではパートナー選びが最も重要です。

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