Summary-まとめー
- 好立地でテナントが入れ代わる本当の理由
- 飲食店を開業する側に「よくある勘違い」が存在する
- 見えざる管理会社の思惑
どんな業種をやっても成功しない店舗物件があります。1年に3回もお店が入れ替わる店舗物件の記事などはその最たる例です。
先日目にしたロードサイドの飲食店が閉店した記事では、その理由が出ていました。
- 中央分離帯が目の前にある為、反対車線からの導入が弱い
- 信号機から100m付近にありスピードが出やすい(止まりづらい)
- 下り坂の途中にあり敷地に侵入しづらく(追突の危険がある)
- 来店客が来た道を戻るにもUターンする場所がない(時間がかかる)
などの悪条件が重なっていることをあげていました。
このように立地条件から見た物件の欠陥は比較的分かりやすいものです。
これに対し、商店街や駅前立地には理由がハッキリしないのによくテナントが入れ替わる店舗が存在します。別に視認性が悪いわけでもなく古めかしい訳でもありません。なのになぜか次から次へとテナントが入れ替わっていきます。
ロードサイド立地と違い理由が見えにくい繁華街でその理由に迫ってみたいと思います。
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好立地でテナントが入れ替わる本当の理由はこちら
好立地ですから目立ちます。オープン当初はもの珍しさも加わり来店客は伸びます。いかにも儲かっているように見えていても長くは続きません。
なぜなら「賃料が高すぎる」からです。つまり、利益の大半が賃料で消えてゆくことに理由があるのです。
もし利益が上がらなければ、メニューの「値上げ」か「材料費の削減」、はたまた「人件費を削る」など、お客様にとってマイナスのシフトゆえ客足は更に落ちます。結果お店は疲弊し短期間で閉店へと至るのです。
飲食店を開業する側に「よくある勘違い」が存在する
好立地なのにすぐテナントが入れ替わる理由はなにも貸す側の賃料の高さだけではありません。お店を開く方にも勘違いがあるものです。
「人通りが多いからお店は繁盛する」と言う勘違いです。
自分たちの店作りのコンセプトや商品に絶対の自信を持っている方や法人ほど陥りやすい勘違いです。
この立地なら、黙っていてもお客様は来てくれるから大丈夫だろうと思ったとしたらすでに立地のワナにはまり込んでいます。
それが証拠に、かつてあれだけ好立地で人が多く入っていたマクドナルドの都内店がいい例です。2016年春、一気に130店舗あまりを閉店しました。
これらの店舗は全てオープン当時から赤字続きだったといいます。マクドナルドは都心店で赤字を出していても、郊外の大型店が利益を出しさえすれば、直営店をいずれフランチャイズオーナーに高値で販売できると見込んでいました。その宣伝の為やむなく営業を続けていたと言います。
ところが、同社はビジネスモデルを店舗売却から原料販売とフランチャイズ店からのロイヤリティーで稼ぐ形に変換した為赤字店は必要なくなったというわけです。
本題に戻ります。吉野家、ドトールコーヒーなどのナショナルチェーンが通行量調査で出店を判断したやり方は類似店舗や安価な外食店舗が少ない昭和の時代の話です。
令和の今、好立地であっても、
- 行き交う人の年齢層
- 周辺の企業の平均年収
- 自分たちがターゲットとする人たちがどれほど存在する街なのか
- 競争相手は誰
- その相手に勝つためにの仕掛けはなにか
シッカリ考えて手を打ち続けなければ、利益を出すことはできなくなっています。
繁華街高賃料の見えざる管理会社の思惑とは
意外に思われるかもしれませんが、繁華街の入れ替わり物件のオーナーつまり大家さんの傾向として、「遠方に住んでいる場合」や「ご高齢の方である場合」が多く見受けられます。なかには台湾やシンガポールにお住いの外国人オーナーも多くいらっしゃいます。
当然どの大家さんも管理業務やテナントの窓口業務はどこかの不動産会社に委託されています。それだけなら一般の大家さんと管理会社の関係と何も変わらないのですが、繁華街の高額賃料物件ならではの管理会社の見えざる思惑が影響を及ぼしています。
入れ替わりの度に賃料があがる理由とは
例えば管理会社(不動産会社)が、繁華街にある飲食店用店舗物件の募集を任されたとします。相場価格で募集をすれば
- 電話での問い合わせ対応
- 店舗物件内を実際に見たいと言う内見対応
- 是非借りたいという申込の対応
借りてもらうのは1人ないし1社にも拘わらず契約までに数十件分の対応を強いられます。
5人以下の事業所が90%を超える日本の不動産会社にとっては、ただでさえ忙しいのに、このような状況ともなれば仕事にならないと言うのが本音です。では管理会社は何を考えるでしょうか?
通常の正規報酬額の賃料1ヶ月相当分を働きに見合うだけ欲しいと考えるのが普通です。手始めに募集賃料を上げることで報酬額が上がることを期待します。次に賃料が上がれば問い合わせも減りますから一石二鳥です。
不動産広告では一度広く公開した条件を途中で上げることはできないので(ただ、会員と称して自社サイトに登録をさせるような不動産会社は平気で値段を吊り上げますが)初めに賃料を上げて募集を出しておいて、それでも問い合わせが多いようだと次回入れ替わりの募集価格はもっとあげようという循環に入っていきます。
いくら需給バランスだといえ管理会社(不動産会社)が値段を吊り上げている図式があまりにも独りよがりです。
近隣から苦情の出ない業種にしか貸さない
管理を委託された不動産会社のもう一つの傾向としてクレームの少ない業種を選びたがる傾向にあります。軽飲食、寿司、そば、和食など、
- あまり油は使わない
- 煙を大量に出さない
- 調理の臭いが強くない
などの共通点があります。これに対し、いわゆる重飲食といわれる業種(焼肉、中華、カレー、焼き鳥、豚骨ラーメン等)などは臭い、煙など強く近隣からクレームになりやすいので大家さんに伺いをたてるまでもなく管理をする不動産会社が勝手にお断りをするケースが相当数あります。
このことで、飲食業のなかで賃料負担能力の高い重飲食業種を断り、競合する店舗が既に存在する上に客単価があまり高く望めない重飲食以外の業種を入居をさせようと言うのですから素人目に考えても無理のある話です。
~まとめ~
飲食業界の流行と言えば今や味だけで勝負するのは簡単で無くなってきています。インスタグラムに象徴されるように、写真写りがいいだとかヘルシーだとかプラスアルファの価値を付けないとなかなか話題になりません。
当然、開店時から新規顧客とリピーターを作り続けられる店舗でない限り高額賃料に対応できません。つまりは、一等立地は避け1.5等地と呼ばれる一本通りから入った賃料の安い場所で宣伝と看板料理で顧客作りに専念した方が飲食店の寿命はグッと長くなるのです。