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飲食店の台風・豪雨災害など気候変動による原材料(食材)値上がりリスクへの対応方法

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令和5年8月、お盆の日本列島を沖縄から四国、中国地方を抜け長期にわたり猛威を振るった台風6号は大きな爪痕をのこして去って行きました。これから今年の台風シーズンだと考えると先が思いやられます。

過去には、毎週のように台風が本州に接近し、とりわけ北海道に甚大な被害をもたらしました。農作物が受けた被害の作付面積はほぼ新潟県と同じ面積ということがありました。この台風被害が実は首都圏のみならず日本中を野菜高騰の渦に巻き込んだ2016年の記憶は多少薄れつつあります。

振り返ると、1年も続いた影響の理由が分かっています。ニンジン、ジャガイモの北海道産のシェアは98~99%、玉ねぎが96%、大根で63%となっています。つまり、北海道の野菜出荷が滞ると日本中の野菜供給がピンチとなることが明らかなのです。

実際、玉ねぎが平年の1.2倍、ジャガイモが1.5倍、ニンジンに至っては2.2倍も価格が高騰しました。

さて、まだまだ続く猛暑、これに水不足で野菜高騰の直撃から逃れられない事態となっています。この事態を受け安易に値上げで対処するのか調理方法や経営努力で乗り切るのか今回は気候変動で起きる価格高騰への対処方法を考えて見たいと思います。

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飲食店の価格高騰に対する2つのアプローチ

まず気をつけたいのが安易な値上げです。

メディアでいかに大きく取り上げられ周知の事実であったとしてもです。仮に数か月後事態が収まり原材料の価格がもとに戻ったとしましょう。お店側は値下げをして元の価格に戻しても一度離れたお客様は戻ってきてくれません。ましてや低価格が売りのお店等は存亡の危機に立たされるかもしれません。値上げは最後の手段だとお考え下さい。

さて、値上げ以外で原材料の高騰を吸収できるアプローチを考えて見たいと思います。

一つ目は、原価計算などお店の利益を出す構造的な仕組みから考えるアプローチです。二つ目のアプローチは、メニューの変更や提供する量を調整することで吸収する方法です。順番に見ていきましょう。

1.原価構成での吸収

飲食店の経営指標として「FLコスト比率」と言うものがあります。このFLコスト比率とは、Food(食材)のFとLabor(労働)のLそれぞれの頭文字をとったものです。

これは、材料費と人件費の合計が売上高に対する比率で適正かどうかを表そうというものです。2014年に日本政策金融公庫総合研究所が行った調査結果では、

飲食店の売上高に対し、「原材料費30%前後」「人件費35%前後」

もちろん業種や業態、規模によって変わりますので平均的な数字ととらえればよいでしょう。

今回は計算しやすいように売上に対する原材料費30%、人件費を30%の計60%をFLコスト比率とおきます。

原材料のうち料理の基本となる香味野菜が値上がりするケースは珍しくないのですが、2016年の様に規模が大きく場合によっては翌年以降も続く可能性があるケースは稀です。

まず、野菜の値上がりによる原材料費の売上高に占める割合が30%から35%に増えたとしましょう。月の売上100万円の飲食店で5万円の原材料費増です。

このコスト増となった5%分、約5万円をFLコスト比率を変えずに吸収する為に人件費をその分減らす必要があります。例えば、時給1,200円のアルバイトを雇用していたとすると42時間分に相当します。月の稼働が25日だとすれば1日あたり1.6時間の短縮です。シフトにもよりますが、

ランチタイムで30分、夜1時間短くすれば値上げ分を吸収」できる計算です。

家賃やリース代を固定費と呼ぶことに対して、原材料費やアルバトなどの人件費を変動費と呼びます。この変動費を柔軟に切り詰めることで安易な値上げに走らずに済みます。

どうしても吸収できない場合は、無理せず店主自ら価格高騰の窮状を訴えた内容の紙を貼りだすのが良いでしょう。「期間限定」でご協力いただく内容のものであれば、常連さんはきっと理解してくれます。

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2.調理方法や代用品で値上がり分を吸収

もう1つは、値上げをしない代わりに料理の内容量を減らして価格維持をする方法です。

提供する料理のグラム数を減らす代わりに価格が高騰している食材も今まで通り使用します。もし見劣りする場合や、ラーメン、カレーなどをメインとしている飲食店などは、原価の安い一品をプラスすることでお客様の理解を得られるようにしましょう。

一方で高騰する食材の量を減らし、価格が安定している別の食材で代用するやり方もありますが、味が変わってしまう可能性があり十分吟味して代用しないとお客様が離れて行ってしまう可能性があります。

<過去の良い例>

BSE問題でアメリカからの牛肉が輸入できなくなった吉野家は牛丼よりも1杯100円安い豚丼を開発し存亡の危機を乗り切っています。彼らには牛肉の輸入先をオーストラリアやその他の国に求めることが出来たのですが、味にこだわるがゆえに代用品を使うことを拒んだのです。もし原材料の価格高騰が起きたとしても新たな主力商品を育てるいいチャンスとなるかもしれません。

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そもそも程度の差はあるものの原材料費は日々変動します。それが当たり前の世界で価格を固定して商売をするのですから、価格変動に対するリスクを見込んだ価格設定を最初にするべきなのです。

これからお店をオープンしようとお考えの方は、今回の様な事が今後発生しても慌てなくて済むよう予め価格変動リスクを見込んだ価格設定にしておかれることをお薦めします。

またFLコストの中で吸収できるよう予め非常事態シフトを考えておくべきです。

昨今の気象状況を見ておりますと50年に1度とか100年に1度という自然災害が常態化してきています。日頃からシミュレーションを行いその時に備えましょう。

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