飲食店舗に限らず内装工事代ほど高いのかお値打ちなのかわかりづらいのも珍しいでしょう。
もっと安くできる業者を知っている、別の業者に見積もりを取るべきだと自薦他薦を含め、雑音が入ります。折角信頼して頼んだにも関わらず結局疑心暗鬼になってしまいます。
トラブルの話も多く聞きます。安く発注したつもりが追加工事が発生し逆に高くついたなどなど枚挙に暇がありません。
既に内装業者の選定方法については、「店舗内装 工事って誰に頼んだらいいの?賢い業者選択とは」
参照頂けば詳しくお話をしております。今回は一歩進めて、 内装工事 の見積書の見方、判断の基準ついて詳しくお話したいと思います。
Contents
飲食店内装工事の見積書に出てくる項目を知る
一口に見積書といってもいろんな書式が存在します。単に一式と書くだけで高いのか安いのかわからないものや、項目が細かすぎて逆に分かりにくくする書き方だとかいろいろな工夫、テクニックが存在します。
見積書を読み砕く手始めに本来見積書に含まれるべき基本項目を知りましょう。
①資材費
コンクリートや木材、タイル、壁紙など対象となる工事現場の大きさによって増減する建築資材の項目です。そこには必ず「量」及び「単価」そして「総額」が明示されるべきです。資材一式いくらといった書き方の場合は必ず問い合わせましょう。
②施工費
人工(にんく)と呼ばれる労務費です。例え一人の方が施工するのであっても数日にまたがる工事であれば人工の工数は増えていきます。ここをチェックする際は、工事の工程表と合わせて検討するようにしましょう。
③運搬費
建築資材を工事現場まで運ぶ費用です。あわせてそのを工事するのに使用する道具も運ばなければなりません。例えば、コンクリートを現場で造るのなら水や骨材を混ぜるミキサーが必要となりますが、こういった機材の運搬費も含まれます。
④経 費
諸経費と表現されるケースもあります。一般的には現場の管理費を指します。工事の保険や通信費、交通費などがこれに含まれます。
上層階や地下階の内装工事では、共用廊下やエレベーターを使用することがあります。その際、汚したりキズを付けないよう養生(ビニールやベニヤ板で防護すること)をすることがあります。それらの費用を独立して養生費として項目を加えるのですが、軽微な場合経費に含むことがあります。必ず内訳を聞くようにしましょう。
実際に見積書の具体例から適正価格の導き方を考える
【A社見積り】
項目 | 数量 | 単位 | 単価 | 金額 |
資材費(クロス) | 10 | 平米 | 1,000 | 10,000 |
施工費 | 1 | 人工 | 20,000 | 20,000 |
諸経費 | 1 | 式 | 10,000 | 10,000 |
小計 | 40,000 | |||
消費税 | 4,000 | |||
合計 | 44,000 |
【B社見積】
項目 | 数量 | 単位 | 単価 | 金額 |
クロス 材工共 | 10 | 平米 | 1,500 | 15,000 |
諸経費 | 1 | 人工 | 25,000 | 25,000 |
小計 | 40,000 | |||
消費税 | 4,000 | |||
合計 | 44,000 |
【C社見積】
項目 | 数量 | 単位 | 単価 | 金額 |
クロス | 10 | 平米 | 4,000 | 40,000 |
小計 | 40,000 | |||
消費税 | 4,000 | |||
合計 | 44,000 |
ご覧のように、同じクロスを貼る工事でもこれだけのパターンがあります。
全て総額は同じ金額になるようにしてありますが、各社がそれぞれがバラバラに見積金額を入れてきたらどうでしょう?素人はお手上げです。
そもそも、クロスの上代価格、つまり定価が分かりません。それに人工の単位である1人工はどこで決まるのでしょうか?疑問は尽きませんね。そこで業界の人しか知らない虎の巻を紹介します。
業界では俗に“単価本”と呼ばれている本です。
この本は、官公庁が工事を発注する際に、その時々の物価や人工の相場を第三者機関に調査をさせてまとめさせた公共事業入札の価格手引書なのです。
高く発注して税金の無駄使いをしないようにしたり、またあまりにも低廉な工事で質の低いものにならないよう常に目を光らせる為に存在しています。
また、大掛かりな工事では材料や人工がかさみ金額も高くなる分値引き幅が出てきます。逆に小さな工事では大きなロットの材料の一部しか使わない為割高になることを避けるよう単価が表示されているという訳です。
この本の中身は、クロス貼に限らず、電気工事、水道工事、空調工事、左官工事などほぼ全分野で建築工事の標準的な建築資材の価格、それに伴う労務費(人工)などが克明に記されています。
見積書を見てお分かりのように、それぞれの工事金額は数量×単位×単価で算出できるようになっています。つまりこのうちの単位と単価を知ることが出来ますので、あとはご自身の飲食店舗のサイズか見積書に記載されている数量を掛け合わせれば適正価格が導き出せると言う訳です。
飲食店内装工事の見積額が高いと感じた時にすべきことは
相見積
つまり別の施工業者に同じ内容で見積もりを出してもらう方法です。
中には乱暴な方がいて、現場も見ていない施工業者に単価と金額を黒く塗りつぶした見積書を見せて数字を出してくれと言うのです。
さすがに頼まれた方もあて馬に使われるようでいい気がしませんし、現場を見ていない分危険負担を考えて若干高くなります。それでも仕事が欲しい一心で安い金額を入れてくる施工業者は必ず存在します。
しかし、無理をして金額を調整している分どこかで帳尻を合わせてきます。注意をしないと結局追加工事等で高いものになる恐れが十分あります。
VE=バリューエンジニアリング
一般の方には聞きなれない言葉ですが、内装工事全体で考える「VE=バリューエンジニアリング」という手法があります。これは、1つ1つの工事内容を吟味し、同じ効果や仕上がりが期待できる別の安価な施工方法や部材の選択をして全体の工事費を下げる作業です。
例えば、壁紙をやめて塗装にする、その代わり聚楽風にして雰囲気を出すとか、厨房の床は防水層を軽量コンクリートで作らずに塗布防水にしたりグリストラップも埋め込みにせず、簡易型に変更するだとか。グレードダウンというよりは合理化を行う手法です。
もっとも、部材や工法に関する十分な知識がないとなかなかいい提案は出てこないもんです。ことVEに関していえば施工経験の豊富な中堅以上の施工会社に軍配が上がりそうです。
~まとめ~
見積書を見慣れていないと単価に目がゆき高い安いの議論になりがちですが、あくまでも全体の仕上がり価格の中で考えることが重要です。
また、見積書の金額が予算をオーバーするような場合は、無理な値引き交渉をするのではなく次のような考え方をしてみてはどうかと思います。
内装工事全体に満遍なくお金を掛けるよりも、お客様に見えるところはお金を掛ける分バックヤードは出来るだけお金をかけずに済ませるなどメリハリを効かせながら価格を下げる話し合いをした方が、結果的に満足のゆく飲食店に仕上がります。ぜひご検討ください。