銀座や西麻布あたりの一等地で飲食店舗を始められる方のこだわりは想像を超えるのもがあります。最近オープンした50坪のレストランは内装費3億円をかけ、ワインカーブにそろえたビンテージワインが総額5,000万円だとか、お話を伺っていていても異次元の内容です。
そのようなごく一握りの飲食店舗はさておき、飲食店舗で開業、独立を考えているほとんどの方は、そのコストを出来るだけ少なくしたいと考えるのが普通です。
どの部分の工事にお金がかかるのか数字をあげてお話しするよりも、なぜその部分が高くつくのかという理由を知って対応していけば結果総額が抑えられると言う訳です。
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飲食店の内装工事費が意外と高くつく理由
例えばカウンターの後ろに棚をしつらえるとしましょう。選択肢は二つ、大工さんに現場で板を加工してつくりつける方法と、既製品のボードを使った組み立て家具を買ってきて、大きさに合うサイズに仕上げる方法とがあります。
この比較でいえば、間違いなく既製品の方が高くつきます。リフォームをする人気テレビ番組がありましたが、限られた予算でやっているため、棚や収納が現場での大工仕事がほとんどなのはそのせいです。
さて、トイレの洗浄機付き便座や照明器具など、これらも意外と高くつきます。ヤマギワなどのショールームで気に入ったデザインがあれば、似たデザインのものをネットで探し出すのも自分で店を作る楽しみのひとつです。
また、ウォシュレットの様な機能性電化製品は必要以上の機能を求めずシンプルで壊れにくいものを選びたいものです。人が近づくと蓋が開く機能が果たして必要なのかと考えて選ぶようにするのです。なぜなら、本来必要な機能以外のところが先に壊れては本末転倒ですからね。
飲食店の内装工事費が高くつくものを見極める
排煙ダクト工事
ポイント① 足場設置費
ダクト工事では、建物の高さが金額の決め手になります。2階建ての屋上まで設置するのと、5階建てのマンションの屋上に設置するのとでは格段の差が生まれます。
例えば、5階建てマンションの屋上まで足場を組んだ場合
高さ20m × 幅6m × 1,000円/㎡ = 120,000円
防護ネットなども込みでこれくらいかかります。
もっとも、ダクトを施工する業者が自社で足場を組むケースと、足場専門会社に依頼するケースでは平米300円くらいの差が出ます。もちろん自前の方が安いのは当然です。
ポイント② 周辺装備
ダクト工事は筒状のダクトを屋上まで立ち上げれば終わりというものではありません。
煙は自然と上がって行く訳ではなく、高さがある場合、屋上の出口側に更にファンをつけて上から煙を吸い上げているのです。これがシロッコファンと呼ばれるものです。ダクトと一体になっているのや、ファンとモーターがベルトで繋がれているものなどいくつか種類があります。
いずれにせよモーターを使用する為その振動が建物に影響しないよう、架台を組み振動を建物に伝えない為インシュレーターというゴムをモーターと建物の間に挟む工事が必要です。
また、ダクトには火災時に火が外へ漏れないよう「防火ダンパー」(一定温度以上の煙が流れた際の遮断装置)の設置が義務つけられています。
一つひとつは大したことのないものですが、一式となると随分と高くなった印象受けるものです。
看板設置工事
ポイント① オーダーメイドである故に素材により価格が大きく変動する
飲食店の顔、そのお店のイメージを決める看板は、すべてオーダーメイドの特注品です。そこにはデザイン料が発生します。昭和の時代によく見かけたブリキ板を白く塗って店名を書くだけの看板とは違い、木の板から文字をくりぬいて立体的に造るものや、夜、文字の輪郭だけが浮かび上がる工夫を施したものなど様々です。
堅固建物などの袖看板にはめるアクリル板であっても字体(フォント)やチョットしたキャラクターを入れるなど少しでも目を引く工夫がなされるものです。これらの製作物は個別性が高いゆえにいわば、製作側の言い値に近いものです。とはいえ必ず必要なものですから、最初に予算を伝えてその範囲内でやってもらうことも一つの考え方です。いずれにせよよく相談と確認をしてから発注をしないと高くつきます。
ポイント② 高所作業や電気工事などが発生する場合が多い
脚立2台に足場板を渡して看板工事が出来れば安く上がりますが、ビルの袖看板などの取り換え工事では、高所作業車が必要になります。その際のレンタカー費が、1日で数万から10数万円は覚悟しなければなりません。
内照式か照射式かでもかなり費用に開きが出ます。内照式とは看板の内側に蛍光灯のような光源が入っており、看板自体が発光するタイプのものです。照射式はサーチライトの様な強い光を出すライトで看板を照らす方式です。その差は2倍~3倍も価格差がでますので、店のイメージを良くお考えて選択してください。
以前に比べ安価になった飲食店の内装工事あれこれ
厨房の防水層を作る工事は時間とお金がかかりました。以前は床を軽量コンクリート(シンダーコンクリート)といって、砂利や砂など重量がかさむ骨材ではなく、石炭の燃えガラなどを使用し、強度よりも軽さと防水に主眼をおいたものを使っていました。
大量のコンクリートを現場で練り、厚みのある塊を何日もかけて乾かしていました。手間も材料も時間もかかる工事となっていました。また、お店を閉店する際は、その塊を掘削機で壊し、捨てなければならず、ここでも大変金食い工事となっていたのです。
昨今新しい工法が主流となり、かなりのコストダウンが可能となっています。まず、床上げ部分の大半を軽くて硬質のウレタンフォームで成形し最後にシンダーコンクリートで周りを薄く固めるやり方です。この工法だと時間も材料も少なくて済みますので工事代はとても安価になります。
その一方で、不具合も報告されています。生ビールの樽などを置く衝撃でウレタンフォームの中を通る配管に亀裂が入り水漏れをまねくという事故です。オープン時にスタッフ全員で確認しておきたいものです。
カウンター工事でもコストカットが進んでいます。以前はコンクリートブロックを積み上げて施工する工法がとられていましたが、最近は木材で形を整え好きな素材を貼って側面を化粧し一枚ものの木板ではなくそれに似せた合板で造りこめばこちらもかなりのコストダウンが可能です。
飲食店の内装工事費が高くなる要素のまとめ
既製品を使うほどに工事費は高くなります。棚やダクト工事がその例でしたね。また、施工業者が自社で出来ない部分が含まれる工事も同様です。足場工事や高所作業車のレンタルだとかです。デザイン性の強い製作物はやはりデザイン料が発生してしまいます。ご自身でデザインしてみるだとか、友人に依頼されるのも選択肢のひとつです。
製品の価格自体が高いものがあります。エアコン工事がそれにあたります。設置工事費はどこもほとんど差が出ません。安くあげるコツはいかに製品を安く手に入れるかにかかっています。量販家電と同じで扱いの多いところほど安くなります。安く現場に納品してくれる電気店を、ネットで探すことも検討してみて下さい。