毎年のように繰り返し発生する食中毒。O157(オー157)のような細菌由来のものやノロウィルスのようなウィルス由来のもと大きく二つに大別できます。この二つ、似て非なる特徴があります。細菌は食べ物のなかで繁殖し、人の体に入ると繁殖しなくなります。これに引き換えウィルスは食べ物のなかでは増殖せず、人の体に入ると増殖するという特性を持っています。
しかし、発熱や下痢、嘔吐と言った症状はどちらも同じです。まずは、その特徴を知り食中毒を起こさないことが重要です。もし、いくら気をつけていても発生させてしまった場合飲食店は、どのように立ち振る舞い、対応すればよいのか発生から事後対応までをお話いたします。
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飲食店の食中毒、その正体を知る
食中毒の定義を見てみましょう。「飲食物の摂取に起因する健康障害」となっています。つまり、食品や水を摂取することで、体内に入り込んだ病原菌やウィルス及びそれらが生み出す毒素により腸管内で起こる中毒症状を指します。
飲食店は食中毒マニュアルを作成すべし
現実に食中毒を起こしてしまった場合若しくは食中毒を起こしたと疑わしいケースも含めて対応する必要があります。自然災害と違い忘れた頃にもやってこないかもしれませんが、起こるとすれば突然に起こります。そんな時に、想定をしていなかった、対応できる人物がいなかったでは飲食店の存亡にかかわります。予め対応マニュアルを作成し、すぐに引き出せる場所に備え付けておかれることをお薦めします。
飲食店で食中毒がおきた際のファーストタッチ
まず最初に想定されることは、罹患されたご本人かそのご家族、さらには保健所から飲食店に電話がはいると予想できます。とても重要なのがその時の対応です。事態が終息するまでの両者の関係はここで決まります。もし対応を間違えると深刻な事態になりかねません。
まず、お客様から「お店で食べた料理が原因で食中毒になってしまった」と電話が入るところからスタートです。
①飲食店側の初期対応は
- 食中毒という言葉に過剰反応しない
- 食中毒などありえないと頭ごなしに否定しない
- 疑わしき状況で、いたずらに謝罪をしない
- どうしてそう思ったか問いたださない
お客様が食中毒に罹患されている事実を受け止めた上で、体の具合を心配しお見舞いの言葉を最初にお伝えしましょう。それから以下の内容を伺いましょう。
- 食中毒の症状
- 発病した日時
- 店内で食べた料理と食べた時間
- 病院に行かれたのか、保健所に連絡されたか
もしまだ病院に行かれてないようならすぐに診療を受けることを薦めましょう。その際自宅から病院までのタクシー代や診察料を飲食店側で負担する旨伝えます。ここが大きなポイントで、連絡を受けた時点では疑わしいとしか言えないのですが、本当に店側が食中毒を起こしていた時の事を想定するとそこまでの対応が求められます。
飲食店の食中毒、誰が判定するのか
一体だれが食中毒かどうかの判定をするのでしょうか。また、食中毒の原因、発生源を誰が特定するのでしょうか。
まず、症状の原因が食中毒なのか別の原因があるのかは医師が判断します。もし食中毒が原因で症状が出ているとすれば、その原因を特定する役目は保健所の仕事になります。ですから、最初に病院へ行ったか、保健所に連絡したかを聞いたのはその為なのです。ですから病院へこれから行くというのであれば、どこの病院に向かうのかを伺いできれば病院でお会いしたうえで、事前に伺った食事の代金を返金するとともに、病院までのタクシー代及び治療費の支払いと帰りのタクシー代もその場でお渡ししましょう。結果はどうであれ店側の誠意は十分伝わることでしょう。
飲食店は独自で情報収集を行いましょう
さて、診療後すぐに食中毒かどうかの結論は出ません。通常2日から3日は要します。その間ただ結果を待つのではなく情報取集を行ってください。
- 他のお客様から同様の連絡は入っていないか
- 食材を卸している会社に同様の連絡は入っていないか
- 対象となった料理に使った食材が残っていれば状態を確認し、別にして保存する
例えばノロウィルスは体内に入ってから24時間から48時間で下痢や嘔吐などの症状が出始めます。逆算すれば、連絡を受けた時間からその分遡ることで問題となる食材や調理状況を再確認することが求められます。
食中毒か否かの診断結果をうけての対応
食中毒ではなかった場合
お店にとっては幸いな結果となりますが、罹患されたお客様は結果はどうであれ症状に苦しんでらっしゃいます。仮に結果が食中毒でなかったとしても、菓子折りの一つも持ち、お見舞いの気持ちで結果報告に伺ってください。
食中毒だった場合
こうなると、お店が発生源なのか別の感染経路があるのかを特定する必要が出てきます。なぜなら飲食店側で食中毒を発生させた場合、罹患されたお客様に対し賠償責任が発生するからです。つまり症状の程度により(死亡も含む)和解金などのお金がかかるということです。お客様には「現在鋭意調査中です。今しばらくお待ちください。結果が出次第ご報告いたします」と伝えて下さい。
ここから保健所の本格的な調査が始まります。
- 念のためお店を休業し
- 料理に使用した食材など連絡直後に保存していた食材を提出する
- 厨房内の調理スペースを清掃や消毒をせずに保存する
- 仕入れ業者の名簿
- メニューとレシピ(仕込みの状態、保存時間なども)
- 従業員全員の健康状況を報告
飲食店は食中毒保険に加入すべし
一度に多くの人が罹患する食中毒。報道では数十人から数百人と大きな規模の食中毒事故が報道されていますが、実際には10名前後の事故が多いようです。また、軽い症状もあれば死に至る重篤な状況も生まれます。その規模、状況如何では数百万円、数千万円の賠償責任が発生します。支払えない場合倒産となるのですが、それでは罹患された皆さんは救われません。飲食店を経営するのであれば食中毒保険に加入しておくべきです。
別途に加入できるものもありますが、現在加入している賠償保険のオプションとして付け加えることが出来るはずです。もし未加入であれば是非ご検討して下さい。年間数千円の掛け金で大きな安心が手に入ります。
~まとめ~飲食店で食中毒が発生した時の対応と保険の必要性
飲食店では、食中毒の発生源ではないかと疑いを受けることがあるそうです。疑いがかかると保健所の立ち入り検査に提出するデータなど対応に時間が取られます。結果何もなかったとしても疑いがかけられるだけの事情がそこにはあるということをよく認識して頂きたいと思います。清掃状況、整理整頓、従業員の身なりなど視覚から入る情報や調理する姿に疑問の声が上がっていることは明白です。そうならないよう普段から自らを律してクリーンな環境造りに努めて下さい。