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飲食店舗居抜き物件”営業譲渡”と”造作売買 “の違い等紛らわしい用語解説 

飲食店-営業譲渡-造作譲渡

Photo credit: chou_i_ci on Visualhunt

Summaryーまとめー

  • 居抜きと残置の違い
  • 居抜き店舗とリース店舗の違い
  • 営業譲渡と飲食店舗付属資産譲渡の違い
  • 転貸と業務委託の違い
  • お店を引き継ぐ際の注意点

不動産業界は昔から新しい言葉造り出す才能があるようです。例えば、マンションデベロッパーは新しい地名を造り出します。中央区新富町を「銀座東」と呼んでみたり、同じく中央区八丁堀を「東八重洲」とネーミングするなど存在しない地名で勘違いをさせることをよしとする風習があります。

飲食店の居抜き店舗についても例外ではありません。あまり一般的ではない取引であることをいいことに勝手な理解で表現を変えて表示しています。

今回は、飲食店の居抜き店舗用語について正しい知識を持つことで間違った物件選びをしないよう参考にして頂きたいと思います。

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Contents

「居抜き」と「残置」の違い

不動産会社でも間違います。居抜きと残置の区別がつかないのかわざと区別していないのか定かではありません。

「居抜き」とは、飲食店営業に必要な設備である内装、電気、給排水、空調、厨房機器、椅子、テーブルなどが揃っており、食材や調理器具、お皿やコップを持ち込めばすぐに開店できる状態の不動産物件のことを指します。

一方「残置」の意味するところはどうでしょうか。一般的に動かせるもの(厨房機器や椅子、テーブルなど)が撤去された状態を指します。読んで字のごとく残って置いてあるものです。なかにはエアコン類など売却処分出来る設備を外したものもあります。

お分かりの様に居抜きと違い食材や調理器具を持ち込んでもお店を開くことが出来ない物件を指すのです。

この違いがわからないお客様に、残置物件を平気で居抜き物件と称して仲介をしようとする不動産会社が後を絶ちません。悪意があるというよりも彼らも二つの違いが分からないのだと思います。

残置物件はトラブルの宝庫

この勘違いは更なるトラブルを引き起こします。居抜き物件が直前まで営業をしていた状態を引き継ぐ関係で、不具合があっても事前に分かっていることが多く引き継いだ後に大きなトラブルになることはありません。

これに対し残置物件の場合、長期間空室になっていることが多くあります。仮にエアコンが据え付けてあっても冷媒ガスが抜けてしまっていることが多く、機械自体は作動するのですが全く冷えも温まりもしないということがよくあります。

また、夏場を挟んで空室になっていた飲食店舗は、排水管の中の水が蒸発していることがよくあります。そのことにより流れずに溜まっていた排水管内の脂分が固まってしまい詰りを引き起こすことがあります。

当然ですが、飲食店舗をあまり扱わない不動産会社がそのようなことを知るはずもありませんから、契約を結んでしまってから不具合が起こり、結局残置物件を買った(借りた)本人が高いお金を払って修理することになるのです。

残置物件を借りる時のチェックポイント

エアコンに関していえば必ず30分以上最低温度で運転してみてちゃんと設定どおりの風が出てくるか確認をしましょう。排水管に関しては、引き渡しの前に高圧洗浄を大家さんにやって頂く交渉をするか、契約後3ヶ月以内に詰りが発生した場合の対応を大家さんにして頂くかどちらかを条件として契約するようにしましょう。

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「居抜き店舗」と「リース店舗」の違い

リース店舗はもとをたどるとソシアルクラブの居抜き店舗が始まりだといいます。赤坂や銀座にソシアルビルと呼ばれる建物が数多くあります。一見華やかな世界も残っていくお店はごく一握りです。契約書通りに解約の度に原状回復工事をするうちに次にクラブを出す人の負担があまりにも大きくなり借手がいなくなってしまったのです。

そこで考え出されたのがリース店舗です。業態ごとに内装が著しく異なる飲食店舗と違い、クラブやバーの形態はほぼどこも同じ雰囲気です。厨房設備も大して必要ありません。そこで建物の大家さんは壁紙や床のカーペットを張り替え内装付きの物件を通常の家賃よりを高い家賃をとって貸すことを考えついたのです。

借りる側からすれば、最初のイニシャルを抑えることで開業しやすくなったことと、水商売の性格上、日銭は入ってきますから少々高い賃料でも支払い能力はあったということです。一番のメリットは、お店をやめる時も原状回復義務がないことです。

「営業譲渡」と「飲食店舗付属資産譲渡」の違い

標題に掲げたこの言葉は不動産会社によって呼び名が異なる場合があります。営業譲渡は営業権譲渡と呼ぶことがあります。また、飲食店舗付属資産譲渡(内装設備、厨房機器、什器備品などの総称)については、「造作譲渡契約」や「造作売買」と呼ぶ不動産会社があります。

まず、営業譲渡はお店が営業している状態で、スタッフや造作、資産をまとめて譲り渡す契約です。契約自体を引き継ぐもので、法人であれば代表者変更を行い、個人の場合は名義変更となります。この時売買代金のやりとりが発生するようなケースを営業譲渡と呼びます。

バブルがはじける前、このようなケースでは貸主となっている大家さんに一銭も入らない為、名義変更とは別に営業譲渡と呼び売買代金の10%~30%を承諾料の名目で徴収する大家さんもいました。

次に、飲食店舗付属資産譲渡についてですが、営業譲渡が賃貸借契約と店舗付属資産の双方を同時に売買する手法に対し、こちらは賃貸借契約を新たな賃借人と大家さんで結び、その契約対象物件内にある内装・厨房機器・什器の譲渡契約を新賃借人と旧賃借人との間で結ぶという違いがあります。不動産の手続き的には、原状回復義務の引継ぎとなります。

どちらも場合も大家さんか、建物を管理している不動産会社の承諾がないと成立しませんが、関係者が多い、状態や権利関係を整理する必要から飲食店舗付属資産譲渡の方がより専門知識をもった不動産会社をパートナーに選ぶ必要があります。

「転貸」と「業務委託」の違い

転貸借を嫌う大家さんは多くいらっしゃいます。権利が複雑になりトラブルが起こりがちだと勝手に思い込んでいます。(現実にはそうではないのですが)この場合業務委託という解決策があります。飲食店舗の名義は変えずに、その飲食店舗での経営を第三者に任せてしまうやり方です。

一般的には、家賃は業務受託者が負担し売り上げの何%かを業務委託料の名目で従来の賃借人が徴収する方法です。転貸借とは異なりますので業態や内装の大掛かりな変更がなければ特別届け出は必要ありません。ただかなりグレーな方法です。新橋や神田など古くから飲食店舗が立ち並ぶエリアで古くから存在する転貸の手法ともいわれています。

知り合いの弁護士曰く、この手の業務委託を転貸と認定し、明け渡し訴訟が増えていると聞きました。もし業務委託を主張するなら、売上代金や食材の仕入れ、家賃などお金にまつわる部分は、すべて業務委託者が行わなければなりません。

お店を引き継ぐ際の注意点

売買にせよ無償にせよ飲食店を引き継ぐさいに気をつけたいのはリース物品の存在です。売主が残債を整理しないうちに飲食店を引き継ぐ契約をしてしまった場合、残債の清算を行わない限りリース物品をリース会社が引き上げてしまう危険性があります。最悪の場合残債を引き継ぐことになります。これは、法人売買により店舗を取得される場合も同様です。事前にリース物品がないか、あった場合は残債の清算が済んでいるかよく調べないととても高い買い物になります。

~まとめ~

どの取引形態であってもそれを扱う不動産会社に経験や知識が乏しければトラブルが発生するリスクは高まります。マンションやオフィスを借りる場合と異なりまだまだ特殊な契約として扱われる飲食店舗にまつわる契約。不動産会社任せでなく物件をお求めになる方がよくお調べになるなど自己防衛が必要です。

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