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飲食店賃貸借契約で預けるお金「保証金」と「敷金」で何が違うの? ~実は怖い内容です~

飲食店-保証金-敷金

Photo credit: Dick Thomas Johnson on VisualHunt.com

飲食店の賃貸借契約書を見比べた時にまず気付くのが保証金と敷金の二つが存在することです。もしこの違いを訊ねる相手が不動産会社の人であっても、もしかすると「同じです」と一言で済ませるかもしれません。

確かに何事もなく賃貸借契約が継続しているうちはその言葉通り同じものなのですが、ひとたび裁判に巻き込まれる事態になるとかなり違った解釈になります。

今回は、保証金と敷金でなにが同じで何が違うのかを見てみたいと思います。また、保証金、敷金をめぐる怖い話もあわせてお話します。

大家さん、飲食店舗でお困りではないですか?

Contents

最初に敷金から確認します

住居系の賃貸借契約、アパート・マンション・戸建ての契約に用いられているのはほとんど「敷金」です。敷金とはお金を敷いておく、つまり預けておくと言った意味に解することができます。

これは正に賃貸借契約に付随した金銭の授受で、賃借人が賃料、原状回復工事などのお金を怠っても大丈夫なように予め預けたお金という意味です。

一般的には、賃貸借契約に付随する金銭と位置づけられており、契約と切り離すことができないお金だと解釈されています。それゆえその表記の仕方は賃料の何か月分と書いてあることがほとんどです。

仮に月額10万円の賃料で、敷金3ヶ月分と書いてあれば、敷金の総額は30万円となります。先程賃貸借契約と切り離せないと申し上げましたが、ここからが敷金の厄介な部分です。金額で表記されていない分、賃料の増減に連動すると言うことなのです。

先程のケースでいうと10万円の賃料が12万円に値上げになったとすると敷金も連動して30万円から36万円に値上げになると言うことなのです。この追加分は契約更新時に一括で払うことになりますから、更新料や事務手数料とあわせてイタイ出費となります。

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つぎに保証金を確認します

先程敷金が住居系の契約に多いと書きましたが、保証金はこれに対し事業系、オフィスや店舗の契約書によくみられます。もっとも事業系でも敷金を用いるケースも随分増えましたが。

さて、この保証金そもそもの語源を辿ると大手町三菱一号館ビルの賃貸借契約まで遡ることになります。1897年の竣工ですから時代は明治時代です。

日本で初めての近代建築様式のオフィスビルを建築した三菱は当時入居にあたり敷金や保証金ではなく建築協力金という名目でお金を預かりました。

これは数十年間無利子で据え置き、約束の期間が経過するとその後数年から数十年に渡り分割で返済すると言うものでした。この建築協力金が名前を変え保証金という形で今に残っているのです。

ですから、敷金が賃貸借契約に「付随する金銭」であるのに対し保証金は賃貸借契約とは別に締結された「金銭消費貸借契約」とみなされることがあります。

メリットもあります。賃貸借契約と連動していないので、仮に賃料が値上げになっても敷金の様に追加で預託金を積み増す必要はありません。

敷金と保証金の違いで起こることとは

冒頭で書きましたように、問題なく賃貸借契約が継続されているうちは両者に何の違いもなく何の問題も起きません。ただし、賃貸借契約の相手である大家さんに問題が生じた時にその違いが明らかになって来ます。

  • 破産・民事再生
  • 任意での売買

仮に大家さんが何らかの理由で立ち行かなくなり破産もしくは民事再生を申し立てたとします。この場合賃貸借の対象である建物を引き継ぐ新たな大家さんがいずれ現れるのですが、敷金で契約をしている場合は賃貸借契約に付随していますので問題なく預けたお金は新しい建物所有者に引き継がれます。

ところが、保証金の場合引き継がれないことがあります。何故なら先程も申し上げた通り賃貸借契約とは別に結ばれた金銭消費貸借契約だと解されているからです。

全額戻らないかと言えばそうではなく、保証金の額が概ね賃料の6ヶ月以内であれば敷金と同義だと解されていますのでその分が戻ってくる確率はかなり高いといえます。

逆の言い方をすると敷金であっても6ヶ月を超える部分は、金銭消費貸借と見なされることがありますから戻らない可能性があります。

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賃貸借契約の敷金、保証金をめぐる怖い話

敷金にしろ保証金にしろ、ある一定の条件が揃うと一切返還されないことになるとをご存知でしょうか。こちらも大家さんに何らかの理由で立ち行かなくなった際のお話です。

  • 土地、建物に抵当権が設定された後に賃貸借契約で入居
  • 裁判所の競売
  • 競落後の新所有者からの立退き要求

もしこの3つが揃い、新所有者から立退きの申し立てがあると賃借人は6ヶ月の猶予期間の後、物件を明け渡さなければならないのです。

さらに、敷金や保証金も一切返還されません。理不尽なようですが今の民法ではどうすることもできません。ただ、賃貸借契約が抵当権の設定前に結ばれた場合は保護されますので立退く必要はありません。

一方、同じ売却でも「任意売却」と言って裁判所が介在しない一般的な売買取引の場合では立ち退く必要はありませんのでご心配なく。

バブルの頃のお話

この法律を悪用するデベロッパーが一時横行しました。

銀座や歌舞伎町など預託金が10坪で1億円といった昭和の契約が残る時代、単純に立退きを迫ると預託金に立退料を合わせて数億から数十億になります。そこでビルオーナーと結託して競売の申し立てをします。デベロッパーはまんまと競落し、預託金も立退料も支払わずにテナントを追い出したのです。

このことは大きな社会問題となり、その後賃貸借契約を締結する際、重要事項の説明という手続きのなかで必ず、仲介会社から借主に説明が行われるようになったのです。

敷金、保証金の返還時期にも注意が必要

本来賃借人の債務を担保するための敷金や保証金ですが、預けたお金が戻ってくるタイミングにも差があります。

賃貸借契約が終わりどのタイミングで預けたお金を返してもらえるのか気になります。敷金で概ね「1ヶ月から3ヶ月」ぐらいでしょう。保証金も昭和の契約でない限り同様の扱になっていると思います。

ただ昭和からの契約では、契約終了後5年分割払いと言ったものもありました。令和の時代であっても契約時によく確認しましょう。

~まとめ~

敷金にせよ保証金にせよ、預入時に必ず預託金の預書を大家さんから発行してもらいましょう。確かに預けたと言う証です。

この証書ですが、これを銀行に持ってゆけばお金を貸してもらえると信じている方がたまにいらっしゃいます。

残念ながらそうはなりません。敷金、保証金の「返還請求権に対する質権の設定」を大家さんの許可をもらって行う必要があります。そうたやすくいくものではありませんからご注意を。

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