前回に引き続き、店舗サブリースをより理解していただく為に宅地建物取引士の試験問題を引用して解説しています。
こちらは前の記事(その1)になります。
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<平成10年の宅地建物取引主任者試験問題より>
問:AはBから建物を賃借し、Bの承諾を得て、当該建物をCに転貸している。この場合、民法の規定及び判例によれば、次の記述のうち正しいものはどれか。なお、Aの支払うべき賃料の額は、Cの支払うべき転借料の額より小さいものとする。
- AとBとが賃貸借契約を合意解除した場合、AC間の転貸借契約は、その前提を失うため、特別の事情のある場合を除き、当然に終了する。
- Cは、Bから請求があれば、CがAに支払うべき転借料全額を直接Bに支払うべき義務を負う。
- Bは、Aの債務不履行によりAB間の賃貸借契約を解除しようとする場合、Cに対して、3ヵ月以前に通知し、Aに代わって賃料を支払う機会を与えなければならない。
- Bが、Aの債務不履行によりAB間の賃貸借契約を適法に解除した場合、Cは、AC間の転貸借契約に基づく転借権をBに対抗することができない。
3. ✕の誤りです
店舗サブリース 契約をしているサブリース事業者(転貸人)が大家さんに対して家賃の不払いをして、大家さんから 店舗サブリース 契約の解除をされてしまった場合どうなるかという設問です。もしも大家さんがお店をやっているテナント(転借人)も一緒に出て行って欲しいと望まれるのなら一緒に解除が出来ます。(債務不履行による解除の場合)
その場合であっても、テナントが家賃を継続して払える能力があり、大家さんとの関係が良好であればその物件にとどまることは当然可能です。
この設問の間違いは、債務不履行でサブリース業者つまり転貸人が契約を解除された場合に限り大家さんは転貸借契約を継続させることは義務ではないことが誤りとなります。
4.〇です
3.の解説が答えとなっています。 店舗サブリース をしている転貸人が債務不履行で契約解除されたのち、大家さんが転借人であるテナントも一緒に出て行ってくれという場合は出て行かざるを得ないのです。民法の規定通り、裁判所での判決をもとに書いておりますが、大家さん、管理会社さんは、サブリース事業者は解除できても転借人であるテナントに出て行ってもらうことは不可能だろうと思っているのです。ここが大家さんもテナントも誤った認識が多い部分なのです。
転借人と直接契約すれば、手間も時間も掛からない
サブリース事業者として、大家さんに滞納を続け契約の解除までテナントになにも知らせないでいられるはずがありません。途中大家さんからテナントに直接賃料支払いの請求があるはずです。そもそもサブリース事業者も大家さんに多額の保証金を預けております。 店舗サブリース 契約解除の前に必ず賃料不払いに対する裁判があり、まずは保証金の範囲で清算が行われます。その時点で転借人であるお客様と大家さんが直接契約を結べば問題ないのです。
誤解の本質は、もともと借地借家法に基づき借手の権利が保護されている日本の賃貸借契約において、いざ立退きの必要が生じた場合に賃借人がいるだけでも大変なのに、転貸人が存在するとなると時間も金額も2倍かかると信じ込んでいるところです。
サブリース事業者が滞納をするかどうかは二の次として、一義的には貸出された物件を大家さんがどうなさりたいのかハッキリと方向を示されれば、面倒な立退きやお客様に対する代替え物件の用意はサブリース業者が責任と熱意をもって解決するはずです。
サブリース事業とは、単なる転貸による鞘抜き事業ではなく、不動産にまつわる知見や経験を大家さんの代わりとなって発揮し大切な財産をお守りすることが身上であるとご理解ください。
普段は、黒子として予防保全などの物理的な管理や工事の際の監理を行っていますが、いざとなれば大家さんとテナントの間を取り持つ仲介役とご理解下さい。
サブリースという契約形態の歴史
サブリースという管理形態や契約形態が世に出始めてから30年が経とうとしています。はじめはオフィスビルからスタートし三菱地所、三井不動産、住友不動産など先を争うように取り入れて行きました。世はまさにバブル真っ盛りです。これには土地の価格が高騰し思うように土地買収が進まずオフィスビルが建てられないという時代背景があったのです。
そこで、土地所有者にビルを建ててもらう代わりに一棟丸ごと賃料保証をし、テナント営業から管理まで丸抱えで契約をしたのでした。
バブルがはじけて今度は賃貸マンションのサブリースが盛んとなります。大東建託、長谷工コーポレーションなどゼネコン各社が土地の所有者にマンションを建ててもらう見返りに全戸家賃保証を請け負う契約をするようになってゆきました。
そして今、2020年の東京オリンピックを控え、アジア諸国からインバウンドの観光客ブームを迎え飲食店舗の需要が増す一方です。だからこそ専門知識と経験を積んだサブリース会社が必要とされています。これは取りも直さず、大家さんの賃貸リスク、空室リスクの軽減を可能にし、テナントにとっては賃貸借上で発生するトラブルを自分たちで解決するのではなくサブリース会社を利用して解決をするというリスクヘッジを実現しています。
冒頭で「無断転貸を連想させる」と書きました。本文ではそのことに触れずに書いてまいりました。今の法律だと、仮に無断転貸であっても大家さんはムゲに無断転借人を追い出すことが出来ないこととなっています。但し、住居と非住居(事業用)ではその扱いに格段のさがあります。大家さんが裁判所に立退き明渡しの手続きを行ってもどのような判決が出るのかわからない住居系転貸と違い、事業用転貸とは全く別物だとお考え下さい。
今回は、サブリース事業についての理解を宅地建物取引士試験の過去問題を通じて解説してまいりました。飲食店舗のプロが 店舗サブリース で果たす役割をご理解いただけたでしょうか。
こちらは前の記事(その1)になります。