まとめ―Summary―
- 家賃の10倍の売上が平均売上の目安
- FL比率に賃料を加味したFLR比率が平均売上の70%以下であること
- 店舗物件を借りる際に家賃が適正か検討する指標は平均売上を用いる
- 平均売上を試算することで、飲食店の経営指標となる
Contents
飲食店の平均売上とは
よく頂く質問の一つに売上があります。
決まって内容は「どれくらいの売上があれば飲食店を続けて行けるのか?」というものです。業種も違えば席数も違う中で一概にいくらとは言えません。
そこで、簡易ですが適正な平均売上額を導き出す方法を皆さんにお話しします。
業種や立地で多少のアレンジは必要ですが、これから飲食店を始めようとお考えの方にとっては物件選定に際してよい指標となるはずです。
対売上比率で考える
飲食店の経営について書かれたものには、必ず各経費ごとの対売上比率が出てきます。
つまり、全体の売上額に対して各経費が何割を占めているのか、というものです。中でも代表的なものがFL比率と呼ばれるものです。
FはFoodつまり食材費、LはLabor(レイバー)つまり人件費です。この2つを合わせた額が、売上に対して55%~60%になっているのが適正と言われています。
- F:Food(食材費)
- L:Labor(人件費)
FL比率=(F+L)÷売上
適正値:55%≦FL比率≦60%
ただ、これでは飲食店に重要な立地要素が含まれていないため、これから飲食店を始めようと考えている方には不十分です。
そこで、このFL比率に賃料=Rentを加味したFLR比率が、対売上比率として重要な指標となってきます。
一般的に、売上に対する賃料の適正な比率は10%と言われています。ですから、売上に対するFLR比率は65%~70%が適正となるのです。
- F:Food(食材費)
- L:Labor(人件費)
- R:Rent(賃料)
FLR比率=(F+L+R)÷売上
適正値:65%≦FLR比率≦70%
賃料からみた平均売上の考え方
飲食店の用途で不動産を借りる場合、2つの方法があります。
スケルトンから造るやり方と、居抜きで飲食店物件を手に入れるやり方です。
スケルトンの場合、一から設計できますから、席数やこだわりなど「店づくり」の自由度は高いのですが、その反面コストがかかります。
一方、居抜きの場合は、すでにある造作を活かしてコストを安くあげることができますが、席数などの「店づくり」に制約が生まれます。
この前提を踏まえ、次の試算に移ります。
< 試 算 >
先のFLR比率の説明で、Rつまり賃料の売上に対する適正な比率は10%という話はしました。
ということは、逆に賃料から売上を想定するなら、賃料の10倍が適正な売上となります。
仮に、15坪の居抜き店舗を月額20万円の賃料で借りたとすると、月あたりの適正な売上は賃料を10倍した200万円となります。
居抜き店舗 15坪
賃料:200,000円/月 とすると、
適正な売上は、
200,000×10=2,000,000(円/月)つまり200万円/月
飲食店の営業日数から1日の売上を割り戻すと
月あたりの適正な売上が200万円なら、これを月の営業日数で割れば、1日あたりの適正な売上が計算できます。
営業日数が月20日なら、
2,000,000÷20=100,000(円/日)つまり10万円/日
月25日なら、
2,000,000÷25=80,000(円/日)つまり8万円/日
月30日なら、
2,000,000÷30=66,666……(円/日)つまり約6.6万円/日
日々の売上をお店の席数で割り戻すと
1日あたりの適正な売上を、お店の席数で割れば、1席あたりで1日に上げなければならない売上が出てきます。さらに、ここに客席回転数と客席稼働率(満席率)とを合わせて検討することで、想定している客単価でお店が利益を出せるのか検証することができます。
上の月あたりの適正な売上が200万円、営業日数が月20日、つまり10万円/日が1日あたりの適正な売上な場合で、1席数あたりの売上を計算します。
客席数が25席なら、
100,000÷25=4,000(円)
20席なら、
100,000÷20=5,000(円)
15席なら、
100,000÷15=6,666……(円)
それぞれの1席数あたりの売上を客単価で割ってみましょう。ここでは、客単価3,000円と想定している場合の計算です。
客席数が25席なら、
4,000÷3,000=1.3…….(回転)つまり1.3回転
20席なら、
5,000÷3,000=1.6…….(回転)つまり1.6回転
15席なら、
6,666……÷3,000=2.2……(回転)つまり2.2回転
これに、客席稼働率(満席率。ここでは80%とします)を加味する(0.8で割り戻す)と以下の通りとなります。
客席数が25席なら、
1.3÷0.8=1.625(回転)つまり1.6回転
20席なら、
1.6÷0.8=2(回転)つまり2回転
15席なら、
2.2÷0.8=2.75(回転)つまり2.8回転
同様に、営業日が25日の場合は、8万円/日が1日あたりの適正な売上なわけですから、以下の通りになります。
客席数が25席なら、
80,000÷25÷3,000÷0.8≒1.3(回転)
20席なら、
80,000÷20÷3,000÷0.8≒1.6(回転)
15席なら、
80,000÷15÷3,000÷0.8≒2.2(回転)
飲食店の平均売上の考え方について
< 試 算 >から、公式をまとめてみると、
公式1:月あたりの適正な売上
【月あたり賃料】÷ 10% =【月あたりの適正な売上】
公式2:1日あたりの適正な売上
【月あたりの適正な売上】÷【月あたり営業日数】=【1日あたりの適正な売上】
公式3:1席あたりで1日に上げなければならない売上
【1日あたりの適正な売上】÷【席数】=【1席あたりで1日に上げなければならない売上】
公式4:必要な客席回転数
【1席あたりで1日に上げなければならない売上】÷【客単価】÷【客席稼働率(満席率)】
=【必要な客席回転数】
と、なります。
飲食店では、満室状態で2回転以上させるというのは相当大変です。
ということは、【必要な客席回転数】を、できれば1回転台で抑えておければ、想定以上にお客様が入った場合、その分利益が残るということになります。
そのためにも物件は大事です。いい物件は検討する時間があまりないのはよくわかりますが、場所や内装が気に入ってしまい、不動産会社に急かされるままに契約してしまうのだけは避けてほしいと思います。
それだけに、事前にシミュレーションをしておかれるべきなのです。席数も足りない家賃も高いとなれば利益を出すどころかお店を維持して行くことさえままならない状態になってしまいますから。
飲食店の売上と経費の正しい関係も考えてみよう
売上と経費の正しい関係も考えてみましょう。
主な経費
- 家賃(賃借料)
- 光熱費
- 人件費
- 原価
これらの関係については、次の記事で「食べ放題」のお店を事例にわかりやすく解説をしています。
FLR比率をもう一度考える
飲食店の運営を取り上げるサイトや本では、売上に対して食材費比率、人件費比率、賃料比率などについて細かく割合を定めているものが多いようです。
確かに、それぞれの一般的な比率は参考になりますが、それだけでは少々柔軟性に欠けます。
例えば、カフェや喫茶店なら、一般の飲食店に比べて仕入れ(食材費)を抑え、その分賃料の高い場所に出店することが可能です。
カウンターだけのお店で、人件費をかけないよう工夫すれば、その分食材にお金をかけることもできるでしょう。
少々原価率が高くなりますが、味でお客様を呼ぶお店を作ることもできます。
逆に一等地と呼ばれる立地で、高い賃料を払ってでも飲食店を始めたいと思うのであれば、食材も人件費も削らないとやっていけません。となれば、粉物と呼ばれる立ち食い蕎麦やうどん店以外選択肢が無くなってくるということです。
つまり、「2 対売上比率で考える」で説明したFLR比率65%~70%の範囲で、3つの要素を調整すれば利益を出す飲食店は作れるというわけです。
飲食店の生命線である平均的な対売上の利益
売上に対する利益の比率を考えてみたいと思います。一般的には対売上比率10%と言われています。
「3.1 < 試 算 >」で示した15坪・月額賃料20万円の例であれば、毎月20万円の利益が出る計算になります。
FLR比率75%に利益が10%で合計85%、残る15%は水道・光熱費や消耗品、それと借入資金の返済分となります。
「3.1 < 試 算 >」でお分かりのように、同じ物件を借りても席数と月の営業日で大きな差が出てきます。あくまでも利益は結果ですので、飲食店をどの立地のどの物件で始めるのか、客単価はどうするのか、何通りも考え、シミュレーションしてみて下さい。
まとめ「飲食店の平均売上」
- 家賃の10倍の売上が平均売上の目安
- FL比率に賃料を加味したFLR比率が平均売上の70%以下であること【FLR比率=(食材費+人件費+賃料)÷売上】
この2つを目安として、店舗物件を借りる際に家賃が適正か検討する上の指標にしてください。