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独立・開業に適した居抜き物件の見分け方は
なにもないスケルトン状態から飲食店を作るとなると10坪程度の広さでも造作・設備・厨房機器を含めると600万~1,000万円ものお金がかかります。
これに対し 居抜き物件であれば安い物件で50万~、高くても300万円程で内装造作・什器備品に加え電気、空調、給排水設備、それから厨房機器まで一式揃います。
看板の架け替えや壁紙など多少の手直しや業種により異なる厨房機器の入れ替えなどを考えてもプラス100万円前後で開店まで漕ぎつけることは十分可能です。
しかし、よく吟味もしないで居抜き物件を購入してしまうと、次から次へと瑕疵(不具合)が出てきて大変なことになることもよくある話です。
そこで、良い 居抜き物件を見分ける方法を物件のタイプ別に解説していきたいと思います。
短い内見でどこまでわかる?必見ポイントとは
内見=「ナイケン」と聞いてピンと来ない方もいらっしゃるでしょう。これは不動産業界用語で物件の内部を実際に見に行くことを指します。(内覧=ナイランともいいます)
さて、この内見ですがポイントを絞って要領よく見ないと時間切れになることがあります。前もって見るポイントを決めておくなどの準備が必要です。
以下はお店が営業中の居抜き店舗を内見する場合と閉店した後の居抜き物件を内見する場合の2パターンに分けて解説します。
「営業中」の居抜き物件 内見時の注意点
営業中の居抜き物件を検討するうえで一番のメリットは、現在の飲食店経営者(お店をお売りになる方)に直接いろんなお話を伺えることです。
- 街の様子
- 曜日による客数の違い
- 近くで人気のお店
など居抜き物件周辺のお話しから始まり、
- 厨房機器の動作の具合
- エアコンの効き具合
- 排水管高圧洗浄などメンテナンスの履歴
など居抜き物件を選定する上で重要な情報を直接聞くことが出来ます。その場所で開業するのかどうかはこのあたりの内容次第といえます。
逆に営業中の居抜き物件のデメリットは、不具合が隠されているところにあります。
当然ですが、営業中の居抜き物件はお客様に醜いところを見せません。また、設置されている機器の状態を確認するにも限界がありますし見る時間も営業の邪魔にならないよう短時間で済まさなくてはなりません。いろいろと制約がある中でこちらがシッカリ見抜かなければならないのです。
「営業中」居抜き物件のチェックポイント
- 床のヌメリなどはないか
- 人が厨房内を移動する動線以外が汚れていないか
- 厨房内が整理整頓されているか
- 不必要なものが多くあり、埃をかぶっている物はおかれていないか
- 厨房内のいたるところにゴキブリ取りやネズミ駆除用のエサが置かれていないか
- グリストラップは清掃されているか
- 排気ダクトやグリスフィルタは装備されているか
これらがなおざりにされているということは、お店が忙しく店舗のメンテナンスに時間とお金を使ってこなかった証拠です。そのことにより後々問題を引き起こす原因となります。
このような居抜き物件では、全体的に汚れていても営業しているとなぜかあまり気にならないという錯覚を起こします。もしここを見落とすようなことがあると、床や換気扇の清掃にゴミを捨てる費用、グリストラップの清掃に加え、最悪の場合排水管の洗浄まで行う必要が出てきます。
排水管に関しては、営業を始めて直ぐに詰まってしまいお店を休業しなければならなくなるケースもあります。これらのことを想定して、引き渡しの状態の確認と引き渡し後の不具合について処理方法、費用負担の確認などを事前にしておくことをお薦めします。
「閉店後」の居抜き物件 内見時の注意点
既に閉店しひとけのない居抜き物件というのは内見時にどこか寂しい印象を受けます。これから自分のお店をやるぞ!と思う前に、なぜこの店は辞めたのだろう?とつい思いがちです。
ましてや、内見時に電気が付かないというのは論外です。そんな不動産会社とは付き合わない方が身のためです。なぜなら居抜き物件に関する知識がないという証拠だからです。
内見時に問題点に気づかないとあとあとトラブルが生じてきます。電気が来ていないことで引き起こされる問題点とその理由を見ていきましょう。
「閉店後」居抜き物件のチェックポイント
- 居抜き物件の店内に入った瞬間にすえた油(脂)の臭いはしないか
- ブレーカーは入れたままか、厨房機器の電源は入れられているか
- エアコンは設定どおりに作動するか
- ガスも水道も使用できるか(食洗器などの動作チェックに必要)
- グリストラップや排気ダクトなどの汚れをチェック
- 電気容量やガス、水道のメーター容量が目視できるか
- 前店舗業態で排煙ダクトは問題なかったか(音・排気能力等)
- 近隣との関係が良好だったかどうか
閉店後の居抜き物件を内見する場合は、「五感」を存分に働かせてください。特に嗅覚、視覚(見た目)です。
お店に入った時の臭いというのはほぼ排水管かグリストラップにこびりついた廃油や脂が酸化した臭いだと思って間違いありません。ここでに臭うということは、排水管の定期洗浄がなされていないという証拠です。もしくはグリストラップが汚れたままというのがほとんどです。下手をするとすぐに詰りを引き起こす可能性があります。
次に、コールドテーブルや冷凍冷蔵庫など電源が切れている場合は要注意です。これらの厨房機器は使い続けている時にはなんら問題ないのですが、電源を落とし冷媒の循環が止まった後に不具合を起こす場合がほとんどだからです。
細い冷媒管内で冷媒ガスと一緒に循環していたゴミやカスなどが電気を切ることで一旦管内に堆積します。再度電源を入れ冷媒ガスが循環し始めた時に一か所にゴミやカスが集まり目詰まりを引き起こすのです。
前所有者が購入してまだ日が浅いものでも簡単に目詰りを起こし冷えなくなります。そうなると買い替えた方が安い場合がほとんどです。中古の厨房機器を買うリスクとはこういうところに隠れているものです
何れにせよ、電気・ガス・水道が正常に使える状態でなければ居抜き物件の内見は後で泣きを見ることになります。もし冷蔵や冷凍の機器で電源が入っていないものがあれば、最大限の冷却温度に設定しスイッチを入れましょう。概ね20分前後で設定温度に下がらなければ要注意です。エアコンも同じです。不動産会社任せでなく必ずご自身で動作チェックをしましょう。
居抜き店舗は前テナントと近隣との関係を聞くべし
前テナントから詳しい話が聞けない場合で起こりやすいトラブルに近隣との確執が挙げられます。煙、臭い、音のたぐいです。
厨房から延びる排気ダクトが直接隣地へ噴き出していて、肉や魚を焼く煙がクレームになっているケース、中華やカレーの様に臭いのきつい業種に対してのクレームなど前テナントと近隣とでおきていた揉め事を知らされないままに契約を締結したとすると、後から多額の工事費(ダクト工事等)が必要になることがあります。
ご自身が始める業種次第では近隣への聞き込みも必要です。この辺はよく不動産会社に確認をとっておきましょう。
分譲マンションでの開業は特に注意が必用
入居を希望する居抜き物件が「分譲マンション」の一室であったなら管理組合もしくは管理室への確認は必須です。
なぜなら管理規約で業種が制限されていることが多く、極端なケースでは、飲食店は許可するがアルコールは出してはいけないとハッキリかいてあることがあります。これを知らずに契約すると悲劇です。
~まとめ~居抜き物件の内見に共通して言えること
当然ですが、 居抜き物件内にある設備、厨房機器は中古品です。仮に壊れていないと説明を受けたとしてもいつ何時不具合を起こすかわかりません。ここは買った人の自己責任です。
また、よくあるクレームに冷蔵庫やコールドテーブルが冷えないというものがあります。中古であるがゆえに庫内に入れる食材の量によって冷えたり冷えなくなったりするのです。
ここも100%動作保証がされている新品とは異なるところです。とは言え一般的に居抜き物件 は相応のお金を支払って買い取るケースがほとんどですから割り切れないお気持ちはよくわかります。そうならない為にも内見でのチェックが重要になってくるのです。
業種、業態によりお金がかかるのが設備の容量アップです。
電気、ガス、水道は必ずその容量をチェックしましょう。ご自身でガス管の口径や水道管の口径を調査して希望の業態に適応しているかどうかの判断は難しいでしょう。ただ、居抜き物件を扱う不動産会社にはたいてい設備に詳しい担当がいるものです。
もしご自身で判断が付かない場合協力を要請すれば快く引き受けてくれることでしょう。そこはうまく活用しましょう。前もって工務店などに相談をして、一緒に 居抜き物件 を内見に行けるのであればこれ以上の安心はありません。
総じて居抜き物件の内見はただ見に行くだけではダメです。日ごろから準備をしておくべき大切なイベントなのです。だからこそ、お目当ての物件に出会ったときに素早い決断が出来るのです。
決して場所や見た目の綺麗さだけに一目惚れし、後で後悔するようなことだけは避けて頂きたいと思います。