近年不動産業界で認知されてきた居抜き店舗。飲食店、ヘアサロン、マッサージなど内装工事にお金がかかる業態で見受けられます。
本来は、原状回復義務と言って借りた状態に戻す工事をして明け渡すのが当たり前だったころに比べればずいぶんと融通がきくようになったと思います。
とは言え、大家さんや管理会社が大手になればなるほど未だに契約書通りに原状回復工事をするよう言ってきますが、SDG’sなどに参加する企業にとって十分に使えるものを廃棄するのはあまりにも環境にやさしくないのではないかと思いますがいかがでしょうか。
さて、立場により賛否のある居抜き状態での解約、明渡しはどのようなメリットがあるのでしょうか。今回は居抜きの状態で不動産を借りる立場から見た王道のメリット、意外なメリットを検証してみたいと思います。
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お金・時間の削減効果は絶大
工事コスト削減
何もない状態、つまりスケルトンから飲食店の施行をする場合、最低でも坪当たり60万円ほどの工事費用が発生します。床、壁、天井、カウンターなどの内装に防水工事、給排水工事、ガス工事それに排気ダクトなどの厨房設備工事、電気、空調などの設備工事など多項目に渡ります。
居抜きの場合、同じような業態で引き継ぐ場合などこれらの工事が不要になる場合があります。
ただほとんどの場合で、厨房機器などのレイアウト変更や内装の模様替え、看板の掛け替え工事などは必ず発生しますが、それでも費用はスケルトンからの工事費に比べ四分の一程度で収まります。
時間の削減
工事項目が少ないということは、工事に要する期間も短くなるということです。一般的に一つの現場で複数の工事業者が施工する合番工事は嫌がられます。
ですから床防水が終ってから配管工事、その次がダクト工事と五月雨式に工事は進んで行くことになり、故にどうしても期間が長くなってしまいます。
居抜きの場合大掛かりな工事が無ければ合番で工事が行われていても邪魔にならないので工事期間が短くて済みます。段取りが良ければ1週間もあれば十分です。
そのことにどのようなメリットがあるかと言うと、お金を稼がない期間(工事期間)を短くし、オープンまでの賃料支出を削減するメリットがあります。
契約開始から短期間での開店が出来る最大のメリットは、開店準備に要するコスト全般の削減にあるのです。
意外!保険所の検査時にメリット
意外と知られていないメリットに保健所の検査があります。居抜きで飲食店舗を引き継いだ場合でも、事業者が変更になる為必ず保健所の許可がないと飲食店は営業が開始できません。その申請の際、保健所の方からこういわれるはずです。○○店の後のお店ですか?と。
当然ですが前の飲食店も保健所の検査をパスしている訳ですから居抜きで店舗を引き継ぎ模様替えだけをしたということであれば、1週間から10日後に保健所の職員が検査に訪れても問題なく合格がもらえます。
これがスケルトンだとそうはいきません。事前に保健所を訪れて内容の確認をしておかないと、折角仕上げたのに指摘があれば手戻り工事が発生し時間も工事費も無駄にすることになりかねません。
閉店前から居抜きで引き継ぐ最大のメリットは
居抜きで店舗を引き継ぐ場合2つのケースがあります。閉店してしまってからお店を引き継ぐ場合とお店がまだ営業している時に居抜きで引き継ぐ場合です。後者の場合いくつかのメリットがあります。
街の特徴・街のニーズ
街によって消費性向に違いがあります。学生街、ビジネス街、住宅地で違いは明確です。飲食店を居抜きで引き継ぐ際にお店を明け渡すご主人から街の生の声を聞くことが出来ます。
「ランチはいくら位が妥当か」、「夜の客単価の設定はいくら位の店が繁盛しているか」、「土曜、日曜のニーズはあるか」等々、長年営業して来られた貴重な情報が得られます。
つまり、その場所で飲食店を始める際のなにものにも代えがたい情報なのです。
アルバイトの引き継ぎ
実際にある話です。事情があって限られた場所でしかアルバイトが出来ない方が結構いらっしゃいます。住んでいる家が近いとか遅くまで働きに来てくれるには理由があるものです。
お店が営業している間に居抜きで引き継ぐ話がまとまる際に、その時お店で働いているアルバイトを紹介してくれるようお願いをすると意外とすんなりことが運ぶものです。
もし飲食店のアルバイトで頭を悩ましているなら、一番手堅い方法かもしれません。
その場所にお客様がついている
閉店をした飲食店の張り紙を見ると誰しも無意識に次は何の店になるのだろうかと想像します。人通りがある場所や長く続いた飲食店の後など、突然工事が始まり数週間後に新しいお店がオープンということが往々にしてありますが、この期間を活用しない手はありません。
道行く人達にこれから何のお店がオープンするのか宣伝するのです。また、道行く人達も期待をしてくれるはずです。
例えば、開店時に飲み物半額サービスやランチ半額サービスなどのクーポンをつけたフライヤーなどを工事期間中お店の軒先に置けば開店初日からお客様に集まって頂けます。
また、居抜き店舗の場合、工事期間が短い分すぐに次の店がオープンということも珍しくありません。前のお店を訪ねたつもりが新しい店に衣替えしていた。ここまで来たのだから試しに入ってみようということも大いに考えられます。
~まとめ~
居抜き店舗で始める飲食店のメリットはお分かり頂けたと思います。もちろんですが、いいことばかりとは限りません。
10年以上も続いたお店を居抜きで引き継いだものの厨房は防水層がダメになっていてイチから工事をしなければならなかったという話や、内装を工事しようと剥し始めたらアスベストが出てきて大変な工事となったという話に、本来は駐車場だった場所を用途変更しないで飲食店として営業していた等トラブルを引き継ぐ危険性をはらんでいます。
居抜き店舗と言えども賃貸不動産物件であることは間違いありません。仲介をする不動産会社によく確認をしてもらい、もし後で不具合が発生した時の対応を確認しておきましょう。