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飲食店で起業し成功している女性達~汗と苦悩の軌跡~
女性が飲食店で起業する記事が少ないように思います。それは体験記のようなものや、日常を綴った日記やTwitterのようなものではなく第三者の眼で見た経営者としての女性像を書いたものという意味です。店サポの記事を読んで下さる読者のなかには多くの女性がいらっしゃり、今回のリクエストとなりました。
これまでお会いした女性経営者のなかから3名をピックアップしてその人となりと共通する部分について分析してみたいと思います。これから飲食店を始めようとお考えの女性陣に少しでも参考になれば幸いです。
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新宿区で甘味屋&イベントスペース
そもそも書家として活動して来られた女性でしたが、いくつもの芸事を心得ておられます。
茶道、華道、日本舞踊それらが一つになり書家としてのレベルが上がるということなのです。そのTさんは、あるアイデアを温めていました。
世の女性に広く日本文化の素晴らしさと奥深さを体験してもらう場所を提供できないだろうかというものです。早速Tさんは講師となる女性探しと、場所の確保に奔走し始めます。
その中で巡り会った物件をいたく気に入るのですが、茶道の先生がお茶を教えていた茶室を持った一軒家です。ここを改造して教室と食事も併せて提供出来る場所にリノベしたのです。
飲食は当初夜を主体にしたボリュームのあるものでしたが、実際には甘味など疲れた頭と体を癒すものを提供することに変更されました。
さて、スタートから数ヶ月大変苦労されていました。教室にしても甘味のお客数にしても当初の稼働率に届かないのです。そこでTさんは考えます。「和のテイストでもっと違うイベントを持ち込めないだろうか」と。
お店を構えた地にまつわる歴史や風俗を調べていくうちにあることを地元の方から教わります。近所に有名な噺家さんが住んでいたと。
そこで思いついたのが落語の高座をやってみてはどうかというアイデアです。12畳程の広間に30人ほどのお客様、高座終了後はほぼ皆さんがお土産にところてんを買って行かれます。
来られたお客様はリピーターとしてお店を利用されるのはもちろん、本来の目的であった日本の伝統文化を身につける教室にも多くの方が通われるきっかけとなったようです。
この催し、口コミで広まり第2回、第3回の開催になっていると伺いました。開催の度にその後のお客様が増える絶妙なアイデアで見事お店を軌道に乗せました。
千代田区で唯一無二のブックカフェにチャレンジ
神田神保町と言えば古本屋街です。その一角に古くから洋書を専門に扱う本屋さんが立派な自社社屋で営業されています。
実は、本業の洋書販売は2階で行い、高い家賃の取れる1階は大手の出版社に貸出していたのです。
10年以上続いたその関係は景気の変化と共に終焉を迎えます。大手出版社は突然撤退を表明してきたのです。
さて、この賃貸借を取り仕切る女性Iさんは突然の申し入れに慌てます。しかし、契約上は解約予告期間と言って、申し入れから6ヶ月間は賃料が支払われることになっていた為次のテナントをどのように確保するかその日から悩むことになるのです。
通常であれば、物販やファミリーレストランが誘致できそうなサイズの1階です。不動産屋のスタンスで言えばあまり問題の無い物件です。ところが、彼女の迷いは2つありました。
- 本屋の長女として生まれ一度は本屋をやってみたいという想い
- パブを経営していた経験から飲食店として営業してみたい
と言う想いです。
この二つを満たす結論は「ブックカフェ」の経営という形で導き出されます。そこに現れたハードルは3つ。
- 資金の調達
- 本格カフェの技術
- 店頭に並べる本の確保
これまで無借金経営でやってきた本業の洋書店にすがることなくご自身の事業計画で資金を捻出しようと計画します。会計事務所を探し指導を受けながら日本政策金融公庫からの融資に成功します。
第2のハードルはカフェに欠かせないコーヒーを淹れる技術です。大手コーヒーメーカーを訪ね、コーヒー豆の卸を回り、たどり着いたのがイタリアのエスプレッソマシンでした。
美味しいコーヒーはマシンに任せるというのが彼女の回答ですが一つだけ難点がありました。マシンのお値段です。ちょっとした高級車が買える価格は今回の融資のなかからは捻出できません。Iさんは交渉重ね、何と無償での貸し出しをメーカーにのませたのです。
最後のハードルは棚を埋め尽くす本の数です。当初本は別の事業主体に委託しようと考えていたようですが、交渉は不調に終わり自分で工面しなければならなくなりました。
そこは家業が本屋さんだけに応援者は程なく見つかります。別の大手出版社から自社の本だけを置くのであればという条件で棚を埋める手伝いを買って出てくれたそうです。
一時は不可能に思われたブックカフェはどうにかオープンにこぎつけ、今ではリピーターも増え売り上げを伸ばしています。
北区の駅前でスナック&ダイニング&カラオケ教室
大阪出身のKさんは、若いころから歌が上手く演歌歌手を目指して活動を続けてこられました。CDデビューにコンサートと多忙な日々を過ごされてきましたが、50歳を過ぎるころから先行きに不安を覚えたと言います。
ボイストレーナーや歌のレッスンで生計を立てる選択肢もあったそうですがKさんが選んだのは、ご自身のファンが食事やお酒を飲みに来てくれる飲食店を開くことでした。
そのお店ではカラオケを歌いながらKさんのレッスンも受けられると好評を博し、オープン当初から常連客が来ると言った稀有なお店でした。なんだ上手くいっている話かと思われたかもしれませんが、この店をオープンされるまでが大変なご苦労をしてこられました。
そもそもこちらのお店は、居酒屋だったところを居抜きでお買いになられています。それを改造して今のお店にしたのですが、数々の見込み違いがありました。
まず、2系統ある排水管の内1系統が長年詰りを起こしており使用不能になっていたのです。管理会社と直下階にある飲食店と3社で協議し休みの日を利用して大掛かりな工事を行いました。もちろん費用は大家さん負担という交渉をした上でです。
次に発覚したのが直上階からの水漏れです。それもトイレの汚水でした。直上階は飲食店ではなく物販店だったのであまり水を使用することがなかったため発覚がおくれたのですが、今回トイレの天井を張り替える為既存の天井を取り払ったところで分かったようです。上階の店舗オーナーと交渉をしてこれも直上階の店舗の負担で工事が終了しました。
最後に分かったのが電気のトラブルです。外にある袖看板を新しいものに架け替えようと作業をしている時に問題は発覚します。どうやら別の階の電気までKさんのブレーカーにつながっていることが分かったのです。つまり前のテナントは別の階の電気代を肩代わりしていたことを知らなかったようです。
これも事情を説明し、後で工事実費を請求して解決したと言います。女性にありがちな工事関係を工事業者に丸投げせずに自分で対応したKさん。さすが関西人?といったところでしょうか。
~まとめ~
この3人の女性、共通点があります。ともかく人任せにしないことと、自分が勉強して解決策を考え出す点です。
運営面でのアイデアであったり、次々に発生する問題の解決、他人との交渉など非常にポジティブで対応が早いのが特徴です。
それから失礼を覚悟で付け加えるならば、よく喋る、そして笑う。人を巻き込む共感力に溢れている方が飲食業界で成功される女性経営者像ではないかと思います。