アルバイトは大学生、高校生と相場が決まっていました。その状況がコロナ禍で一変しました。今後は事業主さんの意識を変えて頂きたいと思います。
これまで若くてよく働き、教育の質という意味でも申し分のない労働力が、アルバイトという形で必要な時だけ手に入ったことは、飲食業界をはじめ多くの業界がその恩恵にあずかってきました。
しかし人口は減少に転じ、アルバイトの働き方が多様化し飲食店でなくても手っ取り早くお金が稼げる時代となりました。そこに加えてコロナ禍です、これにより職を失った人たちは、もう同じ思いはしたくないと業界を敬遠するようになったのです。
今まさに飲食業界は慢性的な人手不足に陥っています。
Contents
アルバイトを巡る変化は以前からあった
ではどこかに解決の糸口があるのでしょうか。また、これまでは大学や専門学校を出たら就職をするというのが一般的でした。ところがバブル崩壊ばかりではなく、リーマンショック、東日本大震災そしてコロナと経済的、メンタル的に大きな影響を及ぼす出来事を経てこれまで日本が歩んできた既定路線ではない働き方が形成され始めています。時間単位での派遣型バイトもその一つです。
今回は、変わる働き方とアルバイトのあり方の変化を追いながら解消されることが恐らくないと予想されている飲食業界の人手不足をどのように補って行けばよいのか保険の観点から考えて見たいと思います。
アルバイト・パート層における働き手の変化
コロナ以前、全国の飲食店は67万店舗、そこで働く人達は436万人という数字が総務省から発表になっていました。そのような中、最近飲食店やコンビニ、居酒屋に行くとあることに気が付くことがあります。
以前は学生のバイトばかりだったお店にご年配の女性が働いていたり、東南アジア系の若い人たちだったり、企業をリタイアしたと思しき男性の姿があります。
これまで通りの若い男性や女性が働く居酒屋でも、中身は派遣社員であったりプロのアルバイト、つまりフリーターと呼ばれる方々が大勢働いています。
これらを一括りにして非正規社員と呼ぶようになっています。コロナ前アルバイトやパートなど非正規社員の割合が84%と呼ばれる飲食店業界ですが、その労働者が職もしくは雇用者に求める内容が、コロナ禍により大きく変化をしてきています。
アルバイト・パートが重視するもの
少しでも待遇のよい職場を探し求めています。
一番は時給です。都内では2024年10月から最低賃金が時給1,163円となります。現在でも1,200円前後の求人が多いと言いますが、時給が高ければ人が集まるかと言えば必ずしもそうではないようです。ここには雇う側と雇われる側の思いにズレが生じています。
雇用側では、正社員を雇い社会保険料を半分負担することに抵抗があります。また、労働力として期待しているのはフルタイムではなく、お客様の多い時間帯だけです。少々時間給を多めに出しても非正規雇用にこだわりたいとの思いです。
これに対し、最近のアルバイト、パートはどのように考えているのでしょうか。学生や主婦などが扶養者という枠の中で働いてきたのと違い、生活の糧としてアルバイトやパートという働き方を選らんでいるのです。
くわえて時給という収入面もさることながら、「社会保障」という安心を手に入れたいと思うようになってきています。
このギャップに飲食店側が気づかないといくらアルバイトを募集しても人は思うように集まらない可能性があります。
社会保険に加入するには
これまで飲食店は非強制適用事業として優遇されてきました。どういうことかというと、本来従業員が5人以上いる事業所は社会保険に強制加入させられるのですが、旅館や理髪店などと同様飲食店はその義務を免除されています。
ここで社会保険の加入義務を整理してみましょう。
1.社会保険の適用になるには、「強制適用事業所」と「任意適用事業所」の2種類がある。
飲食店は、任意適用事業所である。
強制適用事業所の場合、従業員5名以上で強制加入義務
2.任意事業所の適用には、従業員の半数以上の同意を得て、社会保険事務所に届出の必要があります。
飲食店が社会保険の適用を受けるには、社会保険事務所に出向き、飲食店舗である事業所としての適用を受ける必要があります。さらに、被保険者の資格取得、保険料の算定・納付を行う必要があります。
事業主であるご主人がこれまで個人事業主としてご本人も国民健康保険、国民年金の加入であったものを社会保険に変更しなければ、従業員やアルバイトも社会保険の加入は出来ません。
なぜ社会保険をアルバイトは望むのか
国民健康保険や国民年金は個人で掛金を全額負担するのに比べ、社会保険は「事業所と従業員で掛金を折半」しますから働く側の負担が軽くなります。
また、就業期間中に病気になった場合治療費の補てんが受けられます。もしケガで働けなくなっても一定期間賃金の一部が補てんされます。一時金という名目で傷病手当などもあります。
また、社会保険を完備している飲食店(事業所)では、労災保険は勿論のこと雇用保険にも入っているだろうとの期待があるはずです。
正社員に限らずアルバイト一人でも雇用することで加入義務の生じる労災保険より、失業手当と呼ばれる給付金がもらえる雇用保険への加入は物凄く魅力に映るのです。
働く側からの理論で言えば、一定期間務めた後に自己都合で退職したとしても失業手当がもらえます。その給付期間中は働かなくてもお金が入ってくる時間です。
言い換えれば、趣味でも勉強でも自分のライフスタイルにあわせて過ごせる時間が出来るということです。実はこれが最大の魅力なのです。
労使折半の保険料はどれぐらい
一方でアルバイトが社会保険に加入できるかどうかの基準があります。1日また1週間の労働時間が正社員の4分の3以上と定められています。
正社員が1日8時間で月に20日間の出勤だとすると、160時間です。この75%以上ですから概ね120時間の労働となります。時給が1,100円だとすると月収132,000円です。東京都での保険料をみると
健康保険料 6,592円 + 厚生年金保険料 12,261円 = 計18,853円
※介護保険第2号被保険者にに該当しない場合(40歳未満を想定)
毎月この金額が飲食店側の負担となります。
~まとめ~
日本の労働人口6,000万の内非正規と呼ばれる方が2,000万人を超えてきています。
今後まだまだ正規社員との差は縮まってくるものと思われます。そうなった時でも非正規社員と呼ばれているかは疑問です。多分社会保障も含めてどちらを選ぶのか選択制となるのではないかと思われます。
そうなると現在の社会保障が事業所単位での届出となっているものが、就業者単位での届出に変わる可能性があります。
もしかすると、アルバイトやパートと呼ばれている言葉も死語になる日もそう遠くはないかもしれません。