飲食店とアパレル店ってどこか似ている感じがします。最近流行のファストファッションなどはファミリーレストランのようですし、デパートの様にいくつものブランドが入って居るお店は飲食店でいうフードコートのようです。
かたやお寿司屋さんやそば屋さんなどメニューを絞った業態はブティックなど専門店というわけです。
今回は、アパレル各社が繰り広げるターゲット戦略を参考にしながら飲食店のターゲット戦略を考えて見たいと思います。
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なぜターゲット戦略が必用なのか
かつて都内には大型スーパーとよばれたGMS(ゼネラルマーチャンダイズストア)が数多くありました。食材だけでなく利益率の高い(当時は)子供からご高齢の方まですべての年代に向けた衣料品を数多く取り揃えていました。
なぜなら、商品を数多く並べておけば確実に売れる時代だったからです。2000年に入る頃から各年代ごとに競争相手となる専門店が台頭し始めます。赤ちゃん本舗、西松屋などがそれですが、とりわけユニクロの出現で価格、品ぞろえともにGMSは太刀打ちできなくなりマーケットから退場したのです。
これは、80年代からのファミリーレストランの栄枯盛衰とかさなるものがあります。当時決して安くはなかったファミレス。ただ子供も大人も老人も一堂に思い思いの料理が食べられる場所はそこしかなかった為にロイヤルホスト、すかいらーく、デニーズと言ったファミレスは全国に広がっていきました。
アパレルと同じように総合店のファミレスに対し専門店である牛丼や天丼、マクドナルドといったファーストフードが低価格を売りに攻勢をかけた結果、ガストの様な低価格ファミリーレストランへと様変わりしながら低成長の時代を迎えていったのです。
GMSとファミレスに共通することが2つあります。
- 全世代対応型営業
- 競争相手が現れるまで価格競争にさらされていなかった
この点を狙って後発の業態(キャッチアッパー各社)は攻撃を仕掛けてきています。
例えばアパレルが年齢層や男女の性別に特化したブティックを展開した様に飲食店産業も数多くのメニューよりも、ポップコーンだけとかパンケーキだけとかタコスだけとか主力商品に特化した戦術で顧客を獲得していったのです。
飲食店総合ブランドを崩したターゲット戦略を考える
先にも触れましたが、後発のキャッチアッパーたちはやみくもに価格競争を仕掛け、得意の分野で一点勝負をかけた結果勝てたのではありません。その戦略のなかにはいくつもの仕掛けが隠されており、それらの総合的勝利と言える内容です。
1.飲食店は売れ筋商品に特化する
売れ筋商品に特化するということは具体的にどういうことでしょうか。
例えば、小さな居酒屋でもメニューの品数は40種類ほどと言われています。月の売上に貢献しているメニューを調べると2割程度の8品目で売上の9割近くを稼ぎ出していると言われています。
これは何を意味するかというと売れ筋以外のメニューを作る時間やいつオーダーが入るかわからないメニューの為に買いそろえてある食材が無駄になり売り上げの脚を引っ張ることを意味しています。
つまり売れ筋商品だけで勝負しても十分やっていけるということです。それが証拠に海外から持ち込まれる人気ブランドは主力の商品1本というところも珍しくありません。
その代りとことん味を追求することで差別化と高付加価値を生み出すのです。
2.飲食店はターゲットの嗜好変化がキャッチできる
ファストファッションと呼ばれるアパレル店では2週間程度のサイクルで商品を入れ替えて行きます。ですので前回来店したのが2週間以上前だとすると全く違う商品が陳列されていることになります。
お目当ての商品を買いそびれてしまうことがあると分かれば来店したお客様の購買決断は早まります。
飲食店も同じです。客層や商品を絞り込んでいればお客様の嗜好の変化が手に取るようにわかってきます。
流行の食材、甘い、辛いの味付けのトレンドを「期間限定」と銘打って商品を打ち出すチェーン店が多いのはある種客寄せの宣伝効果を狙ってのことです。今行かないと食べられないと思わせるところが同じです。
夏になると冷やし中華始めました。冬になると鍋始めましたというノボリを目にしますが、実は同じ効果を狙ってのことなのです。
もし、来店されれば別の商品もオーダーいただけますからお店にとっては売上アップの起爆剤となります。
また、定番のグランドメニューでも絶え間ない改良が施されていてこそいつの時代もお客様に飽きられないものとなるのです。
3.飲食店はメニューをしぼり仕入れを増やすことで原価が抑えられる
メニューの数をターゲットに合わせて絞ることで無駄がなくなるとお話ししました。それ以上に経営的なメリットが、原価コストの低減です。
仕入れ先の変更や仕入れ量に対するホールディスカウントによりそれまでの原価を下げることが出来ます。多くのメニューを抱えている場合売れ筋商品の材料だけのディスカウントでは効果に限界があります。
単品や少ないメニューで勝負をする飲食店、例えばローストビーフ丼や牛丼などの業態は利益率に直結します。
飲食店のターゲット層に来てもらえる店造り
一般的に飲食店は1階路面店で人通りの多い場所が繁盛の秘訣と言われます。ではこれまで3階以上は飲食店に向かないと言われてきました。
ところが、カフェ業態が3階以上のフロアで集客に成功していたり、昨今店舗数を伸ばしてきた居酒屋や食事処があえて2階や地下1階に的を絞って開店しているのはいったいどういうことなのでしょうか。
通りがかりの人に来店頂けるのはある種の確率論です。ナショナルチェーンがその昔出店時に通行量調査を行ったのはそのせいです。その理屈では2階や3階以上の繁盛店の説明がつきません。
その種明かしはこうです。
居酒屋、食事処と言えども差別化が進み、そこを訪れるお客様はたまたま通りかかったというよりも目的をもって来店されるため階数などはあまり気にしなくていいということなのです。これは、ターゲットを絞ることで固定客がつきやすいということを意味しています。
さらに駅前の1等地と呼ばれる場所の1階に比べ2階や地下階は家賃は半分近く安くなることもあります。となれば原価率を下げてリーズナブルな値付けをしても利益が残っていきます。
黄色い看板の焼き鳥店居酒屋は、自分たちが独自に入手した1階店舗情報を流す代わりに2階の店舗情報を集めているともっぱらの噂です。
~まとめ~
- 一つのメニューに磨きをかけて高付加価値で売る飲食店
- 一つの素材に多くのバリエーションをつけ低価格で販売する飲食店
- とことん価格にこだわって競争相手に競り勝つ飲食店
- 3ヶ月毎にメニューを改定して短いサイクルで来店促進を仕掛ける飲食店
- 季節限定の商品を呼び水にして飽きさせない飲食店
どれも思い当たる店名が浮かぶのではないでしょうか。
ナショナルチェーンの多くはこれらのどこかに属し、TVなどの宣伝を上手く利用しながら売り上げを維持しています。
このようにターゲットを設定する取り組みは、毎日の来店者の情報や売れ筋商品の情報を蓄積することで分析が出来ます。
これから飲食店を始めようという方も同様の情報取集をすればよいのです。
まずターゲットに対し商品と価格を設定します。これは一種の仮説のようなものです。あとはその仮説が正しいのか、分析のなかから別の仮説に乗り換えるべきなのか常に観察をしていなければなりません。
結果ターゲットとうまくマッチング出来るメニューが見つかれば繁盛店は間違いないのです。