屋台で有名な博多・中洲、川沿いだけでなく、ビジネス街の大通りにも軒を連ねています。昼間は何もなかった歩道に夜ともなると屋台が並ぶ光景は非日常感すら感じます。
以前は銀座でも夜23:00を回る頃からラーメンの屋台が出始め〆のラーメンを求めるビジネスマンが馴染みの店めがけて通ったものです。
また、赤坂では、屋台をわざわざ一度ばらしてから再度店内で組み立て、室内で屋台の雰囲気が味わえるお店がありました。
江戸時代から庶民の胃袋を満たし手早く食べられる便利さを兼ね備えた屋台、飲食店のルーツといえる存在です。
今回は歴史の中で洗練されてきた現代の屋台で行われている営業努力を飲食店経営の参考にとりあげてみました。
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屋台の集客はどうしてる?
屋台が集積している博多中洲などは、観光地化しておりお客様もそこを目指して来店してくれます。これにひきかえ、今まで屋台など出ていなかった場所で営業を始めたとするとどうでしょうか?
人通りが絶えない場所でもオープン当初はなかなかお客様にお入り頂けないと屋台のご主人皆さん口をそろえます。
ポイント:最初の1~2ヶ月は客が入らないのが当たり前
飲食店をオープンする際にはここまで直接的な表現はあまり聞きません。しかし、運転資金を3ヶ月程は最低でも準備することを一般的には推奨されています。
これは、屋台と同様に最初の何か月は客が入らなくてもやって行けるだけの運転資金(現金)の備えをしておけということになります。
屋台ではどのようにリピーター客をつくりだすのか
リピーター客つまり常連客です。屋台と言えば一見さんではなく常連さんというイメージがあると思います。同様に飲食店もリピーター客を増やすことでお店の収入が安定します。
さて、屋台と言えばお客様とご主人の距離は1~2m程、スペースも1~2畳程です。この空間でどのようにリピーター作りをするのでしょうか。
ご主人にお話を伺うと、料理が美味いだけではリピート客は付かないと言います。やはりお客様との会話がものをいうようです。
また、お客様の顔を覚えていたり、趣味の話や前回の内容などを覚えているだけでリピーター率は全然違うと言います。
ポイント:お客様とのちょっとした会話、料理やお酒を進めるタイミングはやはり飲食店繁盛の王道
アルバイトがいなければすべて自分の役割(中には2人のところもあります)となります。もし会話が苦手でも売上アップの為には避けて通れません。
高級寿司店はカウンターの寿司職人の前が一番と言います。同様に高級BARもバーテンダーの前が特等席です。お客さんは、美味しい料理を楽しむだけでなく、料理をする姿や会話も含めてファンとなりリピーターとなって行くのです。
食材の仕入れ、仕込みにひと工夫
屋台はスペースが限られるだけに持ち込める食材や仕込みの品はどうしても限られてきます。また、飲食店との一番の違いである屋外という環境下では、天気や気温など季節に大きく左右されます。
天気予報で翌日の天気をチェックし雨だと仕入れ量を減らしたり、冷え込む夜だと味付けを濃くし温かいお酒に合うメニューを考えたり、逆に夏はさっぱり味や酸味の効いた口当たりのいい味付けにしたりだとか前日のチェックが欠かせません。
ヒント:季節や天気によってお客様が欲しくなるものは変化する
これは一年中エアコンの効いた室内にいるとついつい忘れてしまう感覚です。メインの料理はそのままに、今月のおススメ料理や今日のおススメ料理などはそういった環境の変化で変わるお客さんの好みに対応した一品を提供することでリピーターは増えるのです。
常連ばかりでお客様の回転が悪い?
屋台のお客様は先にも書きましたが常連さんが大半といいます。ということは、狭いスペースで共通の知り合いであるご主人を囲んでいれば自ずと常連さん同士知り合いになります。そうなれば、いつ行っても誰かしら知り合いがいるので安心して一人で飲みに行けます。
逆にこのことが屋台の経営を圧迫する要素となるのです。常連同士で話が弾めば自ずと滞在時間は伸びて行きます。それとは逆に追加注文のペースは落ちてゆきます。
理想を言えば、時間制で入れ替わってくれれば繁盛するのですが実際にはそうもいきません。当然屋台側としては客単価を上げる工夫が生じてきます。
滅多に手に入らないお酒をグラスで少々高く売るやり方や、地方特産の食材を使った一品などそこでしか口に入らないものを不定期にでも用意すれば一石二鳥の効果です。
ヒント:限られたスペースで収益を上げるいいお手本
- 高収益のメニューを企画する
- お客様に薦める宣伝をやる
- その反応を直に知ることが出来る
飲食店でご主人が厨房に入ってしまうとなかなか経験できないことが屋台にはあります。是非カウンターに座られたお客様だけでも一連の作業を試して見られてはいかがでしょうか。カウンター内から発せられるご主人の営業トークは意外とほかの席まで届くものです。
入りたいと思わせる意外な宣伝効果
宣伝と言ってもA型看板や軒につるした暖簾だけではありません。屋台は屋外というハンデを宣伝ツールに替えています。それは「匂い」です。
一年を通して肉の焼ける匂いは食欲をそそります。冬場だとおでんや鍋を焚く香りです。ちょうど焼鳥屋か鰻屋のようなものです。さらには和のテイストだけでなくチーズが焦げる匂いやソースの焦げる香りもたまりません。
別の宣伝効果に、「音」で道行く人の注目を引く屋台もあります。
本格カクテルを提供する屋台のバーテンダーはシェイカーをリズミカルに振ることで一瞬にして道行く人を振り返らせます。五感に直接訴えかける宣伝は、文字で伝える効果の何十倍も威力があります。
ポイント:五感に訴えかける宣伝をくりだす
洋食系の飲食店を始められる方で、料理のレベルをお店の内装や外装でアピールする方がいらっしゃいます。
青山や銀座といった客単価が高いお店が集まる街でなら大いにやるべきですが、周辺の飲食店と比べ客単価が高そうに見えてしまうと逆効果となり敬遠されかねません。(いくら店側がリーズナブルなお店ですと宣伝してもです)
客単価を周辺の飲食店とあわせつつ料理で差別化を考えているのなら逆に通りから店内がまる見えになるぐらいのオープンさの方が今の時代客受けします。
お客様の入り具合や年齢層で誰がターゲットのお店かお客様自身で判断がつきます。そこから流れてくる料理の香りやBGMは一度行ってみようかという気持ちを起こさせる絶好の武器となります。
~まとめ~
お寿司屋さんのルーツも屋台だそうです。戦前は屋台でお寿司が定番だったそうです。ところが衛生法の改正でナマモノの屋台営業が禁止になった関係で、苦肉の策として車庫に屋台を入れて営業を続けるお店があったそうです。そんな過渡期を経て今の形になったと聞きます。お寿司屋さんで見かけるフラットなカウンターは屋台の名残だったのです。
さて、常連ばかりで排他的な屋台にしない工夫というのを聞きました。いたって単純で、常連には座らせない新規に来店される方用の席を必ず確保することだと言っていました。
ネットや電話で席を予約するということをほぼしない屋台ですが、最近は少しずつ受け入れ努力をしているそうです。忘年会シーズンや歓送迎会のシーズンで満席が続く飲食店が気をつけるべきポイントかもしれません。