オフィスビルが立ち並ぶビジネス街。華やかなイメージがありますが、ことランチに関しては相当苦労する街です。
最近は、フレックスでランチのピーク時間をさける会社も多いのですが、焼け石に水です。ランチというのは毎日のことなので、お昼の度に空いている飲食店を探すのは結構苦痛です。
現在、都内では八重洲、渋谷に象徴される大型再開発が進んでいます。それにより出現する大型ビルがさらに事情を深刻化させランチ難民を生み出しています。現在ランチ難民のビジネス街で起きている飲食店舗の取り組みを検証しながらテイクアウト=持ち帰りについて考えてみたいと思います。
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なぜ増えるランチ難民?大型化するオフィスビルに原因が
六本木ヒルズ、ミッドタウン、新丸ビルなど今や高さ100メートルを超えるビルは東京だけでも年間20棟以上のペースで増え続け300棟を超えるまでになりました。
そもそも高層ビルが出来るまでは、再開発前の土地に暮らしていた人の数や勤めていた人の数にあわせて街は(飲食店は)形成されてきたわけです。そこへ突然50階もの建物と数千人単位のオフィスワーカーが押し寄せるのですからたまったものではありません。
その弊害は、高層ビルで働くオフィスワーカーとて同じことです。選択肢の少ないランチはすぐに行列が出来るほど込み合い、コンビニのレジも20分以上待たされるありさまです。雨が降ろうものならお昼を抜いて我慢しようかとさえ思えるぐらいどこも混雑します。
最近の大型ビルは、そのあたりを見込んで地下に 飲食店街を作り、コンビニを入れ対応はするのですが、お昼の短時間に集中するために絶対数が足りなくなります。また、賃料が高いためかランチの価格も周辺に比べ割高なことが常です。
それに比べ西新宿の高層ビル群に古くからあるビルやさいたま新都心、幕張の大型ビルはビル内に大型の職域食堂を作りランチ難民の対応するところもあります。ただ残念ながら周辺に飲食店のないごく一部のビルにすぎません。結果、来る日も来る日もオフィス街の憂うつなランチタイムは続くのです。
ランチ難民を救う新規ビジネスが登場
そんなビジネス街にも新しいタイプのお弁当屋さんが登場しています。お弁当と言えばコンビニが一般的ですが、味もボリュームも今一つ。いつも同じものしか置いていないというのが定番です。
そこに、登場したのが「屋台デリ」なるお店です。ここは、お弁当を販売するお店5~6店舗を一堂に集め、ワゴン販売を始めたのです。いわばスペースを貸すだけの商売です。ところが、価格がコンビニ弁当並みに安いことと、毎日日替わりでメニューが変わること、なにより和、洋、中などの選択肢があるということでオフィス街の救世主となり一気にその店舗数を拡大していったのでした。
大規模な開発となると公開空地などのスペースがあるものです。そこにランチ時だけフードトラックを招き入れお弁当を売ることでランチ難民の緩和を試すビルオーナーも最近増えてきました。
これまでビル側で何も用意しなくても、トラックで乗り入れてきて温かいお弁当を販売していたのが、ビル側から声をかけて招き入れるようになったのです。フードトラック・キッチンカーと言えば以前はホットドッグやカレー、ハンバーガー、ケバブといったものが主流でしたが、最近はタコライス、ローストビーフ丼、つけ麺などバラエティーに富んだお店が増えてきたのも人気が出た理由のひとつだと思います。
普通にランチメニューを出す飲食店舗でも、限られた時間でお客様の回転数を上げるには限りがあるために、店先でオリジナルの弁当販売をするところが昨今増えています。
私が知っている飲食店は10坪もないお店で、店頭販売のお弁当が1日に50食は出るといいます。これに対し1時間に店内で食べるお客様の数が30人程度と言いますから、お弁当がお店の売上に相当寄与していることが分かります。
コロナ禍の今テイクアウトを真剣に考える
コロナ禍の現在、お店で見ず知らずの人たちに混ざって食事をすることに抵抗のある人が増えています。また、限られたお昼休みに並んでまでランチを食べるのは時間の無駄と考える人も同様です。その様な理由から飲食店舗の店先でお弁当を買い、オフィスのデスクで食べるというサラリーマンは相当な割合で増えています。
飲食店側としてもランチの売上が倍増する可能性があるだけにこれをやらない手はありません。原価3割と言われるお弁当では制約も多いのですが、毎日のメニュー作りで如何にファンを掴めるかが勝負のカギです。
飲食店のテイクアウトのタイミング
お弁当は昼に売るものとは限りません。朝の出勤時にコンビニでお弁当を買い求めるひとも少なくありません。
駅近くにお店を構えるカフェなどは、朝のコーヒーをテイクアウトして行くお客様をターゲットに、クロワッサンとフルーツサラダのランチボックスを販売したところ人気となり、女性客のリピーターがついたそうです。ランチタイムには洋風でボリュームのお弁当を出しておりこちらは男性に人気となっています。朝と昼にテイクアウトの内容を変えたことで繁盛しています。
テイクアウトにむいている飲食店舗の条件とは
とはいえ、オフィス街の飲食店舗ならすべからくテイクアウトがうまくゆくかというとそうではありません。第一に「人通りがある」ということがポイントになります。一本入っている飲食店舗や地下階、2階以上のフロアのお店はやはり厳しいといえます。そこで、同じ建物内のエントランスや駐車場等で売らせてもらえるよう交渉してみるのも手です。その場合、少々の場所代は覚悟しましょう。
テイクアウト販売数の見積り方
さて、お弁当の販売個数はどのように判断すればよいのでしょうか? 都内で一番お弁当が売れるテイクアウトの聖地=後楽園球場で話を伺ったことがあります。その担当の方曰く、「売り切れは失敗」なのだそうです。もちろん大量の売れ残りは論外ですが、ベストな売れ残り個数とは販売個数の3%未満だそうです。
50個の販売に対して2個程度売れ残る見極めが儲かりの秘密だそうです。もっとも球場の販売個数は1,000個以上と聞きますから売れ残る数は結構なものです。また、毎回同じ数を用意するのではなくて、天候にあわせて数を変えるとも仰ってました。季節、天候での売上予想が出来るノウハウはさすがです。
飲食店テイクアウトの今後を考える
テイクアウトの原型は駅弁と言えるのではないでしょうか。一世を風靡した釜飯弁当などその代表格です。今でも東京駅で駅弁の専門店を見ますといつも人で一杯です。
以前JR東日本が試験的に日本の駅弁をパリのリヨン駅で販売を始めたいう記事を目にしました。既に海外ではお弁当の容器を「BENTO」のブランドで販売が始まっています。
今後の飲食店が取り組むべきテイクアウトは、このマイ弁当、マイ箸をかつようして使い捨て容器から脱却する方法が考えられます。SDG’sのいま環境に配慮する飲食店が選ばれる時代がすぐそこまで来ています。大手の企業が集まるビジネス街でこの取り組みを始めればきっとTVに取り上げられることでしょう。
余談ですが、「 テイクアウト 」というのは和製英語だとご存じでしたか。正確には「テイクアウェイ」といいます。
アイデア次第でまだまだ テイクアウト の可能性は広がりそうです。