長年お付き合いのある不動産会社の方から電話が入りました。
内容は、飲食店舗についての相談です。簡単に内容を整理しますと、1階で飲食店を営む大家さんがご自身の住居も併設するオフィスビルで、飲食店舗を閉めようと考えているが相談に乗って欲しいというものです。
電話をくれた不動産会社の方は、オフィスについてのことはよくわかるものの、飲食店舗についてはまったく見当がつかないとばかりとりあえず電話をしてきたようです。
建物の所在や概略を伺ったところで、なにが分からないのかその不動産会社の方にたずねてみました。その答えが、まず賃料相場、次に募集の方法、賃貸に出した際飲食店舗を扱う同業者、最後に看板や工事などの取り決めなどすべて経験が無いのでなにも分からないとの話です。
今回は、初めてオフィス区画以外を賃貸に出される大家さん兼飲食店オーナーのお問合せでしたが、そもそも自営業でやってこられて、年齢とともに引退を考える飲食店オーナーも今後増えてくると思われます。そんな大家さん予備軍の皆さんに今回は不動産の契約管理をしてくれる管理会社・不動産会社の選び方についてお話しをしたいと思います。
Contents
数多くのトラブルを知る管理会社を選ぶことが重要
初めから飲食店舗の賃貸や管理に詳しい管理会社や不動産会社はありません。どちらも住宅やマンション、オフィス管理の延長線上で賃貸借契約を捉えていてのスタートです。
ところが、飲食店物件では今まで聞いたことも無いクレームや相談が舞い込みます。場合によっては訴訟に発展する事態もあります。
こうなると管理会社・不動産会社は店舗物件はもうこりごりといって扱わなくなる会社もあれば、場所柄根気よく飲食店物件と付き合ってゆく管理会社・不動産会社とに分かれて行きます。
さて、トラブルを知る管理会社・不動産会社が安心なのはどのような利用からなのでしょうか。
・トラブルを未然に防ぐ
・トラブルの解決方法が分かっている
以下、順番に見てゆきましょう。
トラブルを未然に防ぐ
大きくは、建物にまつわるハード面のトラブルと使用に関するソフト面の二つに分類できます。
ハード面で重要なのが賃貸物件としての適性を分かっているかが重要なポイントです。例えば、
- ガス容量や水道管の径が細いにも拘わらず重飲食を入居させようとしていないか
- 内装工事の際に図面チェックが出来ているか
- 建物の耐震構造を理解しているか
- 隣地ともめるポイントをおさえているか
図面のチェックが出来ないと建物に取り返しがつかないダメージを与えることがあります。それは、建物の耐震にも影響を及ぼすことがあります。例えば、天井の懐(空間)が足りないので梁を削ってしまったり、排水管のルートが取れないばかりに、スラブ(床)を抜いて直下階の天井裏につないだりと耐震や水漏れの危険性を生みます。経験が無ければこれらをチェックすることはまず不可能です。
残念な話ですが、コストを出来るだけ抑えたい有名チェーン店程こういったことをやるケースがあります。
次にソフト面です。
- 隣地ともめるポイントをおさえているか
これから飲食店舗で貸し出そうとしている物件の隣地がマンションだったり、お隣との境界がくっついていたりする場合があります。そのような状態で臭いや煙の出る業態を誘致してしまったが為にいさかいが起きてしまうことはよくある話です。それではと、ダクト工事をするようテナントに求めたところ、そのダクトが敷地境界線をまたいでしまいここでもトラブルになることがあります。
お金をかければ臭いや煙は電気的に処理することは出来ても、一度許可を出した営業時間は死活問題ですからおいそれとは変更できません。
最悪は、立退き補償をして出て頂くことになります。そうなれば何のために賃貸に出したのか分からなくなります。
これらを前もってコントロールできる管理会社・不動産会社がトラブルを未然に防ぐ安心して管理を任せられる不動産会社なのです。
飲食店専門の管理会社はテナント探しも得意
トラブルを多く知る管理会社とは飲食店を専門に扱う不動産会社であることがほとんどです。彼らはただ管理するだけではありません。空室になってしまった店舗の後継テナントを見つけることも得意なのです。その理由はこうです。
飲食店舗をあまり取り扱わない不動産会社や管理会社は、物件の妥当な賃料価格を知りません。従って従前に貸していた金額以外で貸すことはありません。このことが大きなミスマッチを引き起こします。
10年以上賃料の見直しをしていない為に周辺相場より相当安く貸していたり、逆にバブル期のままの設定で借手が現れないといったことが起こります。扱った物件が多ければ今どの価格がマーケットで求められているか、賃料が上昇傾向にあるのかどうかや街の力が下降気味で値段交渉が入った際は極力受けようかなどの判断が出来ます。そうなれば大家さんに不利益をもたらすこともありません。
飲食店舗に強い管理会社・不動産会社は賃貸借契約書を見ればわかる
大家さんとテナントが結ぶ賃貸借契約書など不動産協会が出している雛形を利用していてどこも同じだとお考えの方も多いと思います。トラブルを知る経験豊富な管理会社は、その一つ一つを避ける為に予め契約書に
- 禁止事項(やってはいけないこと)
- 事前に許可を得る事項(テナントが勝手にできない事項)
- 業種や営業時間の制限
などこれまで契約書に書かれていなかった為に起こったトラブルを未然に防ぐ条文を必ず入れています。それ以上に大切なのが、起きてしまったトラブルはどの様に処理するのか、その際の費用負担、問題解決を行うべきは誰なのかを想定して予め決めてあることです。
つまり、契約書とはトラブㇽの歴史でもあるのです。
~まとめ~
これから管理会社・不動産会社をお選びになる飲食店オーナー兼大家さんと大家さん予備軍の皆さま、管理会社を選ぶ際に次の質問をしてみてください。
- 飲食店でのトラブルで多いのは何ですか?
- そしていつもどのように解決しておいでですか
経験豊富なところはすぐに事例をあげることでしょう。そうでないところは「ウチは長年営業していますから大丈夫ですからお任せください」としか言えないでしょう。ちなみに身近なところで起きるトラブルのトップは排水管の詰りかゴミの出し方でしょうか。近隣とのルール作りも管理会社の重要なお仕事です。是非参考になさってください。