秋の食材を前に予約帳と原価メモを確認する小規模飲食店の店主

9月は、飲食店にとって売上を立て直す機会の多い月です。

秋の味覚、敬老の日、連休など来店のきっかけを作りやすい一方、残暑や台風、豪雨によって客足が大きく変わる月でもあります。

さらに2026年は、食材費、光熱費、人件費の上昇が続いています。帝国データバンクによると、2026年上半期の飲食店倒産は473件となり、上半期として過去最多を更新しました。

このような環境では、売上だけを追いかけても利益が残るとは限りません。

9月後半に必要なのは、大がかりなイベントや安売りではなく、来店理由を明確にし、今ある食材、人員、客席を効率よく使うことです。今から取り組める5つの対策を考えてみます。

1.営業日を「通常日・連休・天候注意日」に分ける

最初に行いたいのは、月間売上目標を立てることではありません。残りの営業日を、通常の平日と週末、連休や記念日など需要を見込める日、台風や豪雨、厳しい残暑の影響を受けそうな日の3つに分けることです。

2026年9月は、通常の土日に加え21日の敬老の日、22日の休日、23日の秋分の日が続きます。

ただし、「5連休だからお客様が増える」と決めつけるのは危険です。オフィス街では人が減り、住宅地では家族客が増えるなど、立地によって結果は反対になります。

前年の同じ曜日や直近の連休の客数を確認し、ランチ、夕方、夜のどこに人員と仕込みを寄せるかを決めましょう。

2.秋の新メニューは、一品だけを強く見せる

秋になると、サンマ、キノコ、サツマイモ、栗など、季節を感じさせる食材が増えます。

しかし、季節メニューを何品も追加すると、仕入れ品目や仕込み時間が増え、売れ残ったときの廃棄も増えてしまいます。小さな飲食店では、秋の看板商品を一品決める方が現実的です。

例えば、普段使用している食材にキノコを加えた限定メニュー、通常の料理に秋の小鉢を付けたセット、既存のデザートに季節のソースを加えた商品などです。

重要なのは、まったく新しい料理を作ることではありません。既存の食材と調理工程を利用しながら、お客様に「今しか食べられない」と感じてもらうことです。数量限定にすれば廃棄を抑えられ、売り切れも商品の人気を伝える材料になります。

3.値引きではなく、注文する理由を増やす

客数が少ないと、すぐに割引やクーポンを考えがちです。

しかし、1,000円の商品を100円値引きすると、売上は10%下がります。原価が変わらなければ、利益への影響はさらに大きくなります。

そこで考えたいのが、値段を下げずに注文する理由を増やす方法です。

  • 秋の限定小鉢を付ける
  • 予約客だけに一品を用意する
  • 対象料理とドリンクをセットで提案する
  • 来店の少ない時間帯にだけ特典を付ける
  • 次回来店時に利用できるサービスを渡す

特典は、原価が低く、お客様が価値を感じやすいものを選びます。一律の値引きではなく、「この時間に来る理由」「この料理を注文する理由」を作ることが目的です。

4.雨が降ってからではなく、予報を見て発信する

9月は天候によって予約や当日の来店数が変わります。

雨が降り始めてからSNSに投稿しても、お客様はすでに外出を取りやめているかもしれません。翌日の予報を確認し、前日の夕方から来店理由を伝える方が効果的です。

例えば、雨の日限定の温かい料理、テイクアウト対応、早い時間の予約特典などを、店頭、Googleビジネスプロフィール、SNS、LINEのうち、普段お客様が見ている媒体で告知します。

すべての媒体を毎日更新する必要はありません。既存客にはLINE、近隣客にはGoogle、料理の写真を重視する店はInstagramというように、来てほしい相手に合わせて一つか二つに絞ります。

雨の日の施策は、関連記事「【雨の日の空席を利益に変える】小さな飲食店の『値引きすぎない』集客策5選」で詳しく紹介しています。

5.追加売上ではなく、追加利益で判断する

9月の企画が成功したかどうかを、売上だけで判断してはいけません。

確認するのは、企画によって増えた売上から、追加の食材費、人件費、広告費、廃棄を差し引いた金額です。

例えば、限定メニューで5万円の売上が増えても、仕入れと人件費、売れ残りで4万円増えていれば、残るのは1万円です。反対に、既存食材を使ったセット提案で売上増加が3万円でも、追加費用が少なければ、こちらの方が利益を残せます。

売上、販売数、食材原価に加えて、仕込み時間と廃棄量を簡単に記録しておけば、10月以降にも使える施策が分かります。

数字の見直し方については、「売上が増えても利益は残らない|飲食店が見直すべき3つの数字」も参考になります。

~まとめ~ 9月は新しいことを増やすより、今ある強みを使う

9月の売上対策で大切なのは、季節イベントを理由に、メニューや作業を増やしすぎないことです。

  • 営業日を通常日・連休・天気注意日に分けて考える
  • 秋の新メニューを1品だけ強く見せる
  • 値引き以外の来店理由を考える
  • 天気予報を見て前日から告知する
  • 売上ではなく追加利益を記録する

小さな飲食店が大手と同じ規模の販促を行う必要はありません。

普段から来てくれるお客様と、自店の立地や営業時間をよく知っていることが、個人店の強みです。9月は、その強みを季節の変化と結びつけ、無理なく利益を増やす一か月にしましょう。

参考:帝国データバンク「飲食店」の倒産動向(2026年上半期)

(構成・執筆:著者 / 画像生成・ファクトチェック:AI活用)