契約面積10坪、スケルトンからカウンターのみのダイニングバーを造りました。厨房の床はドライ、天井は張らない、客席の床はコンクリートの地肌を活かす仕様で何とか500万円前半で収まりました。
これでも無駄を出来るだけ省いて少しでも安く仕上がるよう検討を重ねた上での数字です。これが、従来の発想で床、壁、天井を仕上げ、銘木を使用したカウンターテーブルを導入していたとすれば2倍近くの費用がかかります。
今回は、内装工事に費用をかけることなく飲食店で開業する為にはどうしたらいいのかを考えながら、物件選びのチェックポイントも交えて考えて見たいと思います。
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飲食店開業では居抜き店舗物件を活用する
最近すっかり市民権を得た居抜き店舗。専門の不動産業者も何社かあり数多くの物件がWeb上に掲載されています。この居抜き店舗の最大のメリットはすぐに飲食店を出店、開業ができる状態の賃貸物件であると言いうところ。
だからと言ってどの物件も内装費用がかからないかと言えばそうではありません。業態が変われば当然改装費用は掛かります。例えば、居酒屋をバルに変更するだとか、蕎麦屋をエスニック料理にするだとかとなれば内装のテイストや厨房で必用となる機器に違いがあることが原因だからです。
居抜き物件でお金をかけずに出店、開業したいのであれば極力同じ業種の物件を選ぶことがコツです。もっともそれまでの営業年数により壁紙の張替え、厨房機器の入替など手を加えるべき箇所があるかもしれませんが、スケルトンから造るよりはコストはかなり低く抑えられます。
営業中の居抜き店舗物件は欠陥が見えづらいので要注意
不思議なことに、営業をやめてしまった飲食店舗は粗(アラ)が目立ちます。逆に営業中の飲食店舗は粗が見えづらいものです。なぜなのか考えた時に全体のバランスがあげられます。
壁に貼られたメニューやカウンター、雑然とした厨房などそれまで営まれてきたお店の息遣いのようなものが感じられるからではないでしょうか。
それに比べ、壁に貼られたメニューやポスターは剥され、厨房の調理器具やお皿などが撤去された店舗内は急にみすぼらしく見えてしまいます。
このギャップが購入を決めた時に想像もしていなかった内装工事へと気持ちを変えて行くと言います。
最低限の予算で改装を考えると壁などは塗装を行うことが一番ですが、お店のイメージ次第ではクロスを貼ることも覚悟しなければなりません。
同様に床も同じことが言えます。テーブルや椅子が置いてある状態では破損や汚れに目がいかないのですが、それら全てを一旦どけて見ると清掃で間に合うのか、張替までしなければならないのかハッキリします。これも購入前に実際に椅子やテーブルを動かして確認するとよいでしょう。
飲食店の居抜き店舗物件には有償と無償の二種類がある
居抜き店舗物件を実際に見に行った際、不動産会社の不手際で電気が来ていなかった。でも見たところ綺麗そうだし、つい最近まで営業していたというので問題ないだろうと判断し契約まで済ませた。
しかし、契約がスタートして実際に通電してみたところエアコンが動かないことに気づいたというようなことがたまに起こります。不動産会社にクレームを入れたところ、動作を補償するものではないのでご自身で直してくださいと言われた。(居抜きあるある)
居抜き店舗物件が怖い、問題あると言われる所以はこの辺にあります。しかしながら、不動産の鉄則である「自分の目で確認しなかった」ことは悔やまれます。
居抜き店舗と言っても有償で内装や設備を買取るケースと無償で手に入れるケースの2つがあります。有償で買う場合は、作動するしないの別が初めに元の所有者から表明されているため仮に作動しないとなれば何らか(金銭的な)の解決策があります。しかし後者の場合は無償なだけに自己負担というのは致し方ないところです。
一般的に言って、安く居抜き店舗を手に入れて少々お金をかけて修繕や改装をしようという考えでいると逆にお金がかかるケースが多く見受けられます。スケルトンから飲食店舗造るコストを考えれば、有償で動作が確認できる設備や厨房機器、什器備品を引き継ぐ方が結果的に改装費にお金がかからないということのようです。
居抜き店舗物件を購入する際のチェックポイント
①空 調
先ずスイッチを入れてみましょう。作動するか、その次に急速運転に切り替え室内機が十分な風量を出せるかどうかのチェックです。夏場に温度を十分に下げて急速冷房をした際5分程度で十分な温度と風量が在られない場合はいくつかの問題点があると考えて下さい。
- フィルターの目詰まり
- 熱交換フィンの汚れ
- 冷媒ガスの漏れ
まがいなりにも動くようであれば専門業者に機内の洗浄を頼めば復活する可能性は十分あります。もし動かないとしてもメーカーの専門修理をお願いすればよほどのことが無い限り動きます。経験では、基盤が古くなっていることが多くその交換で5万円程です。焦って新品に変える工事はマズ必用ありません。
②厨 房
居抜き店舗の厨房にある厨房機器はご自身のお店を始める上で必要な機材が揃っているでしょうか。逆に使わない器機があったりしないでしょうか。限られたスペースですから有効に使いたいものです。
お鮨屋さんだった店舗物件を居抜きで手に入れ、洋風居酒屋に業態変更となるとコンロの位置やシンクの位置が重要になってきます。そうなると給水管、排水管、ガス管の盛替え工事が発生します。
この費用を極力抑えたいのであれば同業種の居抜きを探すべきです。上手くいけば契約翌日から開店が出来たというケースもあります。根気よく物件探しを続けていれば必ず出てきます。
居抜き店舗でも最低限かかる内装工事費とは
ズバリ、「看板」です。
すべてを居抜きのまま活用できたとしても、店名まで引き継がれる方は稀ではないでしょうか。当然看板の掛け替えに費用がかかります。入口上部の巻き看板、通りに突き出た袖看板などがそれです。昔と違いペンキで文字を書くと言ったものはほぼ見受けられません。
内照式で夜も目立つアクリル看板の制作やライトで照らすタイプの物でもやはり制作費用に看板の架け替え工事費用がかかってしまいます。概ね50万円を見込んでおけば大抵のタイプはカバーできます。後は製作会社と素材や夜の照明方法次第です。よく検討してみて下さい。
~まとめ~
居抜き店舗で内装工事費にお金をかけずに出店する為には、よく相談の出来る工務店を知り合いに持つことも重要なポイントです。なぜなら、その工務店がどのようなグレードでどのような店を開きたいのか十分理解してくれているからです。
また予算がいくらかという金銭的なことまで共有できていれば、意中の居抜き物件が実際どの程度改装費用がかかるかすぐに見積をしてくれることでしょう。大きな味方です。
仮に予算オーバーになりそうでも、別の施行方法や素材を用いてコストを下げるVE=バリューエンジニアリングの提案をしてくれることでしょう。
ネットでの検索や友人からの紹介も含めて何人もの方に会って話をしてみましょう。一番は実績よりもその人とフィーリングが合うかどうかです。いくら実績が豊富でも意見が言いづらい方と組むのはあまりお勧めしません。
個人的には、いくつもの提案を出してくれる工務店が一番いい仕事をしてくれると思っています。