そのトラブルは、オープン当日に発生しました。それまでお店の中にある蛇口を全て開けることはなかったのですが、お店のオープンに伴い厨房はフル回転を始めます。当然洗い物も料理もシンクもフル稼働、全ての蛇口が開けられたその時でした。水が流れなくなったのです。
慌てて蛇口の水を絞ると徐々に水は引いてゆきます。それだけなら問題はなかったのですが、コールドテーブルのドレンパイプを排水管に繋いでいた為に逆流した水で庫内は水浸しとなり、大切な食材が一部使えなくなってしまったのです。
さて、問題はどこにあるのでしょうか。居抜き物件だと知って借りたのはテナントです。ところが問題をおこした排水管は大家さんの資産区分です。このような場合、トラブルを解決もしくは未然に防ぐのはどちらに責任があったと思いますか。
今回は身近に起きる排水管の詰りについて使用者責任なのか所有者責任で解決すべきか具体例を引きながら考えてみたいと思います。
Contents
具体例で考える飲食店の排水管トラブル
排水管が詰まったからと言って、必ずどちらかに責任があるとは言えません。ましてや居抜きで店舗を引き継いだ場合などは余計です。
テナントと大家さんでもめる前に参考事例で解決の方向性を探ってみてください。
飲食店全般に該当する引き渡し時の注意
冒頭で説明をした排水管のトラブルは、2つの問題が合わさってトラブルとなっています。
①排水管の目詰まりです。
よくありがちな、全く詰まってしまう詰りではなく、配管の一部が油脂と食べ物カスの混ざった堆積物で流れが悪くなっていることが理由です。人間で言えば、血管の動脈硬化のような症状です。
②最終的に排水が統合される排水管の径が小さい。
その為、オーバーフローを起こしてしまいます。この場合解決策はどの様に考えればいいのでしょうか。
居抜きで飲食店を引き継ぐ場合、内装、設備、什器備品がそろっているので低予算でお店がスタートできると人気です。その反面本来改善されなければならなかった問題まで引き継ぐことになるのです。
解決策①:排水管の高圧洗浄が1回3万円前後であると考えると、お店のオーナーは最初に洗浄を済ませておきましょう。もしくは、お店を引き継ぐ条件として、前の飲食店オーナーに高圧洗浄を済ませてから引き渡してもらうという条件もいいでしょう。
解決策②:排水管の径の問題は、大家さんに改善をお願いするのが筋ですが、多分大半の大家さんは、排水管が無いならそれは大家として工事の責任はあるけれど、キャパシティーを上げるということならテナントで工事をお願いしますと言われしまうことでしょう。
排水管洗浄を行う際の注意
飲食店を居抜きで次のテナントに引き渡す際、大家さんが気をきかせて高圧洗浄を自費で行ったそうです。しばらく(半年程)は何事もなくお店は順調に営業していたのですが、ある日突然店先が陥没してしまったのです。
にわかに原因が特定できないので「一旦大家さんが費用を立て替える形で復旧工事を行いました。」
後日調査の結果、高圧洗浄を行ったことで、排水管と排水枡のつなぎ目に裂け目が生じ、ついには外れてしまい陥没に繋がったという結果でした。トラブルを未然に防ぐはずの高圧洗浄が裏目に出てしまった例です。もちろん費用はすべて大家さん持ちとなりました。
飲食店の排水管の洗浄は高圧洗浄だけではありません。
①カンツール:昔ながらの手回しで管内部を分銅のような物で汚れを掻き落とす方法
②バキューム方式:高圧洗浄の逆でバキュームにより堆積物を吸い出す方式があります。
これらは、木造建築や老朽化が見受けられる店舗の場合、建物への負担が少なく一度検討すべき対処法です。
夏場や長期間閉店していた飲食店の注意
飲食店を長期閉店する場合、もしくは長期閉店していた後の問題点をみてみましょう。
夏場に1ヶ月近くお店を閉める場合や居抜きで引き渡しを受ける際の注意点です。直前まで調理をしていた厨房の水は油脂分を含み排水管内に留まっています。この水が夏場の暑さで干上がってしまうことがあるのです。
当然水分に含まれていた油脂は蒸発しませんから排水管内に残ります。更に暑さで固着した油脂分が後日営業を再開した際に詰りの原因となるのです。
大量の水を流してしまうと、剥がれ落ちた油脂が1カ所で引っかかってしまうケースが殆どです。ゆっくりと熱湯を流しながら様子を見ましょう。頃合いを見計らって水を流してそれ以上の処置が必用かどうか判断してください。
解決策:これから長期に店を閉める場合であれば、1週間に1度程度定期的にすべてのシンクで水を流しましょう。徐々に油脂分を含んだ水を外に吐き出す効果がありますし、そもそも管内の水が干上がることもありません。これはお店を閉めているオーナーさんにも居抜きで次のテナントを探す大家さん両方にいえる注意点です。
~まとめ~
排水管の詰りはトイレでも起こります。お客様の不注意で起こることが大半です。その原因となるベスト3が、
- ペン
- メガネ
- 生理用ナプキン
ペンやメガネは胸ポケットからスルッと落ちることが多く、あっという間に流れていきます。実はその時に詰まるというよりも次や次の次にトイレを利用した際に悲劇が起きることの方が多いのです。
それは、流れずにトラップに引っかかったペンやメガネに汚物やペーパーが絡まり詰りを引き起こすのです。
同様にナプキンなどの吸水性のあるものは水洗の圧が弱い場合に詰りを引き起こします。流れずにトラップ内に留まっていることがその理由となります。
もし今お使いの便座が古く、なんでも流れてしまうタイプであったり、水圧の弱いタンク式の場合などは少々お金をかけてでもリニューアルしたいものです。意外とトイレはお客様から見られているものです。