テナントが事務所として借りるオフィスビルでのお話です。ビルの大小にかかわらず入居テナントの名前が分かるインフォメーションを見れば大家さんの入ってもらいたいテナントの好みや審査の厳しさが概ねわかります。逆に、聞いたことのない名前の会社ばかりだったり、会社名から何の商売をしている会社か分からないテナントばかりだとやはりなにをしているか分からない会社が入居してくるものです。
昔から類は友を呼ぶと言いますが、名前の通った会社が入居しているビルは審査が厳しい印象を与えますから問題を起こすような会社近寄って来ません。また逆も真なりなのです。だからこそ、不景気になりオフィスの空室が増えるとつい審査があまくなりがちなのですが、大家さんの鉄則としては、値下げをして入って頂くなら「有名な会社にしなさい」なのです。
この法則は飲食店の誘致にも当てはまります。今回は、建物が醸し出す雰囲気が入居してくるテナントとどのような相関関係があるのか考えてみたいと思います。
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建 物 外 観
もしも高級マンションやオフィスビルに店舗区画があったとして入居を検討するテナント側はなにを考えるでしょうか。
そもそも賃料が高いことが予想される分客単価の高い高級店での検討となるでしょう。仮にその区画が非常にお値打ちな賃料だったとします。それでもテナントは、看板の制約や出店業種の制約が厳しいのではないかと考えるハズです。
もしその区画を借りたいと思えば、大家さんの言うとおりにしないと貸してもらえないと考えるものです。
逆に外壁の汚れ、清掃や管理の行き届いていないマンションやオフィスビルの店舗区画だとどうでしょう。
その建物を検討するテナントは、管理もあまりきびしいことを言わなそうだし、いろいろと交渉すればテナントに有利な判断をしてくれそうだと考えるものです。
結果、派手な看板や色遣いが目立つものとなりますます建物の外観を壊してゆきます。それ以上に、内装や外装の工事の際目に見えないところでテナントに有利な欠陥工事がなされていることも少なくはありません。
つまり、見た目のゆるみが施工や判断のゆるみへとつらなってゆくのです。
建 物 共 用 部
清掃が隅々まで行き届いている共用部を汚すようなことがあればすぐに管理会社からお叱りを受けることでしょう。当然テナントは気を使い汚れや臭いが出ないよう注意するものです。
これが逆の場合はどうでしょう。そもそも汚れているのだからと使い方が雑になります。少々汚してしまってもそのままにしてしまうかもしれません。この気のゆるみが、ちょっとだけならいいだろうと共用部に物を置く癖がついてしまったり、共用のゴミ置き場も整理整頓されず、綺麗に保たれない状態になってしまいます。
結果、負のスパイラルとなり日に日にひどくなることが目に見えています。
前テナントのイメージ
このところ駅前の一等地と呼ばれる場所にも異変が生じています。長年入居していた居酒屋が撤退したり、ハンバーガーショップが閉店しています。これまでそのお店を利用してきた人でなくとも次にどのようなお店がオープンするのか気になるところです。
意外と前テナントに似た業種が入るものです。大衆居酒屋の後は違うブランドの同業店だったり、ファストフードの後は中身は違えどもファストフード店となることがほとんどです。
これにはカラクリがあります。人通りと賃料、そして店舗の面積によるところが大きとと言えます。つまりそのバランスで採算がとれるのがやはり同様の業種だということなのです。
もう一つ理由をあげるならば、このところ定着してきた居抜きという手法です。本来解約をする際は、原状回復工事をしてすべてを壊すものですが、居抜きとは原状回復工事をせずに次のテナントに内装や設備を引き継ぐ手法をいいます。
改装工事にお金をかけない結果前テナントと同じ業態になるというものです。
入居テナントに対する審査が管理会社任せになるとこういったことが起きがちです。一度ついてしまったイメージはなかなか払拭するのは難しいものです。
入れ替りの激しい建物
前テナントのイメージがなかなか払拭できないという話をしましたが、短期間に何度もテナントが入れ替わる建物には注意が必用です。
なぜなら変な噂が流れ始めるからです。この負の連鎖を断ち切る方法は一つしかありません。賃料の値下げです。テナントが頻繁に入れ替わる原因はその賃料の高さにあります。物件の面積に当てはまる業種では売上から賄いきれない賃料の高さにあると考えられます。
その場所で飲食店の利益が出せるよう10%~20%の値下げをするか、5年契約のような長期契約で最初の1、2年は賃料を安く設定し3年目4年目でもとの賃料に戻す段階賃料の導入も効果的です。つまり固定客がつき経営が安定するまで賃料を抑えるという考え方です。
~まとめ~
今回見てきたように、大家さんの手がかけられていない店舗物件はテナントの好きなように使われる傾向にあります。どこかでその流れを断ち切らないと悪い部分が次のテナントにも引き継がれてゆきます。
ご自身の不動産を良いイメージのまま運営して行きたいと思うのであれば、大家さんご自身で常に目を光らせるか、そのことをよく理解して大家さんの代わりに目を光らせてくれる管理会社を見つけるかのどちらかになります。
今からでお遅くありません。イメージアップに力をいれましょう。