日本政府観光客の発表によると、令和5年(2023年)7月の訪日外客数は、令和元年(2019年)同月比77.6%の2,320,600人となり、200万人を突破した前同年6月から約12%増と大幅な増加となっています。なお、日本行きの海外旅行制限措置が続いていた中国を除く総数では2019年同月比103.4%と、すでに新型コロナウイルス感染症拡大前の実績を上回っているとのことです。
ようやく観光客は戻ってきました。オーバーツーリズムの懸念もあるなか外国人観光客をどの様にもてなすのか、今回はメニューの多言語表記について考えてみたいと思います。
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飲食店 多言語メニューで外国人観光客をつかまえろ
2019年に日本を訪れた外国人観光客は、3,188万人と2015年の1,973万人に比べ1.6倍もの増加となっています。観光庁が来日した外国人に行った意識調査で興味深い回答が。
「訪日前に期待していたこと」という問いでは、なんと76.2%もの観光客が「日本食を食べること」と答えているのです。
日本食への要望が高いのならば、飲食店は多言語メニューを用意して、外国人観光客をつかまえる絶好のチャンスです。
外国人観光客が困ったこととは
東京都産業労働局観光部が行った外国人観光客へのアンケートでは、言葉の対応、サービスに関し60%もの人が「困ったことがあった」と回答しています。さて、どのような場面だったのでしょうか。
- お店の外観だけではどのような種類の飲食店か分からなかった(店頭に外国語表記によるメニューや料理写真、サンプルが無かったため)
- メニューの内容が分からなった(外国語表記による解説がないため)
- 使用食材や調味料の種類が分からなかった(外国語表記がないため)
確かに、私たちが海外に観光に行って思うことと同じ悩みを抱えていることが分かります。日本には世界中ののメジャーな料理を扱う飲食店が多いことに加え、鮨以外の和食でメジャーな料理(すき焼き、天ぷらぐらいでしょうか)が少なく、内容が伝わりにくいことは想像に難くありません。では、どのように解決すればいいのでしょうか。
多言語メニュー作成にあたっての留意点
簡単な料理概要を記載しておく
我々が海外で経験することと同じで、写真がメニューに貼ってあるだけでは甘さや辛さ、温かいのか冷たいのか、原料に何を使っているのかよくわかりません。いきおい廻りのテーブルをながめて、同じ料理をオーダーすることになります。
使用食材を表示(ピクトグラム等の使用)
海外からは色々な信念、宗教、アレルギーを持った方が来日されます。これらは、飲食店側で外見から判断のつくものではありませんので申告をして頂く必要があります。それを可能にするのがピクトグラムです。
食べ方、調味料の足し方なども表示
国によって甘い、辛いの程度がかなり変わります。アジアの国から来た人たちで、初めて和食を食べた時の感想は美味しいよりも「味がしない」という感想を持つ方が多いそうです。ともかくタバスコのような辛味や味付けも濃くないとダメなようです。その際どの調味料を使えばよいのか表示しておくといいでしょう。こちらも成分のピクトグラムが張ってあれば完ぺきです。
また、「ひつまぶし」のように一つの料理で違った食べ方が出来る料理などは、アレンジの仕方を写真で表示してあげれば親切です。
多言語化はメニューだけではダメ
いくら店内で多言語化を進めても、その存在を観光客に分かってもらわなければ折角の苦労が報われません。ここは、外に向かって発信をすべきなのです。
店頭に多言語メニューや写真を掲出
民泊のお陰で、繁華街以外に住宅街でも観光客を見かけることが多くなったのですが、そんな彼らが食べるところを探す中でまずは目に触れる工夫が必要です。
店内で使用する多言語+写真付きメニューを店頭に設置したり東京都の観光公式サイトで開示している店頭掲示用のマークなども併用することで観光客へのアピールになります。
飲食店のホームぺージ
多言語による飲食店のホームページも重要な広告媒体です。メニューなどではスペースに限りがある為なかなか全てを伝えられませんが、WEB上であれば、文化や歴史なども豊富な写真と共に伝えることができます。少々難易度は高いのですが、QRコードを店先に大きく出しておけば、観光客の方で勝手に調べてくれます。挑戦してみてください。
観光客が調べる媒体に載る
海外からの観光客は、日本で何を参考にしているのでしょうか。よく参考にされているのが「トリップアドバイザー」の口コミだと聞きます。また、グーグルマップで飲食店を探す観光客も多いようです。グーグルマップなどは、グーグルビジネスから申し込めば無料で位置を登録できます。そこに多言語対応の表記があれば来店の可能性はグンと高くなるでしょう。
言葉の問題でトラブルが心配
最近有名お笑い芸人が宣伝している携帯型翻訳機が話題です。確かにあれば便利そうですが、そこまでお金をかけたくないと言うのも本音でしょう。そこで東京都は「無料」で利用できる多言語コールセンターの利用を呼び掛けています。残念ながら対象は都内の飲食店や宿泊施設に限られるのですが、24時間以下のサービスが受けられます。
1サービス内容
- 電話通訳サービス オペレーターによる通訳
- e-mailなど海外からの旅行者から届いた問合せを翻訳してくれる
2対象言語
英語・中国語・韓国語
詳しくは、以下のURLにアクセスしてください。
http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/tourism/d6da2c2e011196c379551dcb166d618f_1.pdf
2019年の訪日観光客3,188万人のなかで、実に5割が中国(959万人)と韓国(558万人)からの旅行者でした。この数字に台湾(489万人)と香港(229万人)を足すと2,200万人を越え、訪日観光客の実に7割を占めることになります。
欧米では、英国の424万人を筆頭に、フランス336万人、ドイツ236万人、米国172万人となっています。これらの数字を見ると、どの国にターゲットを絞ればよいのか考える良いキッカケになるのではないでしょうか。
最後に、これも東京都にある飲食店限定のサービスとなりますが、東京都が多言語メニューを簡単に作れる支援サイトを開設しています。もし、今回の記事で気になった方は以下のURLを訪ねてみてはいかがでしょうか
http://www.menu-tokyo.jp/menu/