飲食店 改正後の「最低賃金」を守れているか(平成28年10月1日発行)

飲食店 改正後の「最低賃金」を守れているか(平成28年10月1日発行)

平成16年から毎年金額の改正が行われている最低賃金。東京都に限ってお話をすれば、ここ10年で時給額が739円から932円まで上昇しました。26%・193円のアップです。平成28年10月1日に発行となった最低賃金932円は、27年の907円から2.7%・1時間当たり25円のアップとなっています。この数字をどのように見るのかは労使双方で意見の分かれるところです。この最低賃金の上昇額は全国平均の上昇額と一致しています。そこである試算をしてみたいと思います。全国で一番非正社員の多い企業と言えばイオングループです。その数実に22万4,000人にのぼります。この人たちが一日平均4時間の勤務で月に15日間働いたとすると年間で増える最低賃金の額はおよそ40億円を超えます。平成28年2月イオングループが発表した決算では、純利益60億円ですから最低賃金の増額によって約7割近い利益が吹き飛ぶ計算になります。相当なインパクトです。

今回は、知らず知らずのうちに最低賃金を下回っていないかチェックの意味でご覧いただければ幸いです。

最低賃金引き上げの影響

前回の値上げ後に総務省の行った調査では各業種別に最低賃金が遵守されているかどうかの調査が行われています。対象となる非正社員の数が一番多かった業種が「卸、小売業」であったのに対し、業界で最低賃金が守れていなかった事業所の割合が一番高かったのが「飲食サービス・宿泊業」となっており全体の1割を超える事業所で最低賃金以下の賃金しか支払われていなかったという事実が浮き彫りになりました。

一方で厚生労働省が平成27年に調査している賃金構造統計では面白いことが分かります。東京都におけるアルバイトなど非正社員の賃金分布を示したその資料では、最低賃金よりも少し高目の賃金が一番多いのかと思いきや、平成22年頃から時給1,000円を少し超える金額の事業所が一番多いという結果になっています。どこも人材不足で働き手をなんとか集めたいとの思惑が見て取れます。

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最低賃金のワナ

さて、最低賃金で陥りやすい間違いが各種の手当だと言います。例えば皆勤手当てや家族手当などを加えた金額でかろうじて最低賃金を上回るというのでは、実際の時間当たりの賃金は最低賃金を割り込む可能性があります。なかでも通勤費支給の触れ込みで、実際の金額ではなく一律いくらとしている場合など、実費を差し引くと最低賃金を下回る危険があります。

また、意外と表に出にくいのが正社員の賃金だと言われています。

例えば、ある大手居酒屋チェーンが新卒採用に出した2016年の事例で見てみましょう。

・固定給19万円(基本給16万円+みなし深夜勤務手当3万円)

・年間休日 107日

・所定労働時間 1日8時間 週40時間

というものでした。手当であるみなし深夜勤務手当を除いて計算してみます。

16万円÷((365日-107日)÷12)×8時間=930.23円<932円

もし東京にある事業所に配属された場合、最低賃金を満たさないことになります。実は、この大手居酒屋チェーンのアルバイト募集金額は時給1,000円以上で出されているようです。意外にも正社員の方が最低賃金をもらえていない実態が露見しています。さらに飲食店チェーンを調べると似た様なケースはもっと出てくると思います。

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最低賃金 海外との比較

日本の最低賃金は海外との比較でいうと高いのでしょうか安いのでしょうか。

最低賃金でアルバイトを都内でやった場合、1日8時間、週40時間フルタイムで働いたとすると190万円程の収入となります。2016年当時でヨーロッパが時給1,000円前後の国が多いなかフランスは1,080円と一番高い最低賃金となっていました。先程と同様の計算をしてみると年間225万円となります。アメリカも同様に1,000円前後に定める州が多い中今後1,500円前後まで引き上げる計画が進んでいると言います。

日本においても今年以降例年通り3%近い最低賃金の値上げを繰り返してゆくと東京オリンピックの頃には最低賃金は1,000円の大台に達する見込みです。

急速に欧米並に進む最低賃金の底上げは何を意味するのでしょうか。働き方の変化が大きく関わっています。以前パートやアルバイトといった非正社員というのは、一般家庭で言えば収入の補助的なものであったり、学生で言えばお小遣い稼ぎといった意味合いが強く恒久的なものではありませんでした。ところが非正社員の数が今や2000万人にも増え、日本の労働者の4割に達することを考えると彼らが世帯主として家族を養う為の収入を確保しなければならないのです。必然的に最低賃金のベースアップは急務とされたのです。ただ、冒頭のイオンの例を見るまでもなく、企業にとっては相当な負担となる為慎重な意見が経団連をはじめ出されています。政府としても今後最低賃金を上げて行く過程で、減税と組み合わせたり社会保険料の負担を軽くするなど欧米で行われている手法を積極的に取り入れる必要があるでしょう。それがやがて消費に回りGDPがアップするのであれば大歓迎です。

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