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吉野家に見る 飲食店舗  繁盛 の法則

Photo credit: misooden via VisualHunt.com / CC BY-ND

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吉野家に見る 飲食店舗  繁盛 の法則

1980年に115億円の負債を抱えて牛丼チェーン 吉野家は倒産しました。その衝撃度は、当時テレビで流れていたCM「うまい、早い、安い」の効果もあり、そうとう大きなものでした。

その後、セゾングループがスポンサーとなり復活を遂げるのですが、当時裁判所から選任された管財人をして「こんなもの金を払ってまで食べたくない」と言わしめる程疲弊していたようです。

それから30年、BES問題で大打撃を受け再び倒産の憂き目をみる吉野家でしたが、その窮地を救ったのが牛ならぬ豚だったのでした。2004年に登場した豚丼でしたが、2011年12月には代役の役目を終え主役の座を本家牛丼に譲りメニューから姿を消したのでした。ところが、2016年4月に再登場します。

その理由をマーケティング目線で探ってみたいと思います。きっと 繁盛 の法則がそこにはあると思います。

値下げの原点

2000年以降、日本マクドナルドはハンバーガーを1個65円で売り、同じ牛丼を売る松屋は牛丼1杯290円で販売し、どちらも話題となりました。

同じ価格帯のお客様を奪われていただけに吉野家も150円引きセールを期間限定で敢行することを決意します。結果は予想に反して来店者数が3倍という大成功につながったのでした。このことで吉野家は3つの取り組みに取り掛かります。

1.原価率削減

2.商品の絞り込み

3.調理作業の見直し

今や都市伝説と化した吉野家牛丼原価売り説。その中身と言えば、牛丼は原価で売る代わりにサイドメニューで利益を出していると言われていました。例えば、1個10円の卵が50円で売られています。実に5倍です。原価が更に安い味噌汁やおしんこも同様です。

実際には牛丼の原価は170円~180円程度のようです。とは言え牛丼1杯380円の現在、原価率は47%まで来ています。決して楽とは言えませんが、商品の絞り込みや、原価率を下げることで値下げをする。その結果客数が増え、売上が増えます。そうなれば販売量が増えますので仕入れ量を増やす際に仕入れコストを下げさせる交渉が可能となります。この一連の流れは牛丼でなくとも飲食業界で参考になります。

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発想の転換

2013年の冬、「牛すき鍋膳」630円でヒットを飛ばしたのは記憶に新しいと思います。

このヒットに続けと言わんばかりに高価格帯の商品を投入したすき家は、注文から提供するまでの手順に問題があったことに加え、従業員数が慢性不足ということも合わさり、アルバイトの大量退社に繋がったのです。

結果、200店舗近い店舗の一時閉店にまで追い込まれ社会問題にまで発展しました。

一方の吉野家は、この牛すき鍋膳で前年比100%アップという売り上げを達成して見せたのでした。2014年にはニューヨークから高級ステーキのウルフギャングが六本木にオープンするなど、プレミアムと呼ばれるチョットした贅沢感が漂う商品に人気が集まった時流にうまく乗ったと言えます。

値上げと誤算

この牛すき鍋膳、売り上げ増に反して、客数が10%以上落ち込んでしまったのです。そこにもってきて原価の上昇を吸収しきれなくなり、牛丼の値上げという苦渋の決断を余儀なくされるのでした。

更に、これまで続けてきた24時間営業を見直したこともあり、一層の客離れを生むことになるのです。だからと言って元の安売り路線に戻るのかと言えば、今の吉野家はここからが違います。

以前、BSE問題で牛丼が販売できなかった時代に吉野家の屋台骨を支えた豚丼を復活させたのです。価格は330円、味も量も当時のままとのことです。

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ラインナップと商品展開

豚丼の登場により、これまでの吉野家にはなかった商品構成になります。高価格帯の牛すき鍋膳、豚丼の登場により中価格帯となった牛丼、低価格帯の豚丼。

来店するお客様の一番の注文は間違いなく豚丼です。ここに大事な戦略が見て取れます。それは、俗に言う「松竹梅の理論」です。松・竹・梅の三種類があった場合に一番売れる商品が中間の竹であることは皆さんよくご存じと思います。それでいえば豚丼に引っ張られる形で値上げによって沈んだ牛丼の売上がアップするはずです。

更に、吉野家のしたたかな戦略は続きます。

人気商品の横展開です。いかに売れる商品でも毎日となれば飽きられてしまいます。売れ筋商品はバリエーションをつけて出すことでお客様のリピート率は上がり来店のインタバルが短くなります。

今度の豚丼はキムチ、ネギ玉、半熟玉子、チーズとトッピングを増やし横展開を行っています。プレーンの豚丼を併せると5種類、一週間毎日食べても飽きさせないつもりです。

この横展開、ただの横展開だけではありません。トッピングだけで100円も値段差があります。トッピングで飽きさせないばかりか、ここでもシッカリ稼ぐ姿が垣間見えます。

次なる手は

1980年に倒産するまでの8年間に、たった5店舗しかなかった店舗数を266店舗にまで増やしています。実に53倍です。

日本のナショナルチェーン業界でも伝説の数字です。そのイケイケぶりが破たんを招いたのですが、生まれ変わった吉野家は実に緻密に合理化と商品展開をしています。

規模は違いすぎるのですが、飲食店舗経営に対する発想は大きくても小さくても基本は変わりません。大いに参考になる経営戦略です。

こうして吉野家の戦略を分析するにつけ、今後の業績の行方に目を凝らし、次なる展開も参考にさせて頂きたいと思います。

繁盛店は知っている お客様から目を離すな

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