個人、法人を問わず飲食店をテナントとして入居させることを嫌がる大家は一定数いらっしゃいます。
その理由を伺ってみると臭い、煙、汚れなど負のイメージをあげる方が多いのですが、同じ建物に住んでいらっしゃる大家さんは圧倒的に火災を警戒するコメントが多く聞かれます。
その流れでいうとオフィスビルなどはガスを一切引き込んでいないものも多く火災に対する大家さんの気持ちの強さを物語っています。
これとは別に、全く入居テナントには無頓着大家さんもおられます。テナントは管理会社が薦めるままに決めてきたような大家さんです。
今回はこの両大家さんの違いが最終的にどのような違いを生むのか検証します。タイトルにもありますがこの事実を知らないと賃料収入の低下を招くばかりか不動産そのものの価値を下げることとなります。
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都内1階店舗-時代と共に変わる評価
さて、昭和から平成にかけて1階の店舗区画というだけで高い賃料が取れた時代がありました。
金融、証券、保険など場所の確保の為なら少々高い賃料はいたしかたないとう時代です。バブルがはじけて以降は、これまで高値で入居していたテナントが一斉に解約し、丸の内、大手町でも見られた1階だけが決まらない時代へと入って行きました。
その後世にあふれ出した1階店舗物件の救世主となったのがコンビニエンスストアーとドラッグストアーだったのです。その流れは、調剤薬局に引き継がれ今では件数でコンビニを上回るまでに増えています。
さて、飲食店の動向はどうだったのでしょうか。
東京都を例にとってみると、2009年には8万9,000件ほどあった飲食店はこの10年で8万4,000件余りとその数を減らし続けています。この最大の理由は、先に上げた物販、調剤系の店舗が「坪当たりの高売上」を背景に高い家賃で1階物件を借上げていったことが原因と考えられます。
飲食店テナントの繁盛、衰退が不動産の価値を左右する
街で見かける飲食店の繁盛店、一度は入ってみたいと思いながら通り過ぎた経験はありませんか。逆にあそこの1階はどんな飲食店が入ってもすぐに潰れてしまう場所だと密かに思っている場所もあることでしょう。
ではこのような1階に入居する飲食店が入居している不動産価値にどのような影響をあたえているのでしょうか。
〇繁盛店が引き起こすトラブル3選
先日オープンしたケバブのお店、店頭には終日お客様の列が出来ています。同じように1階に入居するラーメン店、テレビで話題となり店前から通りの反対迄長蛇の列です。その人気ぶりが一時であればよいのですが、1ヶ月、1年と続くと同じ建物のテナントからクレームが必ず出てきます。
- 階段の上り口を列に並んでいる客が塞いで上層階まで客が上がってこなくなった。(営業妨害)
- 列に並ぶ客がタバコを吸い、その吸殻で店先が汚れた(清掃不行き届き)
- 列に並ぶお客の大声や話声で近隣からクレームになった(騒音)
これらは実際に起こった話です。対策を怠ると上層階のテナントや住人は退去してしまい次に入居される方が現地を確認しに来られても敬遠される事態となります。
〇不人気店が引き起こすトラブル
最初は、物珍しさもあってお客様がつめかける飲食店も徐々に客足は落ちてゆきます。その後リピーター客が思うようにつかなかった場合店側はあらゆる手を考え出します。
- ノボリをたてる
- おススメ料理のポップを貼る
- 軒先や入口廻りの清掃に手が行き届かなくなる
- 壁面の看板を増やす要求がでる
など建物の顔の部分が徐々に1階の飲食に侵食されてゆきます。そうなると建物自体の印象がわるくなり、オフィスビルなどそれまでの賃料を維持できなくなる恐れがあります。
見た目が雑居ビル化することで、賃料に見合うイメージが保てず必然的に下がったイメージに見合う賃料まで下落しまうということなのです。
入居している飲食テナントの管理運営が不動産の価値を左右する
ここでいう管理運営とは何をさすのでしょうか。
- 業種の制限
- 営業時間
- 排気ダクトの指定(吹き出し方法等)
- ゴミの廃棄ルール(集積所・時間帯・ゴミ収集業者の利用)
- 看板の掲載位置と範囲
- 電飾看板の規制
- 看板デザインチェック
- オーニングなどの庇の規制
- 飲食店側の受け持つ共用部の清掃範囲
ざっと決めておかなければならないポイントを列挙してみました。最初に決めておけばテナント側はルールを破ることはないでしょうし、仮に目に余る内容が出て来ても約定通りでお願いしますと是正勧告をすることが出来ます。
この取り決めがなされてないと面倒なこととなります。行動を起こしたテナントに対し是正をお願いしつつも徐々に店側に譲歩する(既成事実化する)最悪の管理結果を生みます。
特にダクトや看板はオープン時にチェックしないと後でやり直すことはかなり困難です。業種や営業時間は不動産のイメージを決定付ける可能性がありますので、十分吟味するべきです。
昨今流行のオープンテラス、アコーデオンガラスで前面がフルオープンになることから導入をするお店が増えています。大抵はオーニングなどの庇を設けています。この時、庇を出して、敷地外に椅子やテーブルを出す営業をするお店も散見されます。
横浜野毛地区の様に自治体ぐるみで規制をするところもあれば、警察の指導が入ることもあります。お店側もそうですが、大家さんも是正させる義務を負いますので、レイアウト次第では最初に釘をさしておく必要があります。
~まとめ~
おわかりのように意識の高い大家さんとその反対に無頓着な大家さん。両者には時間とともに大きな隔たりが生まれてきます。
新築や築年数の浅い建物であれば管理サイドから遵守事項を提示し、それに沿った形でテナントに入居頂くことでその不動産の価値は守られます。
これとは逆に、竣工から時間が経ち古さが隠せなくなったビルであまりキビシイ内容を提示するとお客様にご入居頂けないことがあります。最低限の約束(業種・ダクト・営業時間)を取り決めたあとは自由にやって頂いた方がビル再生につながることもあります。
結局のところテナント対策とは、事後に生じたトラブルをいかに解決するかを考えるものではなく、飲食店にご入居頂く時点が一番重要なポイントだということなのです。くれぐれもお忘れなく。