飲食店の人手不足解消!史上最高の時間給で生き残る策
今年も10月に最低賃金の引き上げが行われました。
東京都で時給958円と昨年から2.7%のアップです。このまま毎年3%弱の伸びが続くとオリンピックを前に最低賃金が1,000円の大台に乗るのは間違いないものと思われます。
そのようなおり、産経新聞の記事が目を引きました。
「時給が史上最高額に 関西の外食産業アルバイト、人手不足深刻、経営者がホール係の店も」という記事。
要約すると、時給が高騰するなか人材の確保はままならず、大手イタリアンレストランでは、役員がレジに立つ程の困惑ぶりだと報じています。
また、今後は人材の省力化という課題にも力を注がなければならないと記事は締めくくっています。
急速に進む人材不足を募集の観点ではなくちょっと違った目線で今回は考えて見たいと思います。
アルバイトが集まりにくい理由
アルバイト先を選ぶ優先順位をたずねたアンケート結果
- 一番が「自宅から近いこと」
- 二番目に「自分でもできそうだと思える仕事かどうか」
- 三番目に「時給の額」
必ずしも高い時給に人が流れるということではないようです。
現在のようにアルバイトを仲介するサイトが盛んでなかった頃、店先に貼られた募集ビラかアルバイト求人誌を頼りに面接を受けたわけですが、働く側からするとお店の雰囲気やお店のご主人の人柄だけが判断基準で、あとは働いてみないと正直何もわからないという時代でした。
ところが昨今SNSやアルバイト先を評価したり職場環境を投稿するサイトなどが数多く立ち上がるなかで次のような点が指摘されています。
- アルバイトに対する初期指導はちゃんと行われているか
- サービス残業や急なシフト変更などはないか
- 職場の雰囲気はよいか
これらの内容が毎日のようにネットで公開されバイト先を検討する人たちの間で読まれているのです。中小は別としてもちょっと名の通った飲食店だとこの書き込みが原因でアルバイトが集まらないことがあると言います。
アルバイトに対する発想の変換を
また別の調査では、
この3年以内に何かしらのアルバイトを辞めた人の中で、約50%もの人がアルバイト開始から6ヶ月以内に退職しているという数字が出ています。
さてこの数字をどのように考えますか。
アルバイト・パートを「続ける理由」「辞める理由」【2016年版】 | アルバイト採用・育成に役立つ人材市場レポート「an report」
本来アルバイトは短期労働力として雇う側が繁忙期や時間帯で労働力を調整し、雇用コストを下げる為に雇い入れてた人達です。
だからこそ辞めればまた募集をして雇えばいい、また辞めればまた募集すればいいという考え方が脈々を受け継がれています。
ところが現在の人材不足のなか苦労して雇い入れたアルバイトの二人に一人が半年ももたずに辞めてしまうことを考えると別の発想を持たなければ一層事態は深刻化してしまいます。
これからの発想は、いかに辞めない職場環境をつくるかにかかっていると言っても過言ではありません。
しかし小さな飲食店ではチェーン店のようなマニュアルも無いでしょうし、仕事内容を教える別のアルバイトがいるというものでもないと思います。
自ずとご主人が教育係とならざるを得ません。
厨房に入ってしまうとなかなか目が届かないこともあります。そこは、アルバイトに何をして欲しいのか明確に伝える必要があります。
例えば、空いたお皿を片付けるついでに飲み物や別の料理の注文を取ることやお薦め料理の説明など最低限覚えて欲しいことは紙に書いたものを用意することが理想です。
もし面倒なようならせめてご主人がお客様役でアルバイトと簡単なロールプレイングを何回か実施するなどの工夫が必用です。
何よりも重要なのは普段からのコミュニケーションです。
もしなかなか時間が取れないようであれば、連絡帳などを用意して、気が付いたことやお客様に文句を言われたこと、ご主人の指示でよく理解できなかったことなどアルバイトが書いた内容に、毎回コメントを添えてあげれば話す時間が取れなくてもその時間を補うことは出来ます。
この取り組みは、労使で共にフラストレーションを貯めない為の取り組みです。
なぜコミュニケーションが大事なのかと言うと、アルバイトが職場でやりがいを感じる時は何時かをアンケートした結果、一番は褒められた時、二番目は仕事を任せられた時、三番目に時給がアップした時となったからです。
長く働いてもらうにはコミュニケーションの中でダメ出しをするのではなくて積極的にほめることだと覚えておいてください。
人手不足の背景に長引く景気の低迷をあげる方がいます。
リストラで正社員を減らし非正規社員やアルバイトで労働環境を調整する会社が増えたばかりか、利益が出ているのに正社員を増やそうとしない為余計に非正規社員やアルバイトのニーズが増しているという皮肉な状況だというのです。
また、会社は人件費を削り、稼ぎ出した利益を内部留保という形でため込んでいます。これを吐き出させようと内部留保課税を唱える案が現れています。
このあたりが、現在いざなぎ景気を超える経済成長だと言われる割に好景気を実感できないでいる元凶の様にも思えます。古来、金は天下のまわりものと言われてきましたが、企業が貯め込んだお金の行く末が今後の人材不足解消を占うカギとなりそうです。