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コロナウイルスだけではない、飲食店に発生する怖いO157
小さな子供の命まで奪うとても怖い細菌、O157(オー157)感染。
TVの報道では感染源がどこなのかにばかりフォーカスされ、肝心の再発防止に向けた報道が少ないのも恐ろしい細菌を根絶できていない原因の一つです。
このO157、感染の一つ一つを見て行くと実は身近なところで起きているということがわかります。
今回は、改めてO157感染防止に向けた取り組みを確認頂きたいと思います。
実はあまり理解されていないO157と食中毒の違い
そもそもO157とは、大腸菌の一種ですが、人体に存在するそれと違い激しい下痢や腸炎などを引き起こすもので、「病原性大腸菌」と呼ばれています。
この名称は、数ある大腸菌という菌体を区別する為につけられたアルファベット記号「O」(オー)の内、157番目ということを表すものです。
さてこのO157、細菌による感染ということで食中毒と同じですが、発生の時期を比較すると違いが見えてきます。
発生時期の比較
食中毒 = 2月
O157 = 7月~9月
都内に限っていえば、食中毒が最も多く発生している月は1月です。これに対しO157の発生は7月から9月の間とされています。どちらも25℃を越える温度で繁殖が活発になることは同じです。
なのに食中毒が1月に多い説明としては、菌を増殖させない4℃以下に食材を保つことを外気の低い時期に油断することが発生の原因と言われています。
これに対しO157は、夏の時期に湿度が高いことや人の抵抗力が暑さにより低下することが原因とも言われています。
こんなに起きているO157
今回久しぶりにO157という名前を聞いたとお思いの皆さん、食中毒の一種であるO157は毎年それも相当な数が全国で起きています。
平成10年から令和4年にかけて厚生労働省がまとめた結果では、令和2年の5件を最低に平成30年に32件を筆頭に毎年20件前後の発生が報告されています。
なかでも平成21年の26件、平成27年の27件は近年では一番発生しており、感染された方数も2年で500人をゆうに超えています。また、この14年間でO157が原因で無くなられた方の数は実に29人にのぼります。
大きく報道されていないだけでかなりの方が感染されている実態がお分かり頂けたと思います。
これまでの感染事例
1996年に大阪府堺市で起きた集団感染を覚えておいでの方も沢山いらっしゃると思います。
学校給食が感染源で実に9,000人以上の方がO157に感染されています。当時かいわれ大根が疑わしいという風評被害がたち多くのかいわれ大根生産農家が倒産しました。
この事態を重くみた時の厚生大臣 菅直人は記者を集めて自らがかいわれ大根を食べて見せるというパフォーマンスまでしてその払拭に奔走していました。
さて、これまで実際に起きた感染源となった食材を見てみましょう。
牛レバー刺し・ハンバーグ・牛肉・牛角切りステーキ・ローストビーフ・牛タタキ・鹿肉・かいわれ大根・キャベツ・キュウリ浅漬け・白菜漬物・メロン・シーフード・日本そば
見てお分かりの様に牛肉に関する食材が多く含まれています。
これは、O157が牛の腸内に多く生息していることが原因で、屠殺場で解体される際に感染することが多いからです。
アメリカでは、感染した牛肉を使用したミンチで出来たパテが原因で食中毒が多く発生したため、ハンバーガー病と呼ばれた時期があったそうですが、今では調理時に十分な加熱を施すことでほとんど発生しなくなったそうです。
飲食店がO157に対し注意すべき点
2011年富山県の焼肉店で起きたO157の集団感染は食品衛生法まで変える事態となりました。牛のレバー刺し(ユッケ)による死亡事案はその後生レバーの飲食店での提供禁止となったのは記憶に新しいと思います。
そこで注意喚起されたのが以下の内容でした。
- 生ものは控える(生牡蠣もノロウィルスの感染源といわれています)
- 75℃以上で1分間以上加熱
- 肉を触った手で別の食材や調理器具を触らない(二次感染を防ぐ)
- まな板及び包丁については以下の通り
- 下処理用と仕上げ用でまな板、包丁を分けて使用する
- 日々入念な洗浄を心がけ熱湯をかけたうえで、塩素系の消毒薬で消毒
余談になりますが、屋外で提供されることが多いバーベキュー料理などは素手で肉に触るケースが多く、その手で加熱しない食材に触ることで二次感染が生まれる危険性があります。これからの季節十分気をつけたいものです。
飲食店がO157を遠ざける3つキーワード
1.寄せ付けない
食材に大腸菌が付着する一番の原因は人の手です。ともかく手を洗うことアルコール除菌をすることが最も重要です。
2.増殖させないこと
飲食店ではどのお店も仕込みなど半完成品を準備しているところがほとんどだと思います。最近よく言われるのが冷蔵庫を過信しないということです。
冒頭でも書きましたが、細菌の増殖を抑えるには4℃以下に保つということですが、冷蔵庫は扉を開け閉めするたびに庫内の温度は上昇し4℃以下に保てなくなることがあるようです。
これにより冷蔵庫内でも菌の繁殖が進み食中毒を引き起こす温床となります。原則は調理したものはすぐにお客様に提供することです。
3.死滅させる
改めて書きますが、加熱することで死滅させることが重要です。
~まとめ~
最後に、O157に備える為には保険に入ることをお薦めします。感染者1名あたり5,000万円まで補償してくれる保険で年間掛金は、3,000円前後です。
その補償額を倍に引き上げた保険でも年間掛金は4,000円前後で加入できます。加入をおススメする理由は、一度飲食店が食中毒を起こしてしまうと、営業停止処分を含め多額の補償金が発生する可能性があるからです。富山の焼肉店の様に廃業とならないよう加入しておくべきでしょう。
最後に、O157の感染ではほとんどの場合10人までの小規模感染であったという事実を踏まえると、どの飲食店でも発生しうるリスクがあるということを忘れないでおいてください。