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飲食店「休廃業・解散」件数データからみえてくることとは
2017年3月ある調査会社が発表した外食産業における休廃業・解散に関するデータを見る機会がありました。全国146万社から昨年削除されたデータからいくつかの傾向が出ております。
ただ、飲食業界でも数店舗の経営をする中小から大手の動向になります。従業員10名以下の飲食店の動向とはやや異なりますが、飲食に関わる傾向として読み砕きながら参考にしていきたいと思います。
飲食店の「休廃業・解散」と「倒産」
まず休廃業・解散と倒産という二つの違いを整理します。そもそも休廃業・解散とは自主的に活動を休止した企業のことで任意や法的整理による倒産とは区別されたものです
さて、この休廃業・解散件数は2008年のリーマンショックの年にここ10年でのピークを迎えます。
その後年間400件ほどで横ばい傾向が続くのですが、2014年以降毎年のように増加しています。
これに対し倒産件数はどうでしょうか、ここ10年では2011年に年間倒産数688件のピークを迎えますがその後毎年減少傾向にあります。
2016の倒産件数は2007年以降で一番数が少なくなっています。
この傾向は小規模の飲食店でも同じことが言えます。
閉店の相談を受ける内容で「病気や高齢による廃業」が一番多い理由となっています。その数は売上不振による閉店を大きく上回っています。
このことを裏付けるデータがあります。上記で休廃業・解散した飲食店経営者の年齢別件数が出ているのですが、60代がダントツのトップで全体の3割を占めています。
さらに70代と50代の経営者数をあわせると7割近い割合を占めています。
飲食店の業態別休廃業動向
飲食店の休廃業率ベスト2
中華・東洋料理の休廃業比率が全業種の中で一番高く16%近くを占めています。
この中華・東洋料理というカテゴリーにはカレー・ラーメン・焼肉・韓国料理・餃子にアジアのエスニック料理系なども含まれ業態の幅が広いことにも起因しているようです。
2番目に大衆食堂を中心とした一般食堂が14%で続きます。
駅前の食堂を思い浮かべるかもしれませんが、街道沿いにあるドライブインや食事処などが主だったメンバーになります。
3番目に日本料理(うなぎ・沖縄料理・天婦羅・とんかつ等)13%となっています。
3年程前までは中華・東洋料理の休廃業率が20%近くあったのがこのところ一般食堂や日本料理、西洋料理に上昇傾向が見られます。
休廃業の少ない飲食店業態
逆に休廃業の少ない業態で言えば、料亭の2.5%、すし店の5.4%となっています。
小規模店舗でお店を閉める業種にも同じような傾向が見られます。
全体感で言えば、料理の修行など技能を必要としない業種の閉店数が多く、これに対し寿司店、フランス料理など技能を必要とする飲食店の閉店は少ない傾向にあります。
また、最近の中華料理店を巡る事情に昨年あたりから変化が出てきています。
これまで中国からの観光客が日本で食事をするために中国から多くの料理人が海を渡ったそうです。
ところが中国からの観光客もひところに比べ落ち着いてきています。そこにもってきて本国中国での料理人の人件費が上っておりこれまで日本に出稼ぎに来ていた中華料理の料理人が続々と帰国していると言います。
2017年もこの傾向は続くものと思われます。
飲食店の業歴別 休廃業数
次に飲食店を何年続けたお店が休廃業をしたのかという割合です。
小型店舗の経営に比べ多少規模が大きいとはいえ営業年数は10年未満から100年以上のなかで10年~30年未満という会社が35%を占めています。
「なんだやっぱりそこそこの会社か!」と思われたかもしれませんが、別の指標で見るとある姿が見えてきます。
資本金別で見ると資本金1,000万円以下の会社の割合がなんと7割を越えます。
この傾向の先には当然資本金の少ない小型の飲食店が含まれるわけですから、小資本の飲食店程経営の継続性に問題があるということが分かります。
ただ、一部で発表されている飲食店の倒産確率なる指標があります。
データを見る限りでは閉店をした飲食店の中で開店後2年以内の会社が含まれる割合をあたかも飲食業界全体の倒産確率の様に表現していますが、実態を正確に表していない数字だと言えるでしょう。
飲食店 業種別の損益分岐点比率からみえること
業種により損益分岐点が異なります。
つまりいくら売上がないと利益が出ないかを知る為の物なのですが、この金額を実際の売上額で割って100を乗じたものが損益分岐点比率と呼ばれるものです。
何が分かるのかというと、この数字が小さいほど利益が出やすい業種であるということなのです。
損益分岐点比率 = 損益分岐点売上高 ÷ 実際の売上高 × 100
日本政策金融公庫が出している「黒字を出している飲食店の平均」が以下の通りです。
そば・うどん ・・・ 95.8%
喫茶店 ・・・ 96.2%
お好み焼き ・・・ 96.3%
すし店 ・・・ 97.3%
日本料理 ・・・ 97.9%
韓国料理 ・・・ 97.8%
中華料理 ・・・ 98.8%
西洋料理 ・・・100.1%
飲食店の規模により売上高が異なりますが、
例えば年間2,000万円の売上があったと仮定すると、それぞれの業種で利益として残る金額が出てきます。
そば・うどん ・・・ 840,000円
喫茶店 ・・・ 760,000円
となります。以下は同様です。
最近のカフェ、喫茶店ブームは利益の出やすさで支持されているようです。
各チェーン店が出店にしのぎを削るのがよく分かります。
逆にパーセンテージが高くなるほど利益が出しづらいのかチェーン店化されない業種というのはそういう理由にあったのかと気づかされます。
立って食べるフレンチやステーキが流行ったかと思えば、一時のローストビーフ人気やパンケーキ人気はひと段落しているように見えます。
ここ数年飲食業界の流行はあまり長続きしない傾向にあるように感じます。
ただ、競合するライバルを研究し差別化が出来る飲食店舗は必ず生き残っていくはずです。
例えば、コンビニのドーナッツに対抗して目の前で作って見せるドーナツ店だったり、早さを競うのではなく注文が入ってからジックリ作るハンバーガーショップの逆転の発想であったり、串の値段をとことん抑えて値段以上の味を出す焼き鳥チェーンだったりと何かで他店と違う価値を出せるかが差別化の肝になります。
その価値に対してお客様は評価をし、お金を払ってくれることでしょう。