居抜き物件は、厨房や内装、消防設備をそのまま使えるため、開業費を抑えやすいのが魅力です。しかし、前のお店が営業できていたからといって、新しい店もそのまま営業できるとは限りません

2026年8月現在、20坪以下でも、工事や営業を始める前に管轄消防署へ相談する必要があります。現地検査を行うかどうかは消防署が判断します。

居抜きで設備や家具を変えない場合、検査が省略されることもありますが、店主の判断で手続きを省略してよいわけではありません。

1.20坪以下の小規模飲食店舗に開業前の消防検査は必要か?

20坪は約66平方メートルです。ここでのポイントは、消防上の判断は店舗面積だけでは決まらないということを理解してください。

建物全体の用途と延べ面積、店舗がある階、窓や避難経路、建物全体と店舗の収容人員、厨房で使う火気、既存消防設備、間仕切りや客席配置の変更などいくつもの要素が複合的に絡んできます。

小さな店舗でも、「地下」や「無窓階」(ソシアルビルの一室等)、「複合用途ビルの一室」(住宅、商業用途等)では、追加設備が必要になることがあります。

届出期限は自治体の条例で異なります。東京では、「使用開始の7日前まで」に「防火対象物使用開始届出書」、対象となる内装や間仕切り工事を行う場合は、着工の7日前までに「防火対象物工事等計画届出書」を提出します。 <参考>東京消防庁「新たにテナントを使用する皆様へ」

まずは契約直後、遅くとも内装工事を発注する前に、所在地を管轄する消防署の予防担当へ相談しましょう。

2.消防検査が必要な場合、何をそろえればよいのか?

最初にそろえたいのは、・建物の概要、・案内図、・階全体の平面図、・店舗平面図です。

店舗平面図には客席、厨房、出入口、避難経路、間仕切り、消火器、誘導灯、自動火災報知設備などの位置を記載します。

併せて、室内仕上表、建具表、厨房配置図、厨房機器一覧、機器の仕様書、換気計算書、排気ダクト図を準備します。 <参考>東京消防庁「使用開始届・工事計画届の添付書類」

既存設備を使う場合は、前店舗の検査結果通知書や消防用設備等点検結果報告書が残っていないか、貸主や管理会社へ確認してください。もし無いと言われても、分電盤の扉の内側や営業許可書の額の中などに保存されていることが往々にしてあります。ご自身でも探してみてください。

ガスコンロなど火を使う小規模飲食店では、一定の防火上有効な措置がある場合を除き、原則として面積にかかわらず消火器が必要です。 <参考>総務省消防庁「消防用設備等」

図面が古い、設備の位置が現況と違う場合は、消防設備業者や内装会社に現況図を作ってもらうほうが確実です。

3.店内の不燃素材や耐火性能は必要か?分からない場合はどうする?

「20坪以下なら壁や天井は何でもよい」とは限りません。

内装制限は、店舗単体の広さだけでなく、建物の構造、階数、地下・無窓階かどうか、厨房など火を使う場所かどうかで変わります。 <参考>国土交通省「内装材料の制限」

また、「耐火構造」「不燃・準不燃材料」「防炎物品」は別の基準です。カーテンやじゅうたん等には防炎性能が求められる場合がほとんどです。

見た目での判断は禁物です。壁・天井材の認定番号や商品資料、防炎ラベル、既存の室内仕上表を確認します。

資料がない場合は内装会社や建築士に現地調査を依頼し、消防設備は消防署、建築基準法上の内装制限は建築士や自治体の建築担当へ確認しましょう。

4.消防の確認や点検を受けなかった場合のリスクは?

一番のリスクは、開業直前に追加工事が発生することです。

誘導灯や煙感知器の移設、消火器の追加、避難経路を確保するための座席削減、壁や天井のやり直しが必要になれば、開業日と資金計画の両方が狂います。

消防法令違反が確認されれば、設備の設置・改修命令、危険性が高い場合は使用停止命令の対象となる可能性があります。届出や消防用設備の点検報告を怠れば、罰則につながる場合もあります。

開業後も点検は続きます。法令に基づき設置された消火器や自動火災報知設備などは、機器点検を6か月ごと、総合点検を1年ごとに行います。

飲食店などの特定防火対象物は、原則として1年ごとに消防署への報告が必要です。 <参考>東京消防庁「消防用設備等点検報告制度」

貸主と店主のどちらが手配するかも、契約時に確認しておきましょう。

5.消防検査までの流れ

居抜き物件を契約・引渡し
     ↓
既存図面、検査結果、点検報告書を集める
     ↓
新しい客席・厨房レイアウトと使用機器を決める
     ↓
管轄消防署へ事前相談
     ↓
必要な届出と追加設備を確認
     ↓
工事前の届出→工事・消防設備の調整
     ↓
使用開始届を提出
     ↓
書類確認・必要に応じて現地検査
     ↓
指摘事項を是正し、営業開始

~まとめ~ 今スグ店主が取れる行動

これまで数多くの居抜き店舗を扱ってきましたが、今回のような消防点検の知識を持ち合わせない内装業者も数多く会いました。小規模店舗はいらない、前の店舗が消防検査を受けているから不要だ。。。 すべて間違いです。安易に信じないでください。

居抜きで引き継げるのは設備ですが、前の店の消防上の判断まで自動的に引き継げるわけではありません。

お店の前所有者が消防検査をちゃんと受けていればそのデータは必ず消防署に残っています。これによりいろいろなことが簡素化されることもあります。ともかく物件の住所、現況図、予定レイアウト、厨房機器一覧、店内写真を持って、工事前に消防署へ相談する。これが、開業直前の想定外を防ぐ最も簡単な対策です。

最後にもう一言。消防署で担当してくださる方も様々です。極端な話、別の区でOKだったものでも当該の区ではNOということも良くあります。だからこそ事前相談が大事なのです。