計算機を使いながら飲食店の事業計画書と借入返済額を確認する開業予定者

飲食店を開業したい。しかし、金利が上がっている今、借入をしてよいのだろうか。

「もう少し待てば状況が落ち着くかもしれない」「今後さらに金利が上がるなら、早く借りた方がよいのではないか」。10~15坪程度の小型飲食店を計画している方からも、このような迷いを聞くようになりました。

ただし、金利上昇という言葉だけで開業時期を決めるのは危険です。大切なのは、借入金利が上がることで、毎月の返済額が実際にいくら増えるのか。その増加額を店の収支で吸収できるかを確認することです。

「1.25%」は長期金利ではない

まず整理しておきたいのが、金利に関する報道の読み方です。

日本銀行は2026年9月、無担保コールレートを1.25%程度で推移させる方針を決定しました。これは一般に政策金利と呼ばれるもので、公庫から借りる際の金利や長期金利が、そのまま1.25%になるという意味ではありません。

日本銀行は、経済・物価・金融情勢に応じて今後も政策金利を調整する方針を示していますが、上昇の時期や幅があらかじめ決まっているわけではありません。

したがって、「今後1年間は必ずこの幅で上がる」と予想して開業時期を決めるより、現在提示される借入条件で返済計画が成立するかを見る方が現実的です。

公庫の金利は一律ではない

日本政策金融公庫の国民生活事業では、2026年9月1日現在、税務申告を2期終えていない人が無担保で借りる場合、基準利率は年3.75~5.35%です。一方、条件により適用される特別利率は年2%台から設定されています。

実際の金利は、利用する融資制度、返済期間、資金の使い道、事業計画などで異なります。そのため「現在の創業融資は何%」と一つの数字だけで判断することはできません。

ここでは比較しやすいように、1,000万円を元利均等返済、返済期間10年、据置期間なしで借りる場合を試算します。

1,000万円を10年間・元利均等返済で借りた場合
借入金利 毎月の返済額 返済総額 金利2%との差
2.0% 約92,000円 約1,104万円 ―
3.0% 約96,600円 約1,159万円 月約4,600円増
3.5% 約98,900円 約1,187万円 月約6,900円増
4.0% 約101,200円 約1,215万円 月約9,200円増

※1,000万円を10年間、据置期間なし、元利均等返済で借りた場合の概算です。実際の返済額は適用金利、返済方法、融資条件などによって異なります。

金利が2%から3.5%へ上がると、総返済額は約82万円増えます。しかし、10年間の毎月返済額で見ると、増加は約6,900円です。

決して無視してよい金額ではありません。ただし、金利が1.5%上がったからといって、毎月の返済額が何万円も増えるわけではないことも分かります。

返済期間を長くすると、開業直後の負担を抑えられる

日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」は、設備資金が20年以内、運転資金が原則10年以内です。いずれも据置期間は5年以内とされています。

仮に設備資金1,000万円を金利3.5%、20年返済とした場合、毎月の返済額は約58,000円です。10年返済の約98,900円に比べ、開業直後の月額負担を大きく抑えられます。

ただし、返済期間を延ばすほど支払う利息の総額は増えます。最長期間を無条件に選ぶのではなく、開業直後の資金繰りを安定させるための選択肢として考えるべきでしょう。

据置期間は「返済しなくてよい期間」ではない

据置期間中は、一般的に元金の返済を待ってもらい、利息のみを支払います。

1,000万円を金利3.5%で借りた場合、利息だけなら月約29,000円です。売上が安定していない開業直後には大きな助けになります。

しかし、元金が減らないため、その後の返済額や利息総額は増えます。据置期間は赤字を先送りする仕組みではありません。認知を広げ、固定客をつくり、売上を安定させるまでの時間を確保するために使うものです。

開業を1年待つ費用も考える

金利が気になると、「もう1年待とう」と考えたくなります。しかし、待つことにも費用があります。

その間に、店舗賃料、内装工事費、厨房機器、食材費などが上昇する可能性があります。条件に合う居抜き物件を見送れば、次に同じ条件の物件が出る保証もありません。

例えば金利2%から3.5%への上昇による返済増は、1,000万円・10年返済なら年間約8万2,000円です。ところが、物件賃料が月1万円上がれば年間12万円、内装工事費が100万円増えれば、金利差を上回ります。

金利だけを待っても、開業費全体が下がるとは限らないのです。

開業を進めるか判断する5つの数字

  1. 金利を1~2%高くした場合の毎月返済額
  2. 返済後も残る月間利益
  3. 開業後6か月程度を支えられる運転資金
  4. 売上が計画の80%だった場合の資金繰り
  5. 開業を延期した場合に増える賃料・工事費・機会損失

金利が上がっても、この5項目を満たす計画なら、開業を止める理由にはなりません。

反対に、低い金利でなければ返済できない計画や、開業後の運転資金が残らない計画であれば、物件や投資額を見直す必要があります。

まとめ―金利ではなく、返済後に残るお金で決める

金利上昇を無視してよいわけではありません。しかし、「金利が上がっているから開業できない」と決めつける必要もありません。

1,000万円の借入金利が2%から3.5%になった場合、10年返済なら月額の差は約6,900円です。この差を、客単価、来店客数、家賃、FLコストと並べて考えることが重要です。

開業のタイミングを決めるのは、ニュースの見出しではありません。

毎月の返済額を含めても店に利益が残るか。売上が安定するまでの運転資金を確保できるか。そして、10~15坪という小さな店で固定費を抑え、無理なく営業を続けられるか。

金利が上がる前に急ぐのでも、下がるまで待つのでもなく、現在の条件で成り立つ計画をつくれた時が、その店の開業時期です。

参考:日本銀行「金融市場調節方針の変更について」/日本政策金融公庫「金利情報」/新規開業・スタートアップ支援資金

(構成・執筆:著者 / 画像生成・返済試算・ファクトチェック:AI活用)