飲食店 No Show への法的対抗策を考える

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2018年11月経済産業省から一本のレポートが発表され話題となりました。タイトルはNo Show(飲食店における無断キャンセル)対策レポートという内容です。これは、一般社団法人日本フードサービス協会、全国飲食業生活衛生同業組合連合会、公益社団法人全国消費生活相談教会、弁護士、大学教授、民間予約代行会社など総勢8名の有識者に加え、経済産業省、農林水産省、消費者庁から3名がオブザーバーとして加わりまとめられた内容です。

今回のタイトルにあるように、このレポートが目指すものは飲食店の無断キャンセルつまりNo Showと呼ばれる行為に対し、その実態と経済的不利益、また防止対策の法的根拠など、これまで個別に語られてきた内容を一度整理して広く発信をした内容です。

店サポでも何度となく取り上げて来た飲食店の無断キャンセル=No Showですが本レポートをもとに改めて考えてみたいと思います。

No Showの定義とその実態

まず、No Showの定義をします。

予約していたにも関わらず、その日時になっても店に連絡がなく、または店の連絡を無視して来店しないこと

以下は、No Showの具体事例

大学サークル

大学のサークルの飲み会を行うと、ある居酒屋に幹事が一人3,000円のコースを50名分予約をした。しかし、予約当日一人も来店せず、店には何の連絡もなかった。その居酒屋店長が警察に被害届を出すとTwitterにつぶやいて騒ぎが拡大したことは記憶に新しいと思います。

企業接待

取引先の接待をするため若手社員が和食のA店、洋食のB店、中華のC店をそれぞれ同一日時で予約した。当日、取引先の好みを聞き和食のA店を訪れたのだが、B店、C店にはキャンセルの連絡が入らず店側は、待ち続けていた。

確認したにもかかわらず

個人客の4名から予約が入った。時間が過ぎても来店が無かったため店の担当者は予約者の携帯電話に連絡を入れた。すると、「もうすぐ着く」との返答だった。店側は、席を開けて待ち続けたが、結局閉店時間になっても来店はなかった。

飲食店 突然の予約キャンセル ドタキャンを防ぐ対策を考える

No Showが及ぼす損害規模

ではNo Showが飲食店業界全体にどれほどの損害を与えているのかみてみましょう。

まず、飲食業界の市場規模が約25兆円といわれています。さてそのなかでNo Showが及ぼす損害は年間2,000億円といわれています。さらに、1日前、2日前のキャンセルを含めると被害総額は1.6兆円規模に達するようです。

これを、賃金ベースに引き直すと、売上に含まれる平均人件費比率を37%と仮定すと飲食業従業者全体の2%に相当します。同じく営業利益ベースに引き直すと、平均的な利益率を2.3%と仮定すると約0.8%匹敵する損害となります。

別の視点で2,000億円をとらえたとすると

No Showを数字で捉えるのは難しいので定性的な部分で考えてみたいと思います。もしこの金額分を消費者、飲食事業者、飲食業従事者それぞれに還元できたとすればどうなるでしょうか。

消費者への利益還元

  • 人気飲食店への予約が容易になる
  • 同価格でよりよい原材料へのグレードアップ
  • サービス・おもてなし水準の向上

飲食事業者への利益還元

  • 原材料・サービス水準の向上による更なる顧客獲得
  • 最新設備機器の導入等による調理品質の向上

飲食業従業員への利益還元

  • 従業員給与への充当
  • 最新設備機器の導入等により、労働時間が削減

No Showに対する法的根拠とは

無断キャンセルで飲食店が損害を被ることがお分かり頂けたと思います。ではその損害をキャンセル料のかたちで請求するには法的にどのようなポジションをとればいいのでしょうか。

まず、キャンセル料という損害賠償責任を当には2種類のパターンがあります。

1.債務不履行による損害

契約(債務)を履行しないことにより、契約相手方に生じた損害をいう。飲食店でいえば、日時や席数、コースの注文など、双方で金額を含め明確に約束した予約をNo Showした場合などがこれに該当します。

2.不法行為による損害

契約が成立していなくても、故意や過失により相手方に生じた損害をいう。例えば、日時と席数のみを予約したにも関わらずNo Showした場合などがこれに該当します。

損害賠償の考え方

まず、顧客のキャンセルにより飲食店側に損害が発生したのであれば、飲食店は顧客に対し損害賠償を請求することはできるとされていますが、いくつかの必用条件があります。

  • 損害額の算定
  • 適切なキャンセルポリシーの設定(解約による支払い基準)

例えば、コース予約の場合、債務不履行となります。その際、発生した損害を別の顧客で埋め合わせる(再販する)というのは極めて困難であると考えられます。つまり、全額の請求が相当となるのですが、事前にその旨のキャンセルポリシーを設定し顧客に伝えるいる必要があります。同様に席のみの予約の場合であれば、来店しなにを注文するのかは分からなくとも平均的な食材、人員、サービスの準備は発生しているため、人件費や逸失利益、食材廃棄費などを考え合わせると、平均的客単価の50%前後を損害賠償額と考えるのが妥当でしょう。その際でも事前のキャンセルポリシーの告知は必要です。

No Showと事前キャンセルの違い

では似て非なるこの二つ違いを考えます。どちらもポイントになるのは逸失利益です。No Showの場合、飲食店側の努力により損害の軽減つまり逸失利益の軽減は極めて困難です。一方、事前のキャンセルの場合であれば、たとえ30分前であっても、損害を軽減する努力をすることは可能です。とは言え、一部キャンセル料を請求するか、今後の関係を考え損が害賠償の請求をしないかの判断は分かれることでしょう。

No Show防止策を考える

  1. 予約の再確認の徹底
  2. 顧客がキャンセルをしやすい仕組みの整備
  3. キャンセルポリシーやキャンセル料の目安を明示
  4. 事前決裁や預かり金(デポジット)の徴収

これらの防止策では、中小の飲食店舗に負担がかかるように思われます。ランチ時や夜の営業時間に電話を入れてもなかなか出てくれないと言った顧客側の悩みや、予約の管理を電話とノートで切り盛りする店側にも大変な負担となっています。例えば、ITを活用した予約専門サイトに加盟することで24時間の予約とキャンセルが可能になれば問題の半分は解決になると思われます。また確認のためのショートメッセーの発信や、予約の確認はAIが自動で行ってくれます。また、予約時にキャンセルポリシーまで明示することが可能です。No Showを極力避けたいのであれば導入に向けた検討をしてみてはいかがでしょう。

飲食店 無断キャンセルに対抗する決定的なサービスはあるか

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