
飲食店の利益を増やすために、最初に追うべき数字は売上だけではありません。結論から言えば、「メニューごとの粗利と手間」「時間帯ごとの働き方」「実際に使われた席」の3つを見直すことが先です。
2026年7月の内閣府の月例経済報告では、景気は緩やかに回復し、外食も緩やかに増加しているとされました。一方、日本フードサービス協会の6月調査では、加盟企業の売上は前年同月比103.3%でしたが、客数は100.8%、客単価は102.4%です。売上の伸びほど客数は増えていません。
さらに、6月の消費者物価指数では、生鮮食品を除く食料が前年同月比3.1%上昇しました。この数字は飲食店の仕入価格そのものではありませんが、家計の食費負担が続いていることを示します。
いま必要なのは、単純な値上げや人減らしではなく、同じ売上から残る利益を増やすことです。
1.メニューは「売上」だけでなく、粗利と手間で比べる
例えば、1,200円の商品Aが1日20食売れ、食材原価が480円なら、1日の粗利は14,400円です。一方、900円の商品Bが25食売れ、原価が270円なら、売上はAより低くても粗利は15,750円になります。
ただし、これだけで商品Aをやめると判断するのは早計です。
比較するのは、販売数、売上高、食材原価だけではありません。仕込み時間、注文を受けてから提供するまでの時間、廃棄量、ほかの料理と共通利用できる食材の量も確認します。
売れているのに粗利が低い料理なら、量を減らすのではなく、仕入れ単位や付け合わせを変えられないか検討します。追加料金のトッピングやドリンクとのセットで、満足感を落とさず客単価を上げる方法を考えます。
反対に、粗利は高いのに注文が少ない料理なら、メニュー上の位置、料理名、写真、説明文を見直します。店員から一言すすめるだけで注文は必ず増えます。
仕込みに時間がかかり、廃棄も多い料理は、提供する曜日や数量を限定する方法があります。複数の料理で同じ食材を使えるようにすれば、品数を保ちながら廃棄を減らせます。
大切なのは、売れない料理を機械的に削ることではありません。料理同士を比較し、価格、量、見せ方、仕込み方を工夫して、お客様が感じる価値を落とさず利益を増やすことです。
2.人を減らす前に、時間帯ごとの「仕事」を見直す
人件費の見直しは必要ですが、人数だけを減らすと、提供の遅れや清掃不足を招き、リピーターを失います。
2026年8月現在の東京都最低賃金は時給1,226円です。仮に週10時間の勤務を本当に削減できれば、年間50週で約61万3,000円の差になります。しかし、その10時間を店主が無償で引き受けても、店の負担が消えるわけではありません。
今度は、時間ごとの来店客数をチェックしましょう。最初は、営業を大きく3つの時間帯に分ければ十分です。
ランチ営業なら、「開店から12時まで」「12時から13時のコアタイム」「13時以降」の3区分です。
夜営業なら、「開店から18時まで」「18時から20時のコアタイム」「20時以降」に分けます。曜日による違いが大きい店は、平日と週末も分けて確認します。
併せて、それぞれの時間帯について、売上、勤務人数も記録します。POSレジから確認できる数字を使えば、営業中に記録を増やす必要はありません。
開店直後に来店が少ないなら、その時間を仕込みに使えないか。20時以降に料理の注文が減るなら、遅い時間だけメニューを絞れないか。コアタイム前に準備を終え、忙しい時間に接客と調理へ集中できないかを考えます。
注文の少ない料理を整理する、仕込み量を決める、食器の戻し場所を変える、締め作業を一覧化する。こうして仕事そのものを減らしてからシフトを調整します。
なお、2026年度の最低賃金は、中央最低賃金審議会が全国加重平均1,176円となる目安を示していますが、8月時点では各都道府県の最終決定前です。今後の上昇を前提に、時間帯ごとの売上と人件費を確認しておく必要があります。
3.席数より「使えなかった席」を見る
15席あっても、4人席を1人客が使えば、残り3席は販売できない時間になります。大切なのは席数ではなく、来店人数とテーブルの組み合わせです。
1週間だけでも、1人客、2人客、3人以上の組数と、満席で断った人数を記録してください。
4人席を可動式の2人席に替える、カウンターに荷物置きを用意する、テイクアウトの受け渡し場所を客席から外すだけでも、実際に使える席は増やせます。
客単価2,600円、月25日営業の店で、席の組み替えにより1日2人を追加で案内できれば、売上機会は月13万円です。ただし、これは自動的に増える売上ではありません。断ったお客様の記録があって初めて、投資を判断できる数字になります。
~まとめ~ 今スグ店主が取れる行動
まず7日間、メニュー別の販売数と粗利、3区分した時間帯ごとの売上と来店数、仕込み時間、断った人数を確認します。
次に、利益への影響が大きい項目を一つだけ選び、2週間試します。すべてを一度に変えると、何が利益につながったのか分からなくなるからです。
売上があることと、利益が残ることは別です。値上げ、人減らし、席の増設を急ぐ前に、粗利、時間、席の使われ方を測る。
2026年の飲食店経営では、「もっと売る」だけでなく、「無理なく残す」視点が店を強くします。





