閉店前の飲食店内で、手続き書類をテーブルに並べて記入する男性店主を肩越しに見た様子
イメージ画像(AI生成)

食材や光熱費、人件費の上昇が、飲食店の経営を圧迫しています。2026年度上半期には、居酒屋やラーメン店の倒産も前年同期より増えました。

閉店を決めても、営業を終えればすべて完了するわけではありません。家賃の支払い、設備の返却、行政への届出、お客様へのお知らせなど、最後まで仕事は残ります。

今回は、小さな飲食店の店主が押さえておきたい手続きを、進める順番に整理します。税務は個人事業を中心に、行政手続きは東京都内を主な例として説明します。

1.契約書を確認し、明渡しまでの日程を組む

最初に確認するのは、賃貸借契約書の解約予告期間、通知方法、原状回復の範囲です。

「店舗は半年前に解約予告」「原状回復は坪いくら」といった説明を見かけますが、これらは自分の契約や工事費を決める根拠にはなりません。予告期間は一律の法律上の決まりではなく、まず契約書を確認します。定期借家などでは、途中解約できる条件も併せて見てください。

原状回復費も、面積だけでは決まりません。どこまで戻す契約か、厨房・ダクト・配管をどう撤去するか、建物の条件などで変わります。貸主・管理会社と工事範囲を確認し、その範囲をそろえた見積りで判断しましょう。

営業終了日と、家賃の支払いが終わる日は同じとは限りません。撤去・清掃・工事・明渡しの日程まで逆算し、余分な負担を防ぎます。

居抜きで引き継ぎたい場合は、解約の進め方を決める前に早めに相談を。貸主の承諾や次の借主との契約が必要で、引継ぎ先が決まれば原状回復や残りの家賃が当然に免除されるわけではありません。合意した条件は書面に残しましょう。

2.設備を「自分の物」と「借りている物」に分ける

冷蔵庫や食洗機がリースなら、契約内容と清算額をリース会社へ確認します。残額を一括で払っても、所有権が自動的に移るとは限りません。

返却するのか、買い取れるのか、次の事業者へ引き継げるのか。相手の承諾を得る前に、売却・廃棄・残置を約束しないでください。

ビールサーバー、おしぼりウォーマー、BGM機器、玄関マットなどの貸与・レンタル品も一覧にし、回収日を決めます。居抜きで譲る設備から除外しておくと、引渡し時の食い違いを防げます。

3.保健所・警察署・消防署へ届け出る

保健所

営業を廃止したら、管轄保健所へ廃業届を提出します。例えば新宿区では、営業許可書を添えて10日以内です。提出方法は管轄の案内を確認してください。

ただし、居抜きで事業を譲る場合は、廃業届を出す前に相談しましょう。2023年12月13日から、事業譲渡によって食品営業許可等の地位を承継できる制度が始まりました。設備を売るだけで許可まで引き継げるわけではありません。譲渡内容に応じた手続きを確認します。

警察署

深夜酒類提供飲食店営業の届出をしている店は、廃止から10日以内に廃止届を提出します。風俗営業の許可を受けている店は、廃止による許可証の返納を10日以内に行います。店の呼び名ではなく、取得した許可・届出で確認しましょう。

消防署

防火管理者を選任していた場合は、解任後、遅滞なく届け出ます。閉店後も工事などが続く場合は、その間の防火管理について貸主・管理会社と所轄消防署へ確認してください。

4.税務と、従業員の手続きを忘れずに

個人事業の廃業届は、2026年1月1日以後の廃業から、廃業した年分の確定申告期限までの提出に変わりました。以前の「1か月以内」という案内と混同しないようにしましょう。

青色申告を取りやめる場合も、その年分の確定申告期限までに届出を。消費税の課税事業者やインボイス登録事業者が事業を廃止する場合は、「事業廃止届出書」を速やかに提出します。廃業届を出しても、最後の確定申告や納税は別に必要です。

従業員がいる店は、閉店を決めた段階で退職・解雇に関する対応を確認し、給与の精算や離職票などを準備します。給与支払事務所の廃止届は原則1か月以内。雇用保険・労働保険・社会保険も、加入状況に応じて手続きを確認してください。

5.解約とお知らせは、最後の作業に合わせる

電気・水道・ガスは、営業終了と同時に止めると清掃や撤去工事に困る場合があります。必要な作業と明渡しの日程を確認して、停止日を決めましょう。

POS、予約サイト、通信回線なども解約条件を確認し、申告や精算に必要なデータは先に保存します。仕入先には最終発注と支払い、お客様には予約やボトルキープの扱いを案内してください。

以前、閉店した店舗を整理していたところ、自分のボトルを探しに来た常連さんにお会いしたことがあります。お客様にとっては、大切な場所だったのでしょう。

~まとめ~ 閉店を決めたら、明渡しから逆算を

店サポの提案としては、「手続き・期限・連絡先・完了」を一枚にまとめることです。閉店日だけでなく、その後の支払いと作業まで見通しておきましょう。

居抜きでの引継ぎを考えている方は、設備を処分したり解約条件を固めたりする前に、閉店移転.jpからご相談ください。

(構成・執筆:著者 / 画像生成・ファクトチェック:AI活用)