飲食店を閉店する際、一番重要な手続きは、どのような状態で物件(貸室)を明け渡すのかという選択です。ゆえに予め学習し作戦を立てて決断をすべきなのです。その意味でも急いで大家さんか管理をしている不動産会社を訪ねるのは得策ではありません。今回は、賃貸借契約のなかに書かれている解約の申し出について確認していきたいと思います。
一口に撤退、解約と言っても、契約書通りに原状回復工事を行う閉店と飲食店の内装や設備などを残したまま閉店する居抜きと呼ばれる手法の二つがあります。双方のメリットについても考えます。
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店舗の撤退時賃貸借契約の解約はどうすべき
飲食店に限らず手続きは面倒なものです。何の知識もなくただ解約しますと大家さんや管理会社に出向いた方のほとんどが違う意味で落胆することになります。
賃貸借契約書読み返すと思い出すのが、契約期間満了に伴う解約以外の解約手続きでは、解約予告期間の存在があるからです。これは、解約を申し出てから一定の期間は家賃を支払わなければならないと規定しています。
その期間とは契約により様々ですが、住居系の解約予告期間が概ね1ヶ月間なのに対し飲食店などの事業系は3ヶ月から8ヶ月間と長めに定められています。実際、今月いっぱいで辞めますと言いに行っても、あと数ヶ月間は家賃を払ってくださいといわれて愕然としたというのがその最たる原因です。
また、原状回復義務の条項が日本の賃貸借契約書には「必ず」入っており、大金をかけて作ったお店を入居する前の状態(スケルトン状態)に戻す工事をしてくださいといわれます。
当然ですが、この工事の費用は借りた方の負担です。小さな店舗でも100万円程かかることもありバカになりません。
店舗の撤退で原状回復工事の基準はなにか
前節で、日本の賃貸借契約書には必ず原状回復義務条項が入っていると申し上げました。ところが、この原状を契約書内や引渡基準書等で規定している契約は大手と結ぶ契約以外にはほぼ存在していません。
少々店舗契約を分かっている不動産会社でも、「床・壁・天井をスケルトン状態に復して」と一文が差し込まれているのみです。だからと言って、明文化して欲しいと頼んでも多分やってくれないと思います。(原状を規定する作業はとても困難ですから)
もし、店舗不動産を借り受ける際、内装が全くないスケルトンの状態であれば、隅から隅まで写真を撮っておきましょう。つまり写真どおりに戻せばよいという基準となるからです。居抜きの状態で引き継いだとするならば、これまで飲食店舗の施行、原状回復工事経験のある工務店に相談して、管理会社や大家さんと確認をとりながら仕上げて頂きましょう。
店舗の撤退で二つの解約方法がある
冒頭で書きましたように撤退、解約には二つの選択があります。一つは契約書に書かれている通りに粛々と進めるやり方。もう一つは原状回復工事はせずにお店を明け渡す居抜きと呼ばれるやり方です。それぞれのメリットを書く前に重要なポイントが一つあります。
もし居抜きで解約を希望される場合には、大家さんか管理を委託されている不動産会社の承諾が必要になります。仮に居抜きで解約を希望しますとお願いしても断られることもありますので確認をせずに居抜きを前提に解約をお考えにならないよう注意が必要です。
①契約書通りの閉店
一番のメリットは管理会社などにすべてを任せることができる点です。例えばどのようなケースか実際にあったのが、
- ご自身が急な病になり入院しなければならなくなった
- 離れて暮らす親族の介護が必要となりお店に立つことが出来なくなった
など突然にお店にたてなくなる事情が起こった場合です。
もうすこし詳細に見てみましょう。
物理的にお店がある場所を離れなければならない事態ですから、取引先や卸しの会社のほとんどがインターネットか電話での手配になります。その際お店の鍵を管理会社に預けておけば業者の出入りがある場合の対応をしてくれることでしょう。
また、原状回復工事の見積から清算まですべてを手配してくれます。支払い清算についても、入居の際に大家さんに預けた敷金を使い相殺することで支払いの一部または全額をまかなうことが可能です。最後に残った差額が指定の口座に振り込まれてきます。
急な閉店の場合、大家さんから管理を委託されている不動産会社をうまく活用しましょう。
②居抜きで閉店
居抜きで明け渡すことで大家さんから承諾が得られた前提で話を進めます。
居抜きでの閉店では大きなメリットの一つが、原状回復工事費がかからないことだと申しあげました。さらに、閉店前にお店を居抜きで引き継ぎたいと言う方が現れれば、解約予告期間を待たずに次の方に引き継ぐことも可能です。(名義変更など、契約を切り替える)この時点でダブルのメリットがあります。
さらに上手くいけば居抜きの店舗を売却することも可能です。ただ、駅からの立地や階数、お店の規模により評価が異なりますので全部が全部売れるとは限りません。最近では飲食店を専門に居抜き物件の仲介や買取を行う不動産会社が増えてきましたので相談してみるとよいでしょう。
店舗の撤退で解約予告を出す前に
居抜きの場合、大家さんの了解を得た上で解約予告を出さずにお店を引き継いでくれる方を探すのが頭のいいやり方と言えます。というのも解約届を出してしまうと予告期間が確定する可能性があります。途中で解約、明け渡しをしたくても予告期間分の家賃は払ってくださいと言われかねません。
これに対し次の方が見つかり引き継ぐ日が決まると契約の切替となりますので、日程に縛られることなく切り替えが出来ます。また、もし次の方を見つけるのに時間がかかっても解約日を意識することがありません。
この場合、優先順位はあくまでも居抜きで引き継ぐ、居抜きで売却が第一順位で閉店はその条件が整ってからということになります。
店舗の撤退でテナント情報はどうする
解約予告を出さずに、次のテナント探しというと言葉では簡単ですが、いざ探すとなるとどうすればよいのかとなります。居抜きで引き継いでくれるテナント探しの情報は
- 同じ飲食店仲間・友人・先輩後輩に声をかける
- 居抜きで飲食店を扱う不動産会社にお願いする
どちらも気をつけなければならないのが情報の管理です。仲間や友人に話を持ち掛ける時でも、大家さんに内緒で動いているので気を付けて欲しいと頼んでおけば大丈夫でしょう。問題は不動産会社です。なかには行儀の悪い業者がいて本人に断りもなくネット上に居抜き賃貸物件として公開してしまう会社があります。最初にそのようなことがないよう釘をさすことを忘れずに。
店舗の撤退 減損処理と減価償却の違い
飲食店を居抜きのままで売却されたいと希望する方で、減損処理と減価償却の違いについて質問される方がおられます。言葉は似ていますがこの二つはまったく異なります。
減損処理
今回の場合では、飲食店をオープンするにあたりかけた多額の資金に対して、居抜きで売却する際に大幅にその価値が下がってしまい、価格回復の見込みが望めない場合に帳簿上の価格を実勢価格に下げることを言います。その際その差額は引当金という形で補てんする必要があります。
減価償却
店舗の価値が決定的に下がってしまったことへの処理が減損処理なのに対し、減価償却は、償却資産として飲食店の工事や設備、機器などを資産計上し、それぞれに対応する期間にわたって利益から内部留保できるシステムの事を言います。ある日突然高額なフォードア冷凍冷蔵庫が壊れても、買った時からお金を積み立てていることで対応できるというようなイメージです。その積立金には税金がかからないことで長く商売を続けられる仕組みなのです。
飲食店 店舗撤退時まとめ
今回は閉店の事情によりどちらを選択するのがよいのか考えてみました。閉店まで比較的余裕があり、手元に残るお金を増やしたいのであれば条件はつくものの迷わず居抜きを選択すべきです。どうしても火急な事情で手続きがとりずらい方には手元に残るお金はグッと減りますが管理会社をうまく使っての手続きが得策です。もちろんですが、どちらも異なるリスクも存在します。そのリスクについては改めて考えたいと思います。
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