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はじめに
料理人にとって厨房内は大切な仕事場。ましてや自分の店ともなるとそこは聖域とも呼べる場所です。
どんな飲食店でも一度造った厨房のレイアウトはめったに変更しないというのが当たり前。だからこそ最初によく考えて造る必要があるのです。
これから厨房を計画する人、どこか効率が悪いと感じている厨房のリニューアルを考えている人、是非参考にして頂きたいと思います。
参考ついでに次の記事も合わせてご覧ください飲食店舗 繁盛する 厨房レイアウト
厨房レイアウト の起点を探す
これから 厨房レイアウト を考えようとしている方にお尋ねします。
質問1. 何を起点として 厨房レイアウト を造りますか?
- ガスの配管や給排水管の位置にあわせてシンクやガスレンジを配置する
- そもそも最初から用意されていた(居抜き店舗)のでそのまま利用する
- 厨房機器の業者に考えてもらう
- 必要な設備が収まるようにやり繰りして決める
居抜きで飲食店を始めた方であれば「2.」という方が多いことでしょう。
建物側の事情で、レンジフードのダクトを外へ出すスリーブ(壁などに用意されている開口部)の近くに、ガス管の立ち上がりが来ているので自ずとレンジの場所が決まってくるということもあるでしょう。
ただ、「3.」は他人任せ、「4.」はレイアウトというよりは収まりできめていることになります。果たしてこのような決め方で厨房を長く使い続けることができるのでしょうか。
質問2. 厨房内で一番長く立つ場所はどこですか?
- 客席が見えるカウンターの前
- 厨房中央に置いた調理台の前
- 常に移動しているから定位置はない
この質問の意図は、あることに気づいていただく為です。調理人の立ち位置や調理中厨房内の導線は2つの理由によって変わります。
- 厨房機器の配置
- 料理するメニューの内容
和食と火を多用する洋食では当然立ち位置は変わってきます。飲食店のサイズ、厨房内の料理人の数によっても異なります。つまり厨房のレイアウトとは、お店毎に違って当たり前、そもそも料理が変わればレイアウトも変わらなければならないのです。
このチャプターでは2つの質問に答えることで、漠然とした厨房レイアウトに対するイメージがより具体的になったのではないでしょうか。このことを踏まえて良い厨房はどのような形なのか次のチャプターで検証します。
カウンターについては次でもご紹介しています。
万歩計でいったい何歩厨房内を移動したか測定
良い厨房を造るヒントはこの万歩計の数字に隠されています。
例えば、同じ席数で同じ料理を出すお店が2軒並んでいたとします。仮にA店の厨房では一日に3,000歩、B店では2,000歩移動したとします。
その差はたった1,000歩と思いましたか?それとも1,000歩もと感じましたか?
1日で1,000歩なら大したことがありません。しかし1年で見ればどうでしょうか、月に25日の営業日なら年間300日となり、これに1,000歩を掛け合わせると、30万歩にもなります。
ここで前提条件に立ち帰ってみましょう。同じ席数と同じ料理を出しているのに年間30万歩もの無駄な時間が生まれていることになります。
この無駄はどの様な形で表れるでしょうか。まず思いつくのが、調理時間です。歩く距離が長い分調理時間が長くなります。同じ営業時間内で作ることが出来る料理の数が違ってきます。つまり売上に直結しているということなのです。
ではつぎにどこから手を付けて行けばいいのか整理したいと思います。
主力メニューから考えるレイアウト
主力メニューとは、利益率が高く人気のある商品と定義します。
俗にいう看板メニューということです。更に、二番人気、三番人気の料理を厨房のどの場所で作るかが決め手となります。
人気メニューですから数が出ます。手の届く範囲に食材を置けば移動しなくて済みますが、逆にレイアウトが悪ければ無駄な移動が増えます。
火にかける時やレンジを使う時、仕込み料理を取り出す時など最小限の歩数で手が届けば、複数の料理を一度に裁くことが可能となります。
究極はバスケットボールのピポットプレーのように、軸足で回転すれば全てに手が届くレイアウトですが、なかなかそうはいきません。
もしこれから居抜きで店舗を検討するのであれば、実際に厨房に立ってみてシミュレーションされることをお薦めします。工事をする前のスケルトン状態であっても、レイアウトが作成した後、厨房区画の床にカラーテープを貼り動線を確認することが可能です。
工事に入る前に是非検証してください。
大手飲食店の厨房レイアウトはなぜ社外秘のなか?
大手居酒屋チェーンはオリジナルの厨房機器とオリジナルのサイズのシンクやらスチール台を必ず入れてきます。撤退されるときでも居抜きで売却したり残置することは一切ありません。なぜなら永年オペレーションを積み重ねて得たノウハウが詰まっているからなのです。最小限の人数で料理を作り、最短で提供するうえで必要なレイアウトと各器具のサイズなのです。
厨房レイアウトが飲食店の繁盛を左右する
居抜き物件でも水回りや、コンロ・ダクトを思い切って動かす方も少なくありません。狭い厨房内なら、ガスや給水の盛替えなど、さして金額的は高くないからです。
その理由は、居抜き、スケルトンにかかわらず、厨房で自慢の料理が満足に作れなければお客様が来ないことをよくご存じだからです。
客席やお店のファサート(外装)にかけるお金を少し節約して、厨房レイアウト にお金をかけることをお薦めします。
きっとランチ時や夜の込み合う時間帯でもお客様を待たせることなく人気料理が提供できことでしょう。ロスの少ない厨房レイアウトは確実に利益が出るといっても過言ではありません。