長らくオフィスビルやマンションの入り口付近に設置されていたタバコスタンド。
昔は今のようなステンレス製のボックスタイプに水を張ったものではなく、すこし深さのあるお盆のようなものに白い大理石を砕いた砂が入れてあるものが主流でした。
1970年代のハリウッド映画に登場するこのたばこスタンド、そのまま日本に持ち込まれ、エントランスに高級感を出すための装飾品の一部となっていました。最近ではそのほとんどが撤去され、見かけることも無くなりました。
それとは逆にコンビニエンスストアの入り口付近には今でもたばこスタンドが設置されているお店を多く見かけます。
なかにはこのタバコスタンドを囲んでタバコを吸っている人を見かけますが、コンビニ側としては店内にタバコを吸いながら入ってこられることを防止するためのもので、決して喫煙所を設けているのではないとの話です。
喫煙率が年々下がり続ける中このタバコスタンドはどの様な役割を担うのでしょうか。
また新たにタバコスタンドをめぐるトラブルなど飲食店の禁煙との関係を今回は考えてみたいと思います。
飲食店の禁煙対策は必要か
大手チェーン店のなかで串カツやハンバーガー店は早々と全面禁煙を決め、運用を開始しています。2019年に入り大手ファミリーレストランも2020年を目途に全面禁煙に切り替えると発表しています。これまで分煙をしていたコーナーもすべて無くし代わりに授乳室やオムツの取り換えが出来るコーナーへと作り変えて行くとしています。この流れを作ったのが受動喫煙防止法であることは間違いないのですが、なかでも決定的な一文が盛り込まれているからなのです。
「未成年が利用する可能性のある店舗は原則禁煙」
これは30㎡未満の飲食店に対し、受動喫煙の可能性がある表示と換気設備を備えるのであれば店内の喫煙を可能としたことに対する但し書きであったのですが、広く解釈すれば面積要件によらず未成年が利用する飲食店はすべて喫煙不可とも読めるからなのです。この法案を推し進める厚生労働省も各条文の相関関係など解釈に細かな解説はしないと思います。従て飲食店側として本格運用時に急きょ解釈変わったりしては対応が追いつかなくなる可能性があります。大手としてはそんなコンプライアンス違反と言われるような芽は早めに摘んでおきたいと考えるのが自然です。
一方で、しかるべき分煙設備を持つ飲食店の5年の延命措置も同時に用意されています。悩ましいところです。
タバコスタンドを飲食店前に出すと禁煙店になる?
店内喫煙の飲食店でアルコールを出す飲食店がもし30㎡以上の床面積だとすると喫煙室などの分煙室を設置する必要が出てきます。そこで飲食店は全面禁煙とうたいつつも、屋外のどこかにタバコスタンドを置き喫煙させるということを考えるでしょう。とはいっても、建物の共用部分などは管理規約に縛られ設置は不可となるでしょう。テラス席を持っている飲食店であればそこを利用するという手はあります。ただ、天候や季節により利用困難な場合も出てきますのでこちらも問題解決とはいきません。また、飲食店に設置されているオーニングなど道路に突き出した庇の下で喫煙させるのも、千代田区の様に罰金を取られる危険性もありますのでおススメできません。
このように絞り込んでくると、1.共用部以外で、2.雨風をしのげる場所で、3.私有地内という条件を満たす場所を見つけるしかないのです。さもなければ分煙室を作る以外方法はありません。
飲食店のタバコスタンドで苦情が
冒頭で御紹介した串カツ店が新しくオープンしたのにあわせてお邪魔することにしました。入口のガラスにある紙が貼ってあるのに気づきました。お店の前でタバコを吸わないでください。本当にお願いします。と言った内容のものです。どうやら、来店されたお客様が、店内全面禁煙ということで店外に出られて喫煙をされることに対する注意書きのようです。察するに近隣や店前を通る方からのクレームが相次いだことへの対策のようです。
同様に全面禁煙ではない飲食店がオープンした翌日に管理会社からクレームが来たことがあります。一体どういうことかと調査したところ意外な理由が分かってきました。人気店のオープンで入店を目指してこられたお客様が、店内に入りきれずに外で待っていたそうです。その際に喫煙された吸殻が散乱したことがクレームになったようです。早速翌日からタバコスタンドを店外に出し吸殻はタバコスタンドに捨てるよう張り紙をして頂き一件落着となりました。
都内に住んでいますとこの受動喫煙防止法に関する取り組みに対する悩みを相談されます。この発端が2020年に行われる東京オリンピック・パラリンピックと深い関係にあるのは周知のとおりです。オリンピックを主催する国際オリンピック委員会いわゆるIOCはWHO世界保健機構と組み健康増進の為にオリンピック開催地の屋内全面禁煙を強要しています。ここ数年で飲食店や公共の場所での完全禁煙は先進国の世界基準となりつつあります。そのようななかで現在の日本における受動喫煙の状態をWHOは「世界最低レベル」と指摘するほど残念な状態です。
今後この受動喫煙防止法に違反した喫煙者で指導にも従わない場合は30万円以下の過料、違反者が施設管理者である場合は50万以下の過料を科すというはなしになっています。あくまでも指導つまり喫煙をやめるよう指導したにも拘わらず従わなかった悪質な喫煙者や施設管理者に対してということですが、数ある飲食店でそこまで厳格に運用はしないだろうと考えていると、近隣から思わぬクレームになり通報されかねないとも限りません。今から喫煙場所、分煙方法、換気対策など何ができるのか考えておいて間違いはないでしょう。