首都圏では2018年に台風24号の直撃をうけ公共交通機関がほぼ全線にわたりマヒしました。また、2019年10月の台風19号は、過去最大級勢力で上陸し西日本から東北にかけて甚大な被害を与えたことは記憶に新しいことでしょう。
豪雨や台風の風はテレビのなかだけのものではなく明日は現実となる可能性が高まっています。例えば、日本のビジネス街を代表する大手町、丸の内。何年も前にゲリラ豪雨による一部の浸水被害によりあることが懸念され始めました。1時間に100ミリの豪雨が降ると皇居のお堀は溢れ、大手町周辺の排水機能は追いつかなくなり大手町、丸の内は水浸しになり機能を失うというのです。事実、急ピッチで排水機能アップの計画と工事が進行しています。
飲食店は、一般住宅やマンションとは違い個人経営であっても事業所として扱われます。これから本格的な台風や大雨のシーズンに入る前に事業所としてどのような保険対策をしておくべきか考えます。
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台風でも水害でも基本は火災保険に加入すべし
これからお話しする保険のおおもとは火災保険です。日本の保険の特徴でもあるのですが、火災保険に目的に合わせたオプションを組み合わせてゆき様々なリスクに対応するというのが今回の保険です。もう一度言いますが、火災と名がついている保険ですが、台風、豪雨など自然災害に起因する洪水や高潮等の被害はすべて補償対象となります。ただし、同じ水害でも人災による水漏れは対象外となります。(それはそれで別の保険がカバーしてくれます。)
飲食店の保険は大きく2つのタイプがある
飲食店が台風や水害を想定した保険は2つのタイプがあります。
- 自分が被災した場合に補償してくれる保険(財物損害)
- 台風や水害で第三者に迷惑をかけた場合の保険(賠償責任)
財物損害保険
飲食店舗で台風の風により壁に取り付けてあった看板が飛ばされてしまった、店先に置いてあった置き看板が風で倒れて破損したといったものから、逆に飛ばされてきた物体(隣の屋根とか看板等)によりお店の窓が割れたり外壁の一部が破損したなども補償してくれます。都内でも以前は目黒川や神田川が増水して溢れ飲食店に浸水する事態が発生していましたがそのような場合でも補償が受けられます。
住宅保険の場合でそういった水害に対し火災保険の補償額の70%を上限にした内容の保険がありますが、事業用で開発されているタイプの火災保険は100%補償してくれるタイプが出ています。よく比較なさってください。
賠償責任保険
土地、建物を所有されている飲食店の場合ですと降りかかる災害の補償も心配ですが、ご自身の建物や看板が飛ばされたり落下したことで通行人や隣地の方など第三者に損害を与えてしまった場合の補償も気になるところです。
これは別のオプションをつけないと補償がおりません。そのオプションとなる保険とは、「賠償責任等補償特約」(以下賠償特約)といいます。この特約を付けるメリットは他にもあります。先程自然災害以外の人災による水害は補償されないと言いましたが、この賠償特約を火災保険にオプションとして付けておけば、漏水補償がついてきますので人災による水害も補償されます。(誤って水を直下階に流してしまった場合等)
台風、水害以外で飲食店に必要なオプションはまだある
水害に遭遇し店内が水浸しになった結果、店内の厨房機器や店内の什器備品などを廃棄処分しなければならない場合があります。そのような場合は財物損害補償により廃棄代は補償されます。但し新品を購入する金額までは出ないのでお気を付けください。
休業損害補償
飲食店が一時的に休業しなければならなくなったとしましょう。そのような時に備えて「休業損害補償」というオプションがあります。これは飲食店の売上の補償、補てんではなく、お店を継続する為に必要な費用を支払ってくれます。例えば、復旧までの期間を別の場所で仮店舗を出した際の費用や営業再開後の広告宣伝費用などを補てんしてくれます。
借家人賠償責任特約
飲食店を借家で経営している場合など自分の過失により火を出してしまった際に建物所有者に対し補償をしてくれる「借家人賠償責任特約」なども必要です。そもそもの一般的な火災保険とは、自分の財産に限り補償するもので第三者の財産まで補償してくれません。大家さんに迷惑をかけない為にも必ず入っておきたいオプションです。
生産物補償(食中毒)
食中毒に対するオプションもあります。保険用語的には「生産物補償」となります。この保険は唯一食中毒かどうか疑わしい段階でも補償をしてくれます。食中毒は、御見舞金や病院の補償など一度に大勢の人が罹患することもあり早い対応が求められるからです。それ以外でも飲食店では対応の遅さがお店の存亡を左右しかねません。風評被害等がそれです。
実際に訴訟に発展する際でも裁判費用まで見てくれます。飲食店である以上一番リスクの高いところです起こしてしまってから後悔するのではなくて事前に担保しておきましょう。
~まとめ~飲食店が大型化する台風や水害に備える保険
飲食店などの事業所に拘わる保険は、一般の住宅保険などと違い、建物の構造、広さ、そして支払補償額によって掛金が異なります。元々が火災保険ですのでコンクリート造より木造の方が高くなります。営業面積が広くなればその分高くなります。当然支払補償金額が高額になればなるほど掛金も上がります。またオプションが増えればその分掛金も高くなってゆきますが、今回紹介した保険は年間にすれば10万円近いものですが月々にすれば数千円程度です。ことが起こってから後悔しないように別のところを少々切り詰めてでも検討されることをお薦めします。