飲食店 実例が語る 繁盛する立地の選び方

はじめに

飲食店を開業する際、開業コンサルタントに頼られる方がいらっしゃいます。彼らコンサルタントは飲食店の立地選びで必ず同じことを言います。

「飲食店は 立地 が7割」だと。

ただ、何をもって何の7割なのかハッキリしません。ある方はこういいます。何を差し置いても飲食店は 立地が最優先なのだから開店準備の時間のうち7割は店舗物件探しに時間をかけろということだと。

またある方はこうです。お店が 繁盛 する要因はいくつかある。料理人の腕、宣伝の仕方、お店のネーミング、価格とボリュームのバランス、そして 立地 。それらすべての要因のなかで繁盛するための要因として飲食店舗の 立地 が7割もの比重を占めるのだと。

果たしてそうでしょうか?逆の言い方をすれば、料理が不味くても、価格とボリュームのバランスがとれてなくても 立地 さえ良ければ10軒に7軒は 繁盛 すると言っているに等しいのです。どうです違和感がありませんか?

今回は、実例をみながら飲食店が繁盛する立地 について考えたいと思います。

飲食店の立地と賃料の関係について検証します。

まず、「人通りの多い場所は賃料が高い」これ世界の常識です。では高い賃料を払えば 繁盛するのかが最初の検証課題です。

ケース1:人通りが絶えない商店街沿いの飲食店Aとその通りから少し脇に入った飲食店Bの比較

双方の飲食店とも10坪で15席の中華料理店だとしましょう。月の売上も同じで100万円だと仮定します。月の稼働日を25日だとすると、一日当たりの売上が40,000円、ラーメン1杯800円だと50人のお客様が来られる計算になります。

A店の月額賃料・・・30万円

B店の月額賃料・・・20万円

売上100万円からそれぞれ賃料を除くと、A店70万円、B店80万円。この中から食材費と人件費を捻出することになります。

因みに、飲食店舗の売上高に占める食材(Food)と人件費(Labor)の比率を一般的にFLコストと呼び、概ね55%~65%に抑えることが望ましいとされています。

今回の2店舗の場合、売上100万円に対してFLコスト割合をかりに60%とすると、60万円が適正値となります。それぞれ売上から賃料を除いた額から60万円を引くと、

A店 = 10万円

B店 = 20万円

が手元に残る計算になります。

ところが、飲食店ではゴミの廃棄費やリース物品の支払い、飲食店舗を始める際に借り入れたお金の返済があります。これらが仮に月々5万円~8万円あったとするとA店の場合手元にお金がほとんど残らないことになります。

この例では、二つの店舗の距離はぜいぜい数メートルから20メートルぐらいしか離れていない想定をしております。なのに経営環境は立地と賃料で激変します。

飲食店 短期間で店が入れ替わる好立地のワナ

ケース2:若者に人気の駅前に飲食店を開業したA店と同じ駅で、徒歩5分ほど離れた静かな立地に飲食店を開業したB店

A店は若い女性やカップルの人通りが絶えない好立地に飲食店を構えることとし、通りから飲食店舗の中が良く見えるようオープンな造りにしています。また、メニューも価格を抑えて来店するお客様の数で売り上げをあげようと事業計画を作りました。

一方B店は、人気の駅で若者狙いではなく、客単価の高い客層にターゲットを絞り、しっかりとしたお店の顔作りをして、知らないとチョット入りづらくしたのです。その分、グルメサイトや情報雑誌に積極的にお金を使い宣伝を行いました。さて結果はどうなったでしょうか?

結果、A店では想定外の事態が起こったのです。狙い通り飲食店は若者で溢れ一見 繁盛 しているように見えるのですが、ソフトドリンクとちょっとした料理で1時間から2時間話し込むお客様ばかりで、お客様の回転率が想定より低く目標の売上に届かない事態となったのです。これでは、高い賃料負担に耐えられません。

B店は、予約を中心に客単価の高いお客様をお迎えする飲食店舗。立地としては、少し昔風に言う隠れ家的お店。賃料が安い分良い食材をふんだんに使えます。また、予約を積極的にとることで食材の廃棄率を抑える工夫もしています。人気の駅を利用するとあって結婚式の二次会などの貸し切りも多く土曜日や日曜日でも稼働できるほどの 繁盛 店となっています。

この例示では、自由が丘や下北沢などの駅を思い浮かべてもらえると分かりやすいかもしれません。好立地が飲食店の繁盛に絶対的要因ではないことに気づいていただけたでしょうか。

ナショナルチェーンが考える 繁盛する立地とは

都内ではどの駅で降りても同じ風景を見るようになりました。それは郊外でも同じです。コンビニ、牛丼店、カレーにラーメン、居酒屋に焼き鳥店等々 どこでも同じ看板を目にします。

上場をしている会社は、毎年売上と店舗数を拡大して行くことが株価に反映されます。一定の昇降客数がある駅前はすべからく出店となります。さらには株価が下がらないようにと全国の株主に優待券を配る関係で、日本中に出店を続けています。これだけチェーンの飲食店舗が増えてくると意外な出店基準がみえてきます。

ひと昔前まで、候補地の通行料調査を一週間の内何日か時間帯を変えて調査したり、後背地といって周辺に住んでいる住人の数や企業の就業人数なども詳細に調べ上げ検討していたものです。最近は、先行出店している飲食チェーン店が行う調査方法を知ったうえで、客単価が近い飲食店の近くに出店するいわゆるコバンザメ商法といわれる出店方法を取るようになってきています。

その理由に、店舗の出店検討に時間をかけると他社に物件を取られてしまうため検討時間を短くするための苦肉の策ともいわれています。特定の飲食チェーン店のそばに出店すると売り上げがいくら確保できるといったデータを掴んだことで全国一斉にその立地を押さえる会社まで存在します。例えば、ラーメン1杯390円、またチョイ呑みブームを巻き起こした日高屋などは、マクドナルドと吉野家に挟まれた場所に店を出すことで有名です。

あるつけ麺の飲食チェーン店は、人気のあるラーメン店の近くに出店すると公言しています。なんでも人気のラーメン店を目当てに来たお客さんのうち、並ぶことを諦めた人が来店してくれるのだそうです。そもそもラーメンとつけ麺は別の食べ物だから同じに扱わないでくれというお話もされていました。そんな風に眺めてみると見慣れた街も面白く見えてくるから不思議です。

土日は人が歩いていない立地は繁盛しない?

ビジネス街といえば、虎ノ門や神田、新橋などがポピュラーです。

ウイークデイのランチは、さばききれない程のお客様が押し寄せ、夜は夜で早い時間からお客様がいらっしゃいます。3月や9月の歓送迎会のシーズンや年末年始は団体客の予約が連日入ります。そこを見込んで出店を考える方は多くいらっしゃいます。一方で通りから一本入っていても賃料はあまり安くならない、土日は人がいないので月の稼働日は20日間となってしまい賃料に見合う売り上げが見込めないとい仰る方もいらっしゃいます。

このエリアの飲食店で繁盛されているお店は異口同音にこうお話をされます。周辺に土日営業しているお店がないから週末は結構お客様は来るというのです。そこには都心ならではの理由があったのです。

これまでビジネス街は地上げとともに居住者が立退き、オフィスビルが建つというのが相場でした。このところ都心ではタワーマンションが人気で今までオフィスビルが建つような場所に40階ものタワーマンションが建ち居住者が増えているのです。このビジネス街に住むタワーマンションの居住者にはある共通点があると言います。彼らは出不精で宅配ピザや宅配寿司にお弁当、ついでにお酒までも注文するほどケータリングをこよなく好むというのです。ここに気づいた飲食店は、土日はケータリングに特化することで通常のメニューよりも高く値段設定をしています。また、ケータリングが美味しいとなれば実店舗にも足を延ばしてくれるようです。

以前マグロの初競りで名前を馳せた外資系寿司チェーンが、ある年の末に港区でお寿司のケータリングを始めたところ受けきれない程の注文が舞い込んで嬉しい悲鳴をあげたお話を伺ったことがあります。また、ケータリング専門のイタリアンを始められたシェフからは、ケータリングであってもカード決済ができるようにすることがリピーター作りのコツとのお話もありました。

次々と閉店している飲食店には6つの法則がある

飲食店舗の繁盛と立地以外の理由

チョット前になりますが、お店の外見を錆びたトタン板などを使いわざと古びて見せる店作りがはやったことがありました。結構あちらこちらに出来たのですが、既に淘汰が進み消えていった飲食店も数々あります。さて、 繁盛する飲食店とそうでない飲食店の間に何が存在するのでしょうか?これまでのチェーン店のように、どこにでもある料理をともかく安く出すという時代から例え一品でも他にはない自慢の味を出す専門店が好まれる時代になっています。

ここをどのようにお客様に伝えるのか、それはネーミングであったり見た目であるかもしれません。飲食店の繁盛か否かを左右するのは、 立地以前にこの表現方法を考えた方ではないかと思うのです。今回は、実例のなかから分かりやすい題材を参考にして飲食店の繁盛と立地について考えてきましたが、冒頭に書きました「飲食店は 立地が7割」というのは飲食店の経営において、メニューや宣伝などソフトの部分を考えもせず、立地というハードの部分に責任転嫁しているとしか思えません。

なぜ5坪の飲食店が繁盛するのか

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