不動産免許をお持ちの宅建業者さんのなかに「テナント付き物件」の件でと連絡を頂くことがあります。最初は何のことかと思いましたが、賃貸の店舗物件のことを指した言葉でした。
このテナント付き物件のことで問い合わせて来られる不動産会社の方々にある共通点があるこに気づきます。マンションやアパート、一戸建ての賃貸借や売買に関する経験や知識は豊富なのですが、店舗物件の取り扱いとなるとあまりやったことがないので正直言って面倒だというものです。
今回は、店舗の賃貸借としてのテナント付き物件の扱い方をお客様(現在の賃借人=解約を希望している方及びこれから飲食店舗を借りたいと探されている方)の立場に立って、ここまで不動産会社でやってくれたら有難いという部分を説明したいと思います。
是非参考になさってください。
Contents
飲食店舗物件マニュアル:設備編
不動産の営業に欠かせないものは、住所、面積、賃貸条件ですが、マンションや一戸建など住むという同じ目的と違い、飲食店舗では借りる方それぞれの目的が異なっています。
中華なのかお蕎麦屋さんなのか、始めたい業種により探すべき目的物が異なることをまず理解してください。
きっと理解していると自負している不動産業者さんばかりだと思います。以下の問いではどうでしょうか?
テナントにとって重要な設備を理解しているか
中華料理店を始めるのに重要な設備はなにかお分かりですか?お蕎麦屋さんを始める為に重要な設備はなにかお分かりですか?
答えはこうです。中華料理店を始めるにあたり一番重要なものといえば「火力=ガス容量」です。つまり店舗に引き込まれているガスは何号かご存知ですかということです。
同様にお蕎麦屋さんは水を大量に使用します。お店に引き込まれている水道管の流量は把握していますかということになります。
予めこれらを調べることが、お客様にとって一番知りたい情報となります。検討する時間の節約になります。
この部分はあとの「内見編」で詳しくお話しますが、飲食店舗を扱うのであれば少なくともこの2点はおさえておきましょう。とは言えどこを見ればわかるのかというご意見もあろうかと思います。
ガスメーターのサイズが分からない場合は東京ガスに聞けば教えてくれますし、水の流量は水道メーターを納めるメーターボックスの蓋に大きく書いてあります。
もう一つよく聞かれる質問では排気ダクトの有無です。「屋上まで上がっているのか」、「壁から直接噴き出しているだけなのか」つまり現地を見ればすぐに分かることなので事前に現地へ赴き調べておきましょう。
飲食店舗物件マニュアル:業種制限
住宅系物件を扱われる方と一緒にお仕事をして一番残念に思うことが業種制限をハッキリ把握されていないことです。
最初に大家さんと打ち合わせをしていないが為にお客様が焼肉店を開きたい、カレー店を開きたいと書面で賃貸借の申込をしたにもかかわらず、待たされた挙句に「その業種はお断りします」という返事が返ってくる羽目になります。
お借りしたいと申込んだ方、その情報を取り扱った不動産業者、もっと言えばその情報を大家さんから委託された不動産業者すべてが無駄な時間を浪費することになるからです。これは先程の設備も同様の事が言えます。
大家さんと最初に重飲食(中華、焼肉、カレー等)はお断りをしましょうと決めていて、設備容量が最初から分かっていれば、電話で問い合わせた時点で検討案件にならないことがわかった訳です。
テナントの業種制限はするべきか?
もっとも、最初から細かく制限をし過ぎると逆に検討をされるお客様が少なくなり空室期間が長くなるリスクもあります。本当にお断りしたい内容、例えば臭いや煙などが強い業種など明記し、対策を講じるなど設備等で対応できる場合であれば「応相談」と表記すべきなのです。
大家さん側にも一つアドバイスがあります。最近NG業種を別の呼び名で申し込んでこられる方がいらっしゃいます。そのせいで入居後にトラブルになると言うものです。
例えば、カレーはお断りと言っている物件にエスニック料理をやりますとかアジアン料理をやりますと申込んでこられます。実は名前は異なれどもカレー店そのものという場合がほとんどです。疑わしきは、必ず予定しているメニューを申込書と同時に提出してもらいましょう。
飲食店舗物件マニュアル:物件内覧編
募集を開始すると実際に物件を見たいと言うお客様が現れます。
たまにしか来られないと言うのであればいくらでも対応は出来ますが、募集した物件の立地がよかったり、賃料にお値打ち感があるようだと何件も見せて欲しいとアポイントの電話が入ることがあります。
この場合お客様の都合に合わせていると他の仕事が出来なくなるばかりか、仕事の手を休めて対応してくれる現賃借人さんにも迷惑が掛かります。
営業中の居抜き店舗での内覧アイディア
解決策としては、日にちと時間を決めて一斉に見て頂く段取りにしましょう。これには別の効果があります。他の検討客がいることで競争原理が働き複数の申込が入りやすくなります。他の見学者を見て、いい物件なんだと自信を持つこととなり、オークションの様に競ってでも自分が勝ちたいと思う心理です。
飲食店舗物件マニュアル:契約編
ご自身が住宅系の不動産しか扱わない為、飲食店舗物件なのに住宅用の賃貸借契約書を強引に使う業者さんがおられます。これはなにかトラブルになった時に皆さんに迷惑が掛かります。ここでは必ず押さえておきたいポイントを4つご紹介します。
- 解約時の引き渡し状態の規程
- 営業業種と営業時間の規程
- ゴミ扱いの規程
- 保険の指定
最低でもこの4つを決めて契約書に盛り込んでおかないと深刻なトラブルになる可能性があります。
解約時の引き渡し状態の規程
最初からお店を辞める時の話かと怒られそうですが、これが決まってないので借りた方も貸した方も不満が残る結果となります。床、壁、天井を残しすべて撤去なのか、状態が良ければ居抜きでも良いのか必ず契約書に書いておかないと解約精算時に必ずトラブルとなります。
営業業種と営業時間の規定
もし、当初約束した業種で上手くいかないのでと突然NG業種(最初に断っていた重飲食や風俗系店舗)を始めても争いになるだけです。営業時間の規程がないばかりに近隣からクレームになり責められるのは大家さんとなりかねません。すぐに解決しづらい問題となり最悪裁判に発展します。お金と時間を節約するためにも規定しておきましょう。
ゴミの扱いの規定
ここも勝手にゴミを出さしてしまうとカラスの餌食となり近隣からクレームになります。必ず引き取り業者と契約することを条件とするか、ゴミ出し方法を事細かに規定して契約書に書き加えましょう。
保険の指定
一番お金に関わることなのにほとんどの契約書で抜け落ちている部分です。
火災保険は借家人の財産しか保証しません。大家さんが加入すればよいと言うものではなく、借家人に大家さんの財産を火災、爆発から守り、第三者までも補償する保険に入って頂くべきです。
その保険とは「借家人賠償責任保険」です。通常の火災保険に特約を付けるのですが、補償金額如何では全焼した店舗を建て直すことも可能です。必ずこの保険と加入補償金額をきめておき入居前に必ず加入させるようにしましょう。
~まとめ~
最後に、飲食店舗はトラブルが多いと思い込んでいる業界の方が多くおられます。
それはまったくの勘違いで、最初に予想されるトラブルの対応について貸す側、借りる側、それを仲介する不動産会社がよく打合せをしていないからにほかなりません。
つまり事が起こってから協議しますから利害関係が絡みもめるのです。これが最初に対処の仕方が決まっていて明文化されていればまずトラブルにはなりません。今回の店サポの記事を入口に一歩踏み込んだ契約の作成をお薦めします。
まとめ:不動産業者さん向け テナント付き物件 の取扱方法
いかがでしたか「不動産業者さん向け テナント付き物件 の取扱方法」
マンションはオフィスなど空間を貸すのではなく、付随する設備(造作)や業種によって取扱対応がさまざまです。
ここは割り切って テナント付き物件として居抜き店舗の取引が発生したら
専門業者に相談した方が手っ取り早くそしてオーナーさんも喜ばれることでしょうね。