「ニッパチ」と呼ばれ売上が上がらない2月と8月。Web上では2月は該当するものの8月は逆に売上が伸びているとする内容の記事も存在します。
サンプリングする飲食店舗をどこに取るのかにより数字は変わりまが、都内のビジネス街と渋谷や新宿など夏休みやお盆休みを利用して地方から人が繰り出す街とでは同じ8月でもかなりの開きがあるのは当然です。
今回は、一般社団法人日本フードサービス協会が出している飲食業界全体のデータを参考にしながら、都内のビジネス街でランチや夜の営業を営んでいる飲食店を中心にタイトルについて考えて見たいと思います。
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データからみる傾向
2023年5月に同協会から発表されたデータに、過去1年間、月ごとに対前年売上高の伸び率を示したものがあります。
コロナの影響もあってか前年対比では各月とも100%を上回り景気が戻っていることがうかがえます。しかしながら店舗数を業態ごとにみるとすべての月で対前年度同月でマイナスとなっています。
なかでもパブレストラン・居酒屋の分類で落ち込みが著しく対前年同月に比べ1割近く店舗数を減らしており厳しさがうかがえます。次に落ち込んでいるのがディナーレストランの業態で、マイナス4%程です。
このデータを見る限りでは、コロナの影響が強かった昨年8月に比べアルコール類を提供する「目的型」のお店は軒並み4倍以上の伸びを見せたのに対し、ファーストフードや喫茶といったカフェ業態などスペースを提供する「空間提供型」の業種にも人が集まっているようです。
8月に売上が落ち込む5つの理由
1.営業日の減少
週1日の定休日がある飲食店の月の営業日数は25日前後です。今年の8月でお盆休みのシミュレーションをしてみましょう。
企業のなかで一斉休暇をとるところは土日を入れて5連休というところがほとんどです。2023年は11日の金曜日が山の日となりますので5~6連休が一般的だと予想できます。その内本来の定休日が含まれていたとすれば、4~5営業日のマイナスです。仮に1日の売上が10万円だったとすると月額で40~50万円のマイナスです。
つまり通常月に比べ2割も売上が減る計算です。
2.お盆休み前は忙しい
営業会社の8月は月の締めが2回あると言われています。お盆前と通常の月末です。通常の月と違い長期の休みを挟む為、納品には気を遣うそうです。もし発注頂いても休みを挟むような対応になるとキャンセルされてしまうからだそうです。
だからこそ、得意先に休みを周知しお盆休み前に受注や手配を終えてしまわなければなりません。彼らにしてみれば、営業日が少なくなる分を8月初旬の10日間ほどで半月分の業務をこなさなければなりません。当然業務を終わらせることで精一杯で、仕事上がりに一杯の余裕はありません。
結果8月の前半は通常よりも客足が減ることとなります。
3.一斉にお盆休みを取らない会社が増えている
リモートワークの普及、サービスの多様化に伴い一斉休暇をとる企業が減っています。よく聞くのが7月、8月のなかで5日間程夏季休暇として休暇をとるというものです。
8月の中旬に集中する傾向にあった夏季休暇は最近分散型になりつつあります。これによりいつも飲みにゆくメンバーがそろわない期間が生まれ夜はもとより、ランチもお弁当で済ませようといった行動が生まれます。
一方、15日前後で出社されている皆さんにとっては、いつもに比べ閑散とした街を感じることでしょう。通常よりも電話やメールも減り、前半頑張った分仕事も遅くまでかかりません。当然定時で退社となります。
そうなればたまには違うメンバーでランチや夜お酒を飲みに行ってみるかと考えるいい機会でもあります。ところが、管理職や上司の方が以前に比べ若い方を誘わなくなったことでこちらも飲食店の売上に貢献しません。
4.お盆明けの倹約ムード
お盆と言えば、帰省や旅行などまとまった休みを利用して予定を組まれる方が普通です。地方から働きに出てきている皆さんはその移動にかかる飛行機や新幹線代で相当な負担を強いられます。
それが家族で移動となれば往復で10万円以上かかってしまいます。可処分所得の高いOLや独身男性でもこの頃の旅行費はトップシーズンで相当な出費となります。
もうお分かりだと思いますが、お盆の休暇を利用してどこかに出かけたとするとその出費が休み明けの8月後半の支出に大きく影響してきます。つまりサイフの紐が固くなり飲んだリ食べたりと言った外食を利用する機会が減るのも当然です。
5.コト消費優勢の飲食業界
このところの喫茶ブームは、他の飲食業態に比べ原価を安く抑えられるので利益を出しやすいと言われています。その分売上に対する賃料負担率を高く取れる為、出店競争でも好立地が押さえられやすいと考えられていました。
意外にも8月苦戦するファミリーレストランが囲い込めなかった潜在需要を取り込んだことが大きかったのです。
お盆明けの倹約ムードで敬遠されるファミリーレストランはスターバックスコーヒーなどが提唱する「第三の場所」となりえなかったということです。この第三の場所という考え方は、「家、職場以外の場所」という意味です。
学生さんにとっては職場は学校ということになります。ゆっくりと話をしたり、周りに気兼ねせず本を読んだり、集中して勉強をしたりまさに生活の中でもう一つの居場所を提供したことで人気が出ています。
ファミリーレストランやお酒を出す飲食店、フレンチやイタリアンなど従来の飲食店が食事やお酒を提供することがメインの目的型店舗であるのに対し、第三の場所を提供する喫茶系の飲食店舗は場所が主体であり副次的に飲み物や食べ物を出す空間提供型店舗と定義できます。
これまで、しかたなく目的型店舗を利用していた人たちが空間提供型店舗に流れているのです。
以前8月や5月など長期の休みに入るタイミングで、親子での料理教室や牛の乳しぼり体験ツアーを企画している飲食店をご紹介したことがありました。
今回の様に飲食を目的としない需要がハッキリとしてきたタイミングで、今年の8月にでもできるコト消費をミックスした企画を考えて見てはどうでしょうか。日本のお盆を伝える風習でもある精進馬、精進牛などをキュウリやナスで作る企画は食べ物と併せて想い出に残ることでしょう。
飲食以外のなにかと本来のお店の業態を組み合わせることがお客様を繋ぎとめる秘訣だと思います。