令和4年10月1日に社会保険に関する法改正がありました。これまでアルバイトやパートが加入できなかった厚生年金保険や健康保険などいわゆる社会保険への加入基準が緩和されています。逆に主婦や学生など場合によってはデメリットとなるケースもあるようです。今回の改正によって何が変わったのか改めて確認をしたいと思います。
Contents
今改正の背景
大きく言うと労働構造の変化がもたらした保険料不足を補う為といえます。
そもそも就業人口は1998年の6793万人をピークに減り続けています。2016年12月で6466万人と5%程減少しています。
この傾向は今後も続き2060年には3790万人との予想もあり、ピーク時からすると半分近くに減ることとなります。問題はこれにとどまりません。
更に大きな問題として取りざたされているのがその就業形態の問題です。正社員と呼ばれる働き方と非正社員と呼ばれる働き方に大きく分けるとすると、現在非正社員の就業人口が2000万人を超えてきているます。
つまり現在でも約3割の方がアルバイトやパートなどの非正社員という働き方を選択しているのです。このまま非正社員の割合が増え、且つ労働人口も減り続けるとしたら、現在の年金が破たんしてしまう可能性が大きいのです。国は社会保険に加入する労働力と保険料を増やそうと度々の改正に続き令和4年10月の改正となったのです。
「年金」と「保険」の関係を復習
日本では2種類ある年金と保険のグループどちらかに所属しなければなりません。その一つが「国民年金」と「国民健康保険」のグループ(国民グループ)で、もう一つが「厚生年金」と呼ばれる「健康保険」グループです。(社保グループ)
さてどのような方がどのタイミングで加入するのでしょうか。
まず、扶養家族かそうでないかの観点で考えます。扶養家族であれば、扶養をしてくれている世帯主の保険に入っています。大学生や主婦などは世帯主が会社勤めの場合がほとんどでしょうから社会保険に加入していることになります。
但し20歳になった時から国民年金に加入する義務が生じます。主婦もある一定金額を越えなければご主人の保険と年金に属することになります。
扶養家族でなく世帯主であるならスタートは国民年金と国民健康保険です。これが社会保険完備の企業に就職したり、いわゆる「社保完備」のアルバイト先やパート先に勤め始めると国民年金は厚生年金へと、国民健康保険は健康保険へと変わります。
改正前の社会保険加入条件はこちら
平成29年10月改正の加入義務は以下の通りで
・1日または1週間の労働時間および1ヶ月の所定労働日数が正社員の4分の3以上の人
・勤務期間1年以上の見込
・従業員501名以上の事業所
・週所定労働時間20時間以上
・月収8万8,000円(年収106万円)
正社員の所定労働時間は、1日8時間で週5日勤務の方が大半です。となれば、40時間の2分の1、週20時間以上の短期契約で社保グループ加入です。
令和4年10月1日改正内容
従業員が101人以上の企業や団体については週20時間以上で社保グループに加入できることになりました。
パッと見ではあまり関係ないとお思いになったかもしれませんが、大手のファストフード(ハンバーガー、牛丼、ファミレス)それに大手のスーパーマーケットなどにアルバイトやパートタイムで働くということはこれに抵触することを意味します。
以下のすべての条件を満たす場合社保グループに加入義務が発生するのです。
・従業員101以上の事業所
・週20時間以上の勤務
・2ケ月を超える雇用が見込める
・月収8万8,000円(年収106万円)
・学生でないこと
改正の意図
なぜ101人以上の事業所なのでしょうか。
少人数の事業所、例えば飲食店や中小の事業を対象とした場合、それまで国民グループとしてアルバイトやパートタイマーが負担していた保険料を社保グループになったとたんに事業所側が半額を負担しなければならなくなります。
小規模経営の飲食店では負担がかかり、場合によっては負担金で立ち行かなくなる恐れがあるからです。でも社保グループの人を増やして行かないと年金の積立金が不足してしまいシステムが破たんしてしまいます。結果、資本力のある大手からとなったのです。
社会保険への加入数を増やす目的はもう一つあります。非正社員という働き方が増えていることで、失業中の暮らしを守る雇用保険への加入や就業中の不慮の事故に対する労災保険への加入という国民生活のいわばセイフティーネットを拡充しようというものです。
~まとめ~
このように見てくると、近いうちに正社員、非正社員、アルバイト、パートタイムという言葉自体が無くなるかもしれません。
現在の労働時間と支給金額による保険加入の区分けは徐々にその垣根が取り除かれ事業者か雇用者かのどちらかに振り分けられてゆくような気がします。
人口が減り労働者も減りゆく未来にシステムとセイフティーネットを両立させることは至難の業と言えますが、小規模な飲食店の事業者の場合で言えば、雇用者の社会保険料に見合う減税か控除を用意頂きたいと切に願うものです。