
食料品の消費税率を、2027年4月から2年間に限り1%へ引き下げる案が進んでいます。2026年8月時点では法案成立前ですが、実施されれば飲食店経営にも無視できない変化が起こります。
まず確認したいのは、現在すべての食料品に10%がかかっているわけではないことです。スーパーで購入する食料品や飲食店のテイクアウトは8%、店内飲食は10%です。今回の案は、主にこの8%を1%へ下げる一方、外食は10%のまま残す方向です。国税庁「消費税の軽減税率制度」
つまり、イートインとテイクアウトの差は現在の2ポイントから、一気に9ポイントへ広がります。
1,000円の料理に90円の差が生まれる!
税抜1,000円の料理を同じ本体価格で販売し、減税分をそのまま価格へ反映した場合、店内飲食は1,100円、テイクアウトは1,080円です。現在の差は20円ですが、改正後は90円になります。
一人なら小さく見えても、家族4人分なら360円です。週に何度も利用する人ほど、「店で食べずに持ち帰ろう」という判断が増える可能性があります。
さらに飲食店の競争相手は、同業のレストランだけではありません。税率1%の商品を並べるスーパー、コンビニ、弁当店、総菜店との価格差も意識されます。「今日は外食をやめて総菜を買おう」という動きが広がれば、飲食店の客数に影響します。
ただし、実際の価格差は各店の価格設定や減税分の転嫁によって変わります。ですから税率が下がれば、必ず税込価格が同じ幅だけ下がるとは限らないのです。
テイクアウト専門店が増える?可能性は十分あり
9ポイントの差が2年間続けば、最初から客席を持たないテイクアウト専門店が増えるかもしれません。
客席をなくせば、広い物件やホールスタッフは必要ありません。その分、厨房、受け渡し口、包装、事前注文の仕組みに投資できます。駅前の小さな区画や、表通りから少し外れた賃料の安い物件でも営業しやすくなります。
既存の飲食店でも、店内メニューをそのまま容器へ入れるだけではなく、持ち帰っても味が落ちにくい専用商品、家族向けセット、夕食用の総菜などを開発する動きが強まりそうです。
その流れでいえば、コロナ禍に流行ったデリバリーも復活するのでしょうか? その回答はこうです、デリバリーは必ずしも有利とは限りません。配達料や注文サイトの手数料が税率差を上回れば、消費者が感じる割安感は消えてしまいます。伸びる可能性が高いのは、店頭受け取りなど自社完結型で、追加費用を抑えられる店でしょう。
飲食店には「仕入れ税額控除」の問題もある
実はここが飲食店にとって一番の問題点かもしれません。 飲食店は食材を1%で仕入れ、店内飲食を10%で販売する形になります。仕入れ時に控除できる消費税額が小さくなるため、納税額が増えることとなり、半年ごとの納税期に資金繰りに窮することとなるかもしれません。
食材の税込仕入価格が税率分だけ下がれば理屈の上では調整されますが、卸価格がすぐに下がらない、既存契約へ反映されないといった場合には、利益を圧迫する恐れがあります。政府も外食産業への影響が生じ得ることを認め、対応の必要性に言及しています。財務大臣記者会見
さらに、同じ料理でも店内は10%、持ち帰りは1%となれば、レジ、メニュー、領収書、売上管理を確実に分けなければなりません。2年間限定とはいえ、システム変更と従業員教育の負担は小さくありませんね。
店内飲食は「料理以外の価値」が問われる!
税率差が広がっても、すべてのお客様が持ち帰りへ移るわけではありません。出来たてのおいしさ、接客、会話、店内の雰囲気、酒との組み合わせなどは、テイクアウトでは得にくい価値です。
これからの飲食店は、店内では「わざわざ来る理由」を磨き、テイクアウトでは「便利で割安な商品」を用意する、二つの設計が必要になります。
初めて飲食店を開業する人にとっては、「何席の店を借りるか」だけでなく、「そもそも客席はどこまで必要か」を考える時代になるかもしれません。
税率1%は2年間限定の予定です。しかし、その間に定着したテイクアウトの習慣や専門店の事業モデルまで、2年後に元へ戻るとは限りません。期限付きの税制が、飲食店の形を長く変える可能性があるのです。





