2024年問題をはじめ連日様々な業界の人手不足が報道されています。なかでも一年で一番引越しの多い3月、4月を迎え、引越し業界は深刻です。
見積すら応じてもらえない引越し難民まで現れているとの報道もありました。これまでとかく飲食業界が人手不足の筆頭に挙げられていたのですが、他の業界でも顕在化して来たようです。
過去に店サポではアルバイトの定着、人手集めのヒントを数回にわたり特集してきましたが、昨今の募集広告を見るにつけ企業側の変化に驚かされるまでになっています。
このアルバイトをめぐる争奪戦現場で何が起きているのかを見ながら今後雇用側がどのような労働環境を作っていかなければならないのか検証してみたいと思います。
Contents
大手串カツチェーンの働き方改革を参考に
関東を中心に店舗数を増やす串カツチェーン。その増店スピードに人材確保が追いつかない程です。ましてや離職率が3割を超えると言われている飲食業界では、定着率をあげることも重要なミッションといいます。そこで彼らが考え出した働き方改革とはどのようなものなのでしょうか。
3つのポイント
- 店舗スタッフに3日間の有休休暇に2日をさらにプラス
- 店舗スタッフに年4回のボーナスを支給
- アルバイトから正社員になった場合の報奨金を2回に分けて早期に支給
彼らが掲げたスローガンは、「飲食業界の当たり前を根本から変えることに挑戦したい」だったのです。
確かに、打ち出されている内容は大きく二つの軸があります。「休日と給与」です。
飲食業界に対して「休めない」「給料が安い」というイメージを真っ向から崩す内容です。また正社員を対象にしたメッセージでは、研修もそこそこに即戦力として現場に配属となっていたこれまでを改め、研修センターで1ヶ月間みっちりと教育を受けてから現場に配属となるようです。
社員教育を前面に押し出す形となっていますが、この辺りは定着率をあげる試みの一環であることは容易に想像できます。
大手アルバイト求人雑誌から見えてくること
地域に根差した店舗展開で複数店舗を運営する居酒屋チェーンのアルバイト広告です。先程の大手のスローガンとは違いこちらはあるメッセージが最初に目に入ってきます。
それは、他業種から飲食店業界へ転職してみませんかといった内容ですが、飲食業界への転職でこの先何十年も安定した生活が送れますよと結んでいます。実際に他業種から転職をしてきた皆さんのコメントが添えられています。
運送業界から転職をされた元ドライバーからは、週に1日しか休めなかったのが週休2日となり子供と遊べるようになったことだとか、運動会や授業参観などに行く時間が出来たなどの家族との時間が持てるアピールでした。
同様に元フリーターの女性からは、アルバイトから正社員になる道が用意されており、生活を安定させるために正社員の道を選択、その後1年で店長に昇格できたとあります。
この募集要項では、アルバイトでも未経験と経験者で金額が違う上に、店長昇格でいくらまで給与が増えるかなど働き続けることで手に出来る金額や休暇日数が明示されており、働き続けることのメリットが強調された内容となっています。
これまで多くのアルバイト現場で行われてきた「委細面談の上決定」と言った雇用者側の都合に合わせるものから、
- 待遇・福利厚生
- 年収例
- 給与詳細
- 固定残業代
- 地域限定
など大学生の就職活動で見かけるぐらい事細かに内容が書かれおり、アルバイトと言えども就業前の不安を抱きづらくなっているような状況です。
売り手市場のアルバイト事情
ここまで雇用側が気を配らなければならない程飲食店業界はアルバイトの売り手市場だと言うことがお分かり頂けたと思います。
この状況はまだまだ続くのでしょうか。残念ながらさらに激化する予感がします。個人で営業する飲食店が大手と同じような待遇や福利厚生面で人材を確保することは極めて困難です。
今後はこれらのコーディネイトを請け負う会社が今後登場すると考えられます。つまり日々お店の運営に忙しいご主人に変わって待遇面、休日のあり方、社会保険の加入手続きにキャリアプランの立案などを代行してメディアに掲載し、アルバイトの代理人としてもお店側と約束通りの環境が保たれているか、改善点はないかなどを代弁することも彼らが行います。
仮に彼らの事をアルバイトコーディネーター(AC)と呼ぶとした場合、彼らはアルバイトからではなく飲食店側から報酬を得ることでより人を集めやすくなることでしょう。
飲食店側も求人誌に毎週多額の掲載費を出したり、ようやく見つかったアルバイトが1週間もしないうちに辞めてしまうことでまた求人広告費を負担することを考えればアルバイトが働いている期間に応じて費用を負担すのであれば飲食店にもアルバイト達にも感謝される存在となるに違いありません。
~まとめ~
タイトルに書きました働き方改革とは、これまで正規社員と非正規社員の待遇が著しく異なる日本の労働環境から、欧州の様に非正規であっても正規雇用の90%もの報酬が受けられる時代へと急速に変わることを意味しています。
もう一つ忘れてならないのが、飲食業界の給与が上がりずらい環境の改善です。具体的には外食単価の上昇を伴わないと掛け声倒れとなります。
2017年に運送業界大手が一斉に値上げに動いた如く、飲食業界でも値上げの機運が必要です。今後人口が減りゆく中で安さと回転率を競う業界ではなく、質とそれに見合う価格の競争に早く日本も入って行って欲しいものだと思います。