飲食店になくてはならない、「味」と「お金」。
言い換えれば 「料理人」と「経営者」。
この両輪が上手にまわっているお店は必ず繁盛します。
さて料理を考える場合、日本文化の美しさのひとつ「型」の伝承に注目します。
ここには作法、所作という言葉が当てはまるのですが、茶道、華道または書道など芸術に関するものもあれば剣道や柔道など武道一般に当てはめることも出来ます。
これらの道は時の権力者や富豪により育てられ、受け継がれて実用から道に昇華しました。その点「食」の文化については見劣りするように思います。なぜでしょう?
食の多様性は明治の文明開化後急速に普及した関係で歴史が浅いというのが大きく関わっています。
さて食にまつわる文化については、料理を作ることに焦点が当たりがちですが、その技を受け継ぐにはマネジメントが必用です。今回は、料理とマネジメント、つまり料理人と経営者という両輪がどうすればうまく回って行くのか考えて見たいと思います。
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繁盛店の料理人に求められる資質
料理を作るという行為は2つの側面を持っています。
ひとつは、いつも同じ食材で、同じ方法で同じ時間をかけて同じ料理を仕上げる大いなるルーティンの側面
もうひとつは季節や天気に応じて食材や味付けを調整するアレンジ力です。
- 同じ料理をつくる
- 季節や天候で変化した料理をつくる調整力
同じ料理をつくり続ける料理人
まずルーティンの部分で言えば西洋と違い明文化されたものよりは、口述を主体として受け継がれています。
文献をひも解いても、日本書紀にもどのようなものを食べていたのかという記述はあってもどのように作ったのかというものは残っていません。
中世になっても酢や醤油などの調味料に関する文献はあってもいわゆるレシピなるものは存在せず、それは明治という時代を待たなければならなかったのです。
なぜルーティンと表現したのかというと、体に染みついた所作、作法だからです。
この口述によるルーティン(調理方法)は茶道や華道に流派があるように、修行をした場所により内容が異なり、同じ料理でも違った味が提供され、逆に言えば日本の料理の奥深さはこの辺にルーツがあるようなのです。
今でこそレシピがあり口述よりも短期間で完成品である料理を作り出すことは可能になったのですが、その調理方法がこれまで同様のルーティンとなっているのかは疑問が残るところです。
四季にあわせた調整力をもった料理人
次に調整力です。ルーティンとは対極にある能力です。逆に言えば脱レシピとも言えます。
たとえば1年中提供される定番料理が同じレシピで、1年中同じ味で作られるとしたら、それはファミリーレストランやナショナルチェーン店となんら変わりません。
夏の盛りはさっぱりと、寒い冬の日は少々濃厚にと肌で感じる温度や湿度で味を調えるからこそ「いつも同じ美味しさ」を提供できるのです。
作り手のホスピタリティーとはこういうところで発揮されるのです。
繁盛店の経営者に求められる資質
小規模の飲食店では、料理人=経営者というところも珍しくありません。ただここは同じ人が携わるにしても別人格としてみてください。
経営者はマネジメントを行います。決してお金の管理という訳ではありません。このマネジメントは2つの重要な使命があります。
- 人を使って結果を出すこと=利益をうむこと
- 新たな顧客を創造することです。
まず人を使って利益を出す方法で言えば
- 計数管理
- 労務管理
- 出納管理
の3つがあげられます。
1.飲食店の計数管理(マネジメント)
提供される料理が、原価計算通りに作られているのかチェックしなければなりません。
オーバーポーションになっていないか廃棄ロスが多くなっていないか、チェックの目を光らさないとせっかくの利益も目減りしてしまいます。その為にも毎月の棚卸しチェックが重要です。
買い付けた食材の量に対し消費した食材の量と残っている食材をチェックし、その食材で作られた料理の数が適正であったのか、原価計算と比べてどうだったのかを調べればその差額がロスとして浮かび上がります。
これがなぜ発生したのか突き止めることが「マネジメント」(料理の計数管理)です。
2.飲食店の労務管理
サービス残業に労働保険の未加入など今の時代は、以前に比べものにならない程厳しくなっています。それ以上にSNSなどの普及により、ブラックバイト先の烙印を押されてしまうといくらお金をかけてアルバイトを募集しても集まらなくなってしまいます。
経営者は意識を変え、臨時雇用や非正規雇用者という認識は捨て、大切な労働力として迎える姿勢が不可欠です。
よく時給金額さえ上げれば人は集まるという誤った認識を持たれている経営者の方がいますが、今の若者はお金以外に、例えば仕事を任される喜びやほめられるやりがいを同時に求めているというアンケート結果があります。令和の時代、働く環境を作るマネジメント(飲食店の労務管理)がなければアルバイトの離職率が高くなりいずれお店は立ち行かなくなります。
3.飲食店の出納管理
現実問題として、飲食店に限らず事業の存続には現金が必用です。
いくら売掛債権(カード支払い分の債権)があっても、納入業者の支払いに間に合わずに資金がショートしてしまえばお店は終わりです。
そうならない為に出て行くお金と回収するお金について、毎月の支払サイクルと入金サイクルを1ヶ月から3ヶ月先まで見込んでいないと、いつかの8月の様に、雨が21日間も続くことでの売上計画の狂いが生じたり、大きな売り上げを見込んでいたハロウィンが台風で流れてしまうなどの突発的な事象が起こった時にどう対応していいのか判断がつかなくなります。
ここは面倒でも毎日向き合わなくてはなりません。飲食店を存続させるということは最大の経営課題だからです。
繁盛店は料理人と経営者の共同作業~顧客の創造~
経営者のもうひとつの命題である顧客を創造する為には、料理人との共同作業が不可欠。
飲食店では30~40品目のメニューがあると言われていますが、月単位や四半期単位での分析が大切です。
看板料理の売上が下がっていたり、これまで原価率が低くい割に人気商品となっていたメニューに変化があるようならテコ入れが必要です。
また人気商品もバリエーションを増やしたり、季節限定や1日数量限定の料理などもたとえば2名以上のオーダーからにするとかの工夫が売上に寄与します。
この分析にもとづく料理の創作は二人の合作でないと始まりません。
1年間でこの打合せ日をあらかじめ決めておかれることを強くおススメします。
余談ですが、
先日ある鮨店のご主人と話をしておりましたところこんな話が‥
ご自身でお店を開いてすでに30年近くなるのですが、今でも客単価の似かよった同業のお店に食べに行かれるようです。
その理由をお尋ねしたところ、食材のグレードや鮮度、価格とのバランスなどを比べてご自身のお店が取り残されてないかを確認するためだと仰ってました。
御年69歳になられたと聞きましたが、頭が下がる思いでした。
~まとめ~
売上があがり繁盛している飲食店の料理人はこんなスキルをもっている人
- 同じ料理をつくるスキル
- 季節や天候で変化した料理をつくる調整力というスキル
繁盛している飲食店の経営者はこんなスキルを持っている人
- 料理の計数管理のスキル
- 飲食店の労務管理のスキル
- お店の出納管理のスキル
飲食店もビジネスです、ビジネスをちゃんと展開できる飲食店が繁盛店となります。