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飲食店で独立・開業に必要な開業資金とその後の運転資金について具体例で考える

「脱サラ」、会社を退職して独立・開業される方々を一括りにしてこう呼ぶ時代がありました。ここのところ、「独立」や「開業」という呼び方が主流となりましたが、最近また脱サラという言葉が復権のきざしを見せています。

日本において人口増加のピークは過ぎ、超高齢者社会に向かう今、働き方の多様化と、終身雇用の崩壊という働く枠組みが大きく変化するなかで、共働きでないと満足な子育てが出来なくなっているばかりか、老後の不安さえ拭えない時代へと差し掛かっています。

日本人の働く意識は変化をし、雇われる安定から、自分で商う安定に変化し始めたのです。その流れで脱サラ復権となっているようです。

織田信長の安土桃山時代、楽市・楽座は衣・食・住にまつわる生産と物流を生み出し、通貨に交換することで市民の生活の糧となっていました。

今日その一つである「食」のテーマに向かって脱サラ=独立・開業をする皆さんが増える中、安定的に商売が続けられる飲食店の開業資金・運転資金について考えます。

Contents

開業資金の大事な考え方について

これまでのスキルを活かし、満を持して独立・開業という方もいれば、若くして勝負に出る、早期リタイアで好きなお店を持ちたい、と理由は人それぞれだと思います。

潤沢な資金があるにせよ、借り入れをおこすにせよ、飲食店舗開業の考え方は同じです。

どっちが得する飲食店開業時の「自己資金」と「借入金」長続きの秘訣は?

開業資金の鉄則をお教えします

これから見て行く開業資金は決して小さな額ではありません。公庫などの融資を頼りにされるかたも随分と多くいらっしゃいます。なかには最低限の金額だけ借りる方がいらっしゃり、あとは自己資金でまかなうといいます。

決して間違いではありませんが、必ず成功をさせたいのであれば、最初に出来るだけ多くの資金を借りるようにすることが鉄則です。

資金さえあればリピート客がつくまでの間が少々長くてもお店は続けることが出来ます。仮に最低額の借入でスタートして、1年も営業しない内に運転資金に不安がでとしてもその時金融機関はなかなか融資に応じてくれないものです。

つまり資金が尽きてしまう可能性が高くなります。だからこそ、借入は最初に出来るだけ多く借手て、返せなくなる心配よりも早く返すことを考える方が健全です。

必死にためた自己資金は開業時に手を付けずにとっておきましょう。本当に必要な時に使えるお守りだと心得て下さい。

開業資金を安くおさえる秘訣(スケルトンか居抜きか)

これから飲食店舗を開業する物件が、何もないスケルトン状態からのスタートと、居抜き状態からのスタートで初期投資にかかるお金に大きな差が出ます。

例えば10坪程度の物件であっても、スケルトンから内装、ガス、水道、電気、厨房工事で、特別なことをしなくても800万~1,000万円程度はかかります。

プラス厨房機器が必要になりますので、1,200万円は見ておく必要があります。

しかしこれが「居抜き」となると大きく予算が変わります。既に内装に厨房機器までついて100万円~150万円程度で手に入ります。その後、壁紙の張替や看板の架け替えなどに100万円をかけたとしても250万円程で仕上がります。

  • スケルトン・・・ 1,200万円
  • 居抜き  ・・・  250万円

但し、内装に特別な部材を使用する場合やマンションなどで高さのあるダクト工事が必要な場合、また高級家具を入れたい場合などは、ここにその金額を足して計画してください。

食材費・人件費(FLコスト)から開業資金を逆算する

どのような料理を提供するのか、まずメニューを考えます。

次に1日当たりに来店されお客様の数と、お客様が注文されるであろう料理、もしくはお店としてお客様に売りたい料理を想定します。

通常は売上予測の方法ですが、ここは材料の仕入れについての数字をはじき出します。注文する頻度が毎日なのか、3日おきなのかは別として、毎日どれだけの注文をしないと次の日に受けるオーダーを賄えないかを金額で出します。

もちろん、ウイークデーと金曜では予想が異なるでしょうし、週末の営業であれば団体予約も入れたいところです。食材とお酒の注文が25日間で平均して1日2万円だとすれば月に50万円です。

飲食店の開業で必要な運転資金は6ヶ月分かそれとも3ヶ月でいいのか検証する

次に人件費です。独立・開業なさるオーナーは、毎日お店に出るので25日勤務です。アルバイトさんが時給@1,000円(東京都の最低賃金は2022年10月で時給@1,072円ですが簡易に計算するために1,000円としました)1日8時間(ランチと夜)、25日稼働で20万円が人件費となります。この場合オーナーの報酬は計算にいれません。

この食材費(Food)と人件費(Labor)のコストのことを、その頭文字をあわせて「FLコスト」と呼びます。

ご存知の方も多いと思いますが、飲食店舗の経営指針を、総売上コストに占めるこのFLコストの割合で評価するのが一般的です。

また、通常総売上コストに占めるFLコストの割合が55%~60%が健全とされています。では、具体的に見てみましょう。

F(食材)50万円 + L(人件費)20万 = 70万円

仮にFLコストの比率が55%だとすると、70万÷0.55=128万円となります。

現在計画している飲食店舗の売上の標準ラインが月額128万円以上売上と分かります。

また、このFLコストには重要なポイントがもう一つあります。

この二つのコストは固定費だと言うことです。つまりお店を開ければお客様の数に拘わらずかかります。だからこそ予定した売上に達するまの期間をある程度予想しておく必要があります。

このお金を「運転資金」と呼んでいます。その運転資金ですが、最低でも3ヶ月分、他業種から初めて飲食業界で独立・開業をされる方なら6ヶ月分は準備しておかれることをお薦めします。ここを想定せずに最初の内装や賃貸借にお金を使いすぎてしまわないよう十分に計画しましょう。

開業時の運転資金 ・・・ (70万円+家賃)× 3ヶ月(6ヶ月)

飲食店舗の損益モデル
売 上 高 100
食材費(F)+人件費(L) F+L= 55~60%
諸 経 費 14%
初期条件(賃料・リース代等) 20%
利 益 6~11%

独立・開業の創業資金の合計はいくら?

毎月決まった額が出て行く固定費。リース代と不動産の家賃でFLコストの割合も、利益の残り方も大きく変動します。

例えば、同じような規模の不動産物件でも、駅前の一等地や人気の駅周辺と、ちょっと郊外の駅や1.5等地と呼ばれる通りから一本入った立地などでは、月額の家賃で月々10万円もの差が出る場合があります。ここでお薦めなのは、いくつかの物件でシミュレーションを行ってみて、無理のない場所、立地を選ぶようにすることです。

~まとめ~

本来は、メニューと客単価の関係から積み上げた売り上げをもとに算出することが望ましいのですが、今回は、分かりやすいようにモデルケースを用意して、独立・開業に必要であろう資金の標準的な考え方にFLコストを使いながら説明いたしました。

一度、ご自身で事業計画書をお作りになり、立地と店舗の規模を決めたなら創業にかかる資金の総額を算出してみて下さい。その上で自己資金をもとに借入金の額と返済計画を立てることが開業・独立の王道です。

【飲食店開業】開業資金と運転資金の違い~資金ゼロでも開業できる方法も紹介~

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