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飲食店の開業で必要な運転資金は6ヶ月分かそれとも3ヶ月でいいのか検証する

飲食店-開業-運転資金

Photo credit : Yasuo Kida on VisualHunt.com

先日飲食店の事業計画を作るお手伝いをしました。これまでの経験を生かした居酒屋を開業されようとしている方です。大手のチェーン店ではなく、個人オーナーの割烹店で長年修行を積んでこられました。

料理の腕前は言うまでもなく、食材の目利きや食材を仕入れる仲卸さんとの付き合い方も全て割烹店のオーナーから教わったと言います。

ただ、逆に言えば他の方法を知らないことや帳簿や現金管理などはまったく触らせてもらえなかったので正直何もわからないと本音を漏らされていました。

ご自身に足りないスキルが何かを分かってらっしゃるが故に事業計画を一緒につくることとなったのですが、いくつものシンプルな質問が出ます。その中でも改めて考えて見たいと思ったのが、運転資金の説明でした。

一般的に固定費の6ヶ月分を見込みましょうという方、いや3ヶ月で十分だという方結構意見が分かれます。また、なにを以て運転資金なのかその正体も語られる必要があります。

今回は、分かっているようで説明が難しいこの運転資金について考えて見たいと思います。

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Contents

飲食店の運転資金の中身

ストレートに考えて見たいと思います。まず、事業計画で見込む運転資金の額を大雑把に表現することで理解しにくくなるのではないかと思います。つまり、固定費の〇〇ヶ月分と表現されるものがそれです。この根拠はこうです。

開店当初お客様がご来店されなくても店を続けるだけのお金を運転資金というのですが、手元に置いておけるものを指します。周辺に認知されリピーターも増え、開業時に想定した売上に達するまでの時間をどれぐらいと計算するのかによって変わってきます。

固定費とは、「何もしなくても出て行くお金のこと」

  • 賃料・共益費
  • 正社員の給与
  • リース代
  • 借入金支払利息
  • 水光熱費の基本料金
  • 減価償却費

これらが固定費としてあげられます。ここで2つの質問が出ることでしょう。給与と減価償却です。

給 与

正社員の給与とアルバイトの給与はどこが違うのかという点です。正社員とは正規雇用を指すもので、一般のサラリーマンが会社に入社することと同じフルタイム従業員です。

これに対し、アルバイトは非正規社員であり、雇用期限に限りがある契約で、パートタイムの契約です。これにより繁忙期や閑散期でその労働力を飲食店側が調整することが出来ます。

つまりアルバイトの給与は変動するので正社員の給与とは分けて考えるのです。

減価償却

もう一つの減価償却、普通に生活している分にはまったく耳にしない言葉です。このシステムを理解するには、飲食店が10年、20年と続いてゆくイメージをまず持つことです。

開店時に大金をかけて厨房機器を購入し内装や空調設備などを施工します。しかし、長くお店を続けて行けば壊れてしまい買い替える必要が出てきます。そうなった時に突然高額な費用が必用になったとしても貯えが無ければお店を続けられなくなることでしょう。

そうならない為に、厨房機器や空調設備など高額なものは標準的な耐用年数、つまりこれぐらいは壊れないで持つだろうという年数を国が定めていて、その年数で厨房機器や設備に要した費用を割り、強制的に毎年積み立てをさせる仕組みなのです。

初めて聞いた方はチョット驚かれるかもしれませんが、この減価償却費、利益が出てなければ手持ちのお金から引き当てるしかないのですが、利益が出ていればその額は非課税となります。長く飲食店を続ける為に国が用意してくれた非課税貯金といった意味合いです。

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飲食店売れたら儲かるという勘違い

さて、飲食店を営業することを考えると固定費だけの備えでいいのでしょうか。ちょっとした居酒屋でも20~30種類のメニューがあって、アルバイトを雇い、ビールやお酒など数種類は用意します。ここは既に変動費の部分ですが、飲食店を開店するということは固定費にプラスして変動費も日々のしかかってくることをまず理解してください。

開店当初は招待客や物珍しさも手伝ってお客様は来店されることと思います。当然、賑わう注文に答える為に十分な仕入れをすることになります。そのままの状態が続けば問題ないのですが、徐々に客足は減りどこかの時点で定常化して行きます。

この間、もし明日開店時のようなお客様が来られたらとつい多めに食材を買い込みロスを出してしまいがちです。食材の仕入れ支払いは後払いで、日々の売上金は現金で入ってくるものですから余計にその傾向が強いのです。

ここで勘違いしがちなのが、「売上」と「支払い」の関係です。売上が多かったと喜んでいても、いざ支払いの段になって違和感を感じると思います。そう意外と手元にお金が残らないというものです。この違和感は、売上が多ければそれだけ仕入れをしているということを念頭に置いていないことが原因です。そこにロスと呼ばれる食材の無駄使い、アルバイトへの賄いの大判振る舞い、オーダーミス等の廃棄など様々なものが見えない形で消えて行っている現実があるのです。これらを想定していないと「売れた=儲かる」という勘違いが発生します。

運転資金が固定費の6ヶ月分必要は本当か

さて、ここまで見て来てもまだなるほどという感じには程遠いと思います。では別のアプローチで検証してみたいと思います。

対売上固定費比率で見た場合

月額売上100万円の事業計画をたてた飲食店の場合

  • 家賃  10%  ・・・10万円
  • 諸経費   10%  ・・・10万円
  • 給料  15%  ・・・15万円(一般的な対売上労働コスト30%の二分の一相当)

  • 合計  35%   ・・・35万円 × 6ヶ月 = 210万円

FLコスト+賃料(Rent)で見た場合

月額売上100万円の事業計画を使い別の指標で考えます。

  • F(food・食材、原料) 30%   ・・・30万円
  • L (labor・労働賃金)   30%   ・・・30万円
  • R (Rent・賃料)    10%   ・・・10万円

  • 合計          70%  ・・・70万円 × 3ヶ月 = 210万円

冒頭でお話しした6ヶ月説と3ヶ月説は比べる中身が上手く伝わってないことから起きた誤解だったのではないかと想像します。また運転資金の性格上、先行してお金を投下することで売上により原価と共に利益を回収する道具という意味合いから商売の潤滑油と評されることもあります。

極論をすれば、運転資金が潤沢にあれば飲食店が潰れることはまずありません。しかしながらそうはいかないのが現実です。

FLRの3ヶ月の運転資金とは、毎日お店を開けた状態で2ヶ月間お客様が一人も来られなくても続けられる額だということです。これも現実には考えにくいことです。開店当初は運転資金を食い潰しながら営業を続け、ある時から損益分岐点を超え利益が出始めるのです。そして徐々に食い潰した運転資金が戻ってくるのですが、その期間が6ヶ月であるなら運転資金の想定の範囲内と考えて大丈夫でしょう。もうお分かりのように、事業計画の作成がスタートラインなのです。

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