2019年10月1日より消防法は改正となりました。ご存じのように、それまで大型店舗にだけ義務付けられていた消火器の設置基準が変更となったのです。
発端は、2016年の暮れに発生した新潟県糸魚川市の大火。火元はラーメン店でした。
この時120棟の全焼、じつに類焼面積4万平方メートルという甚大な災害となったことは記憶に新しいと思います。
繰り返し起こる飲食店火災。改めてこの改正内容を確認します。
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消防法改正について
2019年10月1日施行となります。改正点を確認します。
- 現行法 延べ床面積150㎡以上の場合は、消火器を設置しなければならない。
- 改正後 延べ床面積に拘わらず、消火器の設置をしなければならない。
つまり、全ての飲食店に消火器を設置することになります。
改正理由は以下の通りです。
平成28年12月22日に発生した糸魚川市大規模火災を受けて、「糸魚川市大規模火災を踏まえた今後の消防のあり方に関する検討会」の開催、関係団体への聞き取り調査等、火災被害拡大防止対策及び火災予防行政の実効性向上等に関する検討を行ってきたところである。今回の政令改正においては、上記検討部会における検討の結果等を踏まえ、飲食店等 について、原則として、延べ面積にかかわらず、消火器具の設置対象とすることとする。
また、この改正では、消火器の設置場所まで規定すると定めています。
「今回新たに消火器具の設置義務の対象となる飲食店等における消火器具の設置場所について規定することとする。」となっています。
消防庁の飲食店に対する本気度が伺えます。
消火器設置に例外もできました
一方で例外も規定しました。
調理油加熱防止装置や自動消火装置、その他火災発生時にその被害を軽減する安全装置を備えた場合。
となっています。つまり消火器に頼らず調理器具そのものに安全装置が備わっていれば消火器の設置は免除すると言うことですが、費用対効果からいうと消火器のコストパフォーマンスが断然高いと思われます。
飲食店火災の状況をまとめました
消防庁がまとめた都内で起きた火災のデータがあります。これを見てみましょう。
まず、全焼・半焼・部分焼・ぼやを含めて平成28年度で起きた火災全345件中、最も火災が多かった業態は、「酒場・ビヤホール」76件(22%)で次いで多いのが「中華料理」58件(17%)以下、「日本料理」、「西洋料理」、「バー・キャバレー等」の順となっています。
これを火災が発生した時間で見てみると興味深い結果が出ます。
2016度の火災件数345件の内出荷時間が判明している331件について見てみると、「酒場等」は18時台から20時台が最も多く17件発生しています。
逆に「料理店」では9時台から11時台で31件と多くなっているのが分かります。様々な飲食店が含まれる「その他」では、酒場同様18時台から20時台が35件と顕著な数字となっています。また、遅い時間帯でも16件もの火災が発生しているのが特徴です。
このように見てくると、料理店では、仕込みの時間帯に火災が起こっていることが分かります。逆に酒場やその他の飲食店では、お客様が一番来られる時間帯に火や油を使う料理が多い為か火災の発生が集中していることがよくわかります。
出火原因の一番はやはり。。。
時間帯がわかったところでどこに対策をすればよいのかという話になります。次に出火原因を見てみましょう。
実は火災の半数以上は燃焼器具からの出火したものです。大型ガスコンロ、大型ガスレンジ、無煙ロースターなどがその8割を占めています。ではどういう状態で出火したのでしょうか詳細を見てみましょう。
天ぷら油を加熱して放置 ・・・ 63件(34%)
その理由としては、外出、別室で仕事、その場を離れ雑談などが主な理由となっています。まさに冒頭にあげた長野市のラーメン店のパターンです。
初期消火の状況はどのようになっているか
345件の火災の内、粉末消火器での初期消火は112件(46%)と高く、水道の水をバケツ等でかけたというのが61件(25%)となっています。
その行為により初期消火に成功した件数が197件(80%)に上ります。ここが今回の法改正に繋がる根拠となっています。消火器の設置義務と設置場所の指定により現段階でも8割の初期消火が出来ているわけですから、それ以上の初期消火率が期待できます。
~まとめ~
これまで消防法は、内装の不燃化や火器と壁の距離などを細かく決めてきました。つまり、そもそも火災が起こりにくく燃えにくいことに拘ってきました。
しかしヒューマンエラーによる失火火災は、これまでの消防法で防げないと判断したと言うことです。
以前火災の一番の予防策は啓蒙だという話を聞いたことがあります。飲食店の火災を撲滅するには、調理師免許の取得、更新の際に防災や消火器の取り扱いについても強化していくべきではないかと考えます。