東司、不浄、憚り(はばかり)と聞いてピンときた方は50歳代以上の方か、大変物知りの方です。普通に表現するとお手洗い、トイレ、化粧室となります。いわゆる便所を表す日本語はなんと50以上存在します。雪隠(せっちん)や手水場(ちょうずば)などの呼び名も同じですが、いかに古来より日本人が特別な場所として意識してきたかが伺えます。
飲食店であればどこのお店にも必ずあるトイレ。今一度見直して日本人の感性と用途にあった工夫をすることで集客力は確実にアップします。ウイズコロナの時代にこそ見直してみてはいかがでしょうか。
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飲食店を利用する女性達の本音
コロナ禍がようやく収まりつつある中で、可処分所得が一番高い女性たちは少人数で集まり始めています。今後も飲食店の消費を牽引する大きな原動力といって間違いないでしょう。最近では、三密を嫌ってかお一人様で飲食店に繰り出す姿をメディアは伝えています。そんな彼女たちが選ぶ飲食店の基準を聞いてみました。
飲食店で女子会をやるならやっぱり
ひと昔前の女子会と言えば、イタリアンが定番でしたがコロナの前から焼肉にバルなど重飲食と呼ばれる飲食店も選ばれるようになってきました。これまでは、髪の毛や洋服に臭いが移るだとか、高カロリーの食事はチョットといって敬遠されてきたはずなのにコロナによるストレス発散なのか少々驚きです。
同じ種類の飲食店を選ぶならやはり味と金額が一番の要素ですが、その他にと聞けばトイレを上げる人が大半です。女子会における男性客が多いお店の評判は、「トイレが汚い店が多いので行かない」でした。
最近は、トイレを男性用、女性用と分けない傾向があります。特に女性をターゲットにしているお店は、女性トイレだけが込み合わないよう考えた末の選択のようです。だからこそこまめな清掃、メンテナンスが重要なキーとなります。
飲食店で待ち合わせをするなら
断然トイレが綺麗なお店との回答が返ってきました。女性同士でも異性と待ち合わせるのでもトイレは重要な要因です。その理由は、単に用を足すだけでなく、お相手に会う直前に化粧を整えられるところが重要なポイントです。
理想を言えば、トイレブースとパウダールームが分かれていることが理想ですが、残念ながら20~30坪のお店ではなかなかそこまでトイレに面積を割くことは不可能です。ではどうすればいいのでしょうか。次のアンケート結果にヒントがあります。
TOTOのアンケートからみる飲食店のトイレのありかた
言わずと知れたトイレTOPメーカーです。温水洗浄機付き便座をウォシュレットの名前で1980年代に売り出し日本のトイレ文化を飛躍的に向上させてくれました。
ところで、アメリカに行ってトイレ=トイレットと言っても通じません。なぜならトイレは便器そのものを指す言葉だからです。テニスの大会でトイレ休憩をバスルームブレイクと言っているのを見てもお分かりの様に、あちらでトイレはバスルームが正解なのです。
さて、そのTOTOが2013年に「飲食店トイレについての意識調査」というアンケートを行いました。その中に「あなたは、トイレがきれいだとどのように感じますか」という質問があったのですが以下の様な回答でした。
- 1位 お店のイメージが良くなる 79%
- 2位 機会があればまた来ようと思う 39%
- 3位 おもてなし感を感じる 33%
- 4位 トイレがきれいなのは当たり前だと思う 29%
- 5位 人にそのお店を自信を持ってすすめられる 24%
- 6位 そのお店を誰かに紹介したくなる 11%
約2,000人に対し行ったアンケートなのですが、複数回答のようです。
4位のトイレはきれいなのが当たり前と言うようなキビシイ意見もあれば、8割の方がお店に対しよいイメージを抱くと言うのは特筆すべき事実だと思います。ここまで来ればトイレを抜きにして飲食店の繁盛、売上は考えられないといえるでしょう。
飲食店のきれいなトイレの基準を考える
そうと分かれば早速リニューアルをしてトイレを一新といきたいのですが、なかなかそうはいきません。現状のトイレを生かしていかに女性陣に受ける仕様にするのか考えます。
そこで重要なのは大きく2つの要素が挙げられます。
①見た目(外見・トイレ内)
当然ですが、見た目の清潔感は重要です。少ない人材でお店を切り盛りする訳ですから大変ですが、お客様の再来店がかかっていると思えば、時間を割いて定期的な清掃を必ず取り入れましょう。
よくファミリーレストランのトイレの入り口に担当者と時間が書かれた紙を見かけることがあります。清掃が終了すれば丸を付ける例のあれです。ナショナルチェーンだからこそトイレの清掃に力を入れている証拠です。ここは見習いたい部分です。
その際気を付けたいことが一つ。頻繁に清掃をするからと言って、掃除道具を見えるところに置いておくのは女子的にはNGです。
②臭 気
ここで言う臭気には2種類あります。一つはトイレ内や便器に染み付いた臭い。もう一つは前の人が使用した後の臭いです。
まず、トイレ内の臭いですが、アンモニアを主成分にした臭気はなかなか取りづらく厄介なものです。その原因となるのが、タイルの目地や床に染み付いてしまっている場合と便器に尿石などがこびりついているケースです。
市販のトイレ用洗剤でなかなか落としきれない場合があります。最近は業務用の尿石除去剤がネットで買えるようになりました。何種類も出ていますので一度試してみるとその効き目の違いにびっくりされると思います。さすがプロユースです。
次に、前の利用者が残した臭いについてですが、消臭スプレーを検討する前に、現在便器についている温水洗浄機付き便座を調べてみて下さい。まず脱臭装置がついているかどうか。次に製造から何年経っているかです。
脱臭機能がついていなければ即交換です。ちゃんとした物でも4万円前後で買えますし、素人が日曜大工感覚で交換することが可能です。また、経過年数についてですが、温水洗浄機付き便座の寿命は5年から7年と呼ばれています。この際早めの交換を決断しましょう。
2020年3月の調査で、各世帯における温水洗浄機付き便座の普及率が80.2%と内閣府から発表されています。また、その機能は日々進化しています。ここは玄関のマットを変えるように早めの機種変更をお薦めします。
ホテル、高級店や施設にみるトイレを参考にする
最高級のトイレと言えば、ラグジュアリーホテルがその代表格です。ゴルフ場や銀座の高級クラブなどもお金をかけてトイレを特別な場所として扱っています。そう考えると料金の高さにトイレのきれいさや豪華さが比例すると言えるのではないでしょうか。だからこそ庶民価格の飲食店が高級料理を出すお店の様なトイレを設えていれば気分が良くなるのは間違いありません。
- コットン
- 綿棒
- ペパータオル(おしぼり)
- あぶら取り紙
- 爪楊枝
トイレにあったら必ず喜ばれるアメニティーグッズ達です。
スペースも限られますし、雑然とおいておかれるのも有難くありません。お客様のターゲット層とトイレのスペースを相談して品ぞろえを考えてみて下さい。
スペースと言えば、女性が意外と困るのがバッグを置く場所だそうです。膝の上だったりトイレのドアノブに掛けたりと苦労されているようです。フックや棚など一工夫するだけでおもてなし感は伝わると思います。
~まとめ~
居抜きで飲食店をお始めになる皆さんがお金をかける場所は、カウンター、看板など人目につく飲食店の顔となる場所が最優先です。そうなるとなかなかトイレにお金がかけられないのが現実です。
確かに、飲食店は料理ありきです。その料理を求めて折角来店頂いたお客様がそこからリピーターとなるにはトイレの様なサービス面でのホスピタリティーが重要な要素なのです。
TOTOのアンケートにもあるように決して無視できる数字ではありません。もしかするとトイレにいる神様はお客様のことかもしれません。このウイズコロナの間に是非ご一考ください。